JP-MIRAI youth企画「学生レポーターによるインタビュー」 第2回:介護施設(実習生受入れ企業・愛知県) ・技能実習生(カンボジア人)へのインタビュー

「学生レポーターによるインタビュー」企画第二弾は、愛知県にある介護施設を訪問し、職員の方々と技能実習生にお話を伺いました! 


第1回の記事はこちら→https://note.com/jpmirai_youth/n/n8b453e25907f


今回訪問した介護施設では、3人のカンボジア人技能実習生の方々が働いていらっしゃいます。

※ 技能実習制度とは 
技能実習制度とは、発展途上国の若者が日本の企業で働くことを通して技術を学び、帰国後にその技術を母国の発展のために活かしてもらう制度です。

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1. 介護施設の職員へのインタビュー

10月6日に介護施設を訪問し、代表理事と職員2名にお話を伺いました!

学生レポーター

―まずは実習生の職場である介護施設について教えてください

私たちの施設は、認知症の診断を受けた方を対象とした介護施設です。大都市や街中の施設とは違い、施設内に遊歩道や畑・足湯を整備し、自然を感じながら人間らしく暮らせる環境を大切にしています。利用者さんやその家族とのコミュニケーションも重視しており、コロナ前は利用者の家族も一緒にBBQや納涼祭を開催するなど、開放的な施設にすることを心掛けています。2020年12月から、3名のカンボジア人技能実習生を受け入れました。

―技能実習生受入れについて教えてください


Q: 技能実習生を受入れ始めた経緯を教えてください


私たちの施設が日ごろお世話になっているアドバイザーが、カンボジアに介護学校を作ったことがきっかけです。その方から、介護学校の学生を技能実習生として受け入れてみないかという提案をいただいたので、施設の職員がカンボジアに行って面接を行い、去年の12月に受け入れを開始しました。
実は、外国人と働くことに不安を感じていたため、受入れを行うかどうか1年くらい悩みました。しかし、実際に受け入れてみて、そのような不安は完全になくなりました。今は実習生3名とも、日本人と変わらず1人のスタッフとして施設を支えてくれる大切な存在です。

Q: 実習生の受け入れや採用前にはどのような不安がありましたか?その不安に対して現実はどうでしたか?


職員Aさん:利用者が年配の方々なので、外国人に対する厳しい目や差別発言があるかもしれないという心配がありました。なので、そういったことは実習生に前もって話しておきました。しかし実際には、実習生を孫のようにかわいがってくれる方ばかりで、不安もすぐに消えました。その日の気分の浮き沈みで、時々攻撃的になってしまう利用者の方もいらっしゃいますが、実習生は彼らなりに、利用者さんのいいところを見つけようとしてくれています。そういった意味で介護のプロフェッショナルだなと思います。

職員Bさん:言語面で不安がありました。なので、彼らと働く前に仕事の内容や手順をまとめた動画を作りましたが、想像以上にスムーズに仕事を覚えてくれたので結局使いませんでした。

Q:業務内容において、日本人の職員の方との役割の違いはありますか?

 
日本人の職員との業務内容の違いはほとんどありません。入浴介助・食事介助からレクリエーションまで、一人前の仕事をこなしてくれています。責任ある仕事も任せられる関係性が築かれています。技能実習生の一人は最近調理も始めました。野菜の切り方など、一緒にYouTubeを見て勉強しています。また、カンボジアの郷土料理やおやつを利用者の方々に作ってくれたこともあり、利用者の方々にいい刺激を与えてくれています。

― 技能実習生との仕事について教えてください


Q: 実習生を受け入れてよかったことは何ですか?


職員Aさん:よかったことは、ポジティブな言動で周囲を明るくしてくれることです。介護施設では、利用者さんのできないことが増えることも多く、中々職員のモチベーションが保てないことがありますが、実習生を受け入れたことで、介護施設の雰囲気が変わりました。
レクリエーションを考え企画してくれたり、率先して参加し大きな声で「やったー!」と言って盛り上げたりして、利用者さんを笑わせてくれています。3人とも笑顔が本当に輝いていて、それが施設全体を明るくしています。

職員Bさん:一人のスタッフとして、しっかり仕事を頑張ってくれているので、本当に受け入れてよかったです。彼らは、3人それぞれの介護の仕方があり、私のチームの○さんは、徘徊する利用者さんのそばについて歩くなど、寄り添った介護をして利用者さんを落ち着かせてくれます。日本人でも人によって色々な介護の仕方がありますが、3人も自分なりのカラーを持ち介護をしてくれています。

Q:実習生への福利厚生に関して、衣食住等に関して会社で提供しているものはありますか?


アパートの家賃と光熱費の補助を行っています。さらに、介護福祉士の資格を取りたいという実習生へのサポート等、彼らのキャリアへの支援も行っています。資格取得のためのサポートとして一部費用を負担しているほか、介護福祉士の資格をとった際には手当も付きます。

― 技能実習生とのコミュニケーションについて教えてください


Q:職場外で技能実習生と交流がありますか?


はい、もちろんたくさんあります。職場では上司と部下の関係ですが、職場外では友達のような関係です。一緒に外食をしたり、釣りやバーベキューに行くこともあります。
実は今日もこの後、一緒にサッカーを見に行きます。カンボジアに面接に行ったときから日本でサッカーを見るのが夢だと言っていたので、その夢をかなえてあげられるのがうれしいです!
また、地域との関わりを持ってもらうために、お祭りなどに連れて行って地元の友達を紹介するなど、横のつながりを作ることも心がけています。

― コロナ禍での技能実習について教えてください


Q:コロナ禍は、実習生の生活や業務にどのような影響を与えていますか?

 
施設の中で催し物ができないので、実習生が利用者さんのご家族や地域の方と交流を深めるのが難しくなっています。以前は施設で利用者さんの家族も招き、140~150人が集まってバーベキューや納涼祭をやっていたんです。そこで実習生にカンボジアの民謡を踊ったり、カンボジア料理をふるまったりしてもらおうと思っていたのですが、コロナ禍の影響でそれができず、残念です。
また、来日当初、日本中のいろんな場所に行ってみたいという声を実習生から聞いていたので、連れて行ってあげられないのも残念ですね。ただ、その中でもどうにか職場外での楽しみを作ってあげられるように心がけています。

― 実習生の将来について教えてください


Q:実習実施後、実習生たちにどのような活躍を期待しますか?

 
技能実習生の皆さんには、ここで働き続けてほしいと願っていますが、まだ若いので皆さんのやりたいことにもチャレンジしてほしいと思います。カンボジアに戻ってもここで学んだことを生かして仕事をしてくれたらうれしいです。

― 外国人労働者支援に興味をもつ若者へメッセージをください!


外国人を外国人として見るのではなく、同じ人間として話をし、偏見なしに対等に付き合ってくれたらと思います。これまで日本語と全く違う言葉を話していたカンボジアの子たちが、日本語を話していること自体が素晴らしいことです。彼らは日本に来る前に、日本語や日本の文化を一生懸命勉強しています。ただお金がほしいからという理由ではなく、勉強したいという強い思いを持って日本に来ているのです。だから、私たちも彼らの文化を尊重しなければいけません。
今後日本でも外国人が増え、近い将来、彼らが近くに暮らしていることが普通になります。その時に、支援をするだけではなく互いに刺激を与えあう対等な関係を築いてほしいです。

2. 技能実習生へのインタビュー

介護施設で働いている、3人のカンボジア人技能実習生にインタビューを行いました!
 
― 来日・日本での生活について教えてください


Q:なぜ来日しようと思いましたか?


Aさん:日本で日本語と介護を勉強したいと思ったからです。私たち3人はカンボジアの学校で介護を学んでいましたが、カンボジアには介護を実践的に学べる場所が少ないので、日本の現場でもっと学びたいと思いました。それに、日本では高齢者が多く困っていることを知り、日本は様々な国際協力でカンボジアのことをサポートしてくれているので、今度は私が日本を助けたいと思いました。

Bさん:日本の生活や日本の景色が好きだからです。また、カンボジアで出会った日本人のボランティアがみんな元気で優しかったことを覚えていました。そんな日本がどんな国なのか、自分の目で確かめたかったです。

Cさん:日本語や介護を勉強したいと思ったからです。私は日本が好きなので、日本人と働き日本人の仕事の仕方や同僚とのコミュニケーションの仕方などを体感してみたいと思いました。また、日本の景観が好きで、京都などの有名な場所に行ってみたいと思いました。

Q:日本で生活していて驚いたことはありますか?


Aさん:まず来日して一番初めに驚いたことは、日本の道路がカンボジアの道路と左右が反対であることです。慣れるまで時間がかかりました。また、日本の景色がきれいなことにも驚きました。

Cさん:カンボジアには雨季と乾季しかありませんが、日本には季節が4つあることに驚きました。それぞれの季節で違う景色を楽しめることがうれしいです。去年は、来日後、仕事を始める前の研修中に紅葉を見て感動しました。

― 皆さんの仕事について教えてください


Q:なぜ介護の仕事を選びましたか?


Aさん:私が介護を勉強したいと思ったのは、高齢者の人生を支えたいと思ったからです。おじいさんおばあさんと話をするのがもともと好きで、お年寄りの助けになりたいと思いました。

Bさん:カンボジアではあまりない職業なので、新しくて面白いと思ったからです。介護の勉強をするいいチャンスになると思いました。介護のスキルと日本語を学んで、将来に活かしたいと思っています。

Cさん:高齢者や子供など、自分でできないことがある人たちを助けることが好きだからです。全部やってあげるのではなくできることは自分でやってもらい、困っている様子だったら手伝ったり教えてあげたりしたいと思っています。

Q:どのような仕事が一番楽しいですか?


Aさん:仕事の時間帯が早番、日勤、遅番に分かれており、私は一番仕事が多い早番が好きです。早番は忙しいので時間が経つのが一番早いからです。今はまだ夜勤の仕事はありませんが、夜勤を任せてもらえるように頑張っています。
一番好きな仕事はレクリエーションです。利用者さんと一緒に輪投げやボーリングなどをするのが楽しいです。

Bさん:私もレクリエーションが好きです。最近はレクリエーションのカラオケを通じて、演歌を覚えました。利用者さんはよく演歌を歌うので、私も歌詞を見て歌ったりメロディーを歌ったりします。

Cさん:利用者さんと話すことが一番楽しいです。お話を聞くことで、利用者さんのこれまでの生活を知ることができますし、私の日本語の勉強にもなります。

Q:仕事をする中で難しいことは何ですか?


Cさん:利用者さんは普段はとても優しいですが、時々気分が悪いと、怒ってしまうことがあります。先輩の日本人職員に相談したら、「一回距離をおいて、また数十分後に話しかけてみるといいよ」というアドバイスをもらいました。このように、何か困ったことがあったらすぐに他の職員の方々に相談するようにしています。

Bさん:利用者さんと日本語で話すことが難しいです。私の言っていることを分かってもらえないこともあります。そういう時は、ジェスチャーを使ったり絵を描いたりして伝わるように工夫をします。

Aさん:カンボジアの学校での勉強や練習がとても厳しかったので、今の仕事はとても楽しいです。ただ、私が担当した利用者さんが亡くなったときは、寂しかったし苦しかったです。その時はしばらくの間落ち込みました。

Cさん:私も、看取り介護を経験したことがあります。カンボジアでは、施設で家族と離れている状態で亡くなるということはあまりないので、施設の中で亡くなる利用者さんを見てとても辛く苦しかったです。日本人職員や利用者さんに心の持ちようや気分転換の方法を教えてもらい、何とか立ち直りました。

Q:日本で仕事をしたり生活をしたりする中で何か悩みがあったときに、誰に相談しますか?


Aさん:私はカンボジアで介護を教えてくれた先生に相談します。電話で相談すると、たくさんアドバイスをしてくれます。

Bさん:私もカンボジアにいる先生に相談をします。クメール語で相談に乗ってくれます。

Cさん:私はカンボジアにいる家族に相談します。最近は、やりたいことがたくさんあって困っているという相談をしたら、まずは目の前にあることを頑張って、それができるようになったら次のことにチャレンジすればいいというアドバイスをもらいました。

― 皆さんの将来について教えてください


Q:3年間の技能実習を終えた後、何をしたいと考えていますか?


Cさん:カンボジアでも介護の仕事を続けられればと考えていますが、同時に日本語の先生になりたいとも思っているので、日本語能力N3(注1)も習得しました。この先、まだ他にもやりたいことができるかもしれないですが、今はまず目の前の介護の仕事を頑張ろうと思っています。
(注1) N3 : 日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる。

Bさん:介護の勉強が楽しいのでもっとしたいです。利用者さんの身体や気持ちのことをもっと学びたいです。家族が心配なので一度カンボジアに戻りたいと考えていますが、カンボジアでもコロナの感染者が増えているので帰れるか不安です。

Aさん:介護の仕事が好きなので、介護福祉士とケアマネージャーの資格を取りたいと思っています。日本人職員の先輩で憧れの人がいるので、その人をお手本に頑張りたいです。

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学生レポーターの気づき・学び

実習生の皆さんが日本で学びたいという強い思いを持ちながら仕事を楽しんでいると話してくれた姿や、職員の方々が実習生を大切な仲間として接し、職場内外で親密な関係を構築している様子がとても印象的でした。「職場では上司部下の関係だけど、職場外では友達のような関係」という言葉からもわかるように、「日本で多くのことを経験させてあげたい」という職員の方々の思いが、インタビュー外の会話からも節々に感じられました。
そのような理想的な実習の現場を見ることで、偏見を持たず互いの文化を尊重することの大切さを改めて感じることができました。(相山)

寄り添う介護で利用者の心を開いたり、レクリエーションで施設の雰囲気を明るくしたり、おやつに母国のお菓子を作って皆を楽しませたり。実習生の皆さんが主体性を発揮し、職場に良い影響を与えているというお話を聞いて、胸を打たれました。こうした理想的な受け入れが可能となっているのは、実習生の頑張りはもちろんのことながら、施設の職員が日ごろから実習生ひとりひとりを気に掛ける意識が根づいているからだと思います。今回の訪問を通じて、企業と実習生が一緒になって作り上げていくのが、あるべき技能実習の姿だと感じました。(持田)

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JP-MIRAI youthとは
JP-MIRAI youthは、責任ある外国人労働者受け入れプラットフォーム( https://jp-mirai.org/jp/)のユース組織です。2021年8月から始動し、外国人労働者に関する活動・研究をしている、または関心を持つ方のための学びや交流の場を提供しています。

「学生レポーターによるインタビュー企画」とは
学生が外国人労働者受け入れ支援に取り組んでいらっしゃる企業・監理団体・送出機関に取材をし、さらに外国人労働者の方々にインタビューをすることで、多文化共生や在留外国人に関する知識と理解を深めることを目指す企画です。学生が外国人労働者支援の現場を実際に訪問し、そこで得た学びや気づきを同世代に発信していきます。


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