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山と僕 初心者ハイカーが思うこと

先日、あるスイス駐在の偉い日本の人がこう話しているのを聞いた。
「スイスの山ってもちろん綺麗なんですけど、どこも同じに見えるんですよね。一回行けば十分というか。」
咄嗟に反論できなかった僕はとても悔しかった。
大好きなスイスの山を侮辱されたような気持ちになった。

僕は日本の山はほとんど知らない。
日本アルプスに登ったことはないし、富士山にも登ったこともない。
東京近郊で一人でハイキングしに行くことはたまにあっても、山用の道具を買ったことすらなかった。

そんな僕がスイスで山の虜になった。
最初はスニーカーにジーンズ姿で行くような感じだったけれど(今思うと血の気が引く)、ハードシェルからテントまで基本的な山のギアは全て揃えるほどになった。
最初は数時間ほどの山行ばっかりだったけれど、もう7日間山に篭れるほどになった。
平日仕事をしている時だって、週末の天気がどうなっているか、どこの山域に行こうか、ついつい考えてしまう。
確実に、僕の頭の中は山を中心にして回っている。
最初は非日常であった山の世界が、段々僕の日常の世界へと変化してきている。

山は僕という人間がいかにちっぽけな存在なのか毎回自覚させてくれる。
これだけ毎週のように山に行っていると、他の人から体力があるように思われたりもするけれど、僕は体力がないし、臆病だし自分に自信のない人間である。
かれこれ6年くらいちゃんとした運動をしていないし、山にテント泊をしに行く前は常に最悪のことが起きないか不安になる。
人間は山には全く太刀打ちできない。
スイスの急峻な山は人の命をいとも簡単に奪い去る。
でも逆に自分のちっぽけさを自覚しているからこそ、変に背伸びせずに等身大の自分でいられる。
山はありのままの僕を迎え入れてくれる。
そんな包容力を持っている。


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