システム39と旅した10年 vol.12「仲間と駆け抜けたSIの世界 前編@M-SOLUTIONS株式会社 植草学/株式会社ソニックガーデン 倉貫義人」
このnoteについて
このnoteは、ジョイゾーを代表する対面開発サービス「システム39」が2024年6月30日に10周年を迎えることを記念し、スタートした連載企画です。
システム39とジョイゾーが歩んできた10年を振り返りながら、これまでお世話になった皆様への感謝と、これからの10年に向けたヒントを探していきます。
前回のnoteはこちらです!
今回のテーマは「kintoneエコシステムの仲間たち 前編」
今回はシステム39をリリースと同時期に、kintoneに関するビジネスを立ち上げたお二人、M-SOLUTIONS株式会社の植草さん、株式会社ソニックガーデンの倉貫さんに、座談会という形でお話をお聞きしました。
kintoneという共通点を持つ3社、しかしその道のりは同じではなく、それぞれの信じる道がありました。kintoneのエコシステムに関わってきた仲間としての歩みを振り返ります。
今回は前編として皆さんの10年を振り返ります。
似ているようで全然違う?パートナーとしての立ち位置
kintoneをビジネスにするきっかけ
ジョイゾー:
皆さん、この度はお集まりいただきありがとうございます!
10年という長い時間、kintoneにまつわるビジネスを実施されてきた皆さんに、まずどんなきっかけで始められたのかお聞きしたいです。
倉貫:
自分の場合はソニックガーデンという会社を2011年に起業して、その中でシステム開発をおこなってたんですね。案件が増えていく中で、これはゼロからスクラッチで作るのもったいないと感じるものが増えてきて。UIのこだわりはないし、ある程度の使いやすさだけでいいのにと考えた時に、Salesforceとkintoneが選択肢に上がったんです。
どうせなら日本の会社を応援したいよね、という話になってkintoneにしよう、そういう話になりましたね。
植草:
うちは2014年からkintoneのビジネスを始めていて、サイボウズの佐藤学さんから声をかけてもらいましたね。「SIやってもらえるとこないんだよね」ということで、それで始めたのがきっかけです。
kintone自体は知ってましたが、最初期はAPIもなかったので、このまま使っても何もできないよね、という認識でした。
ジョイゾー:
そうなんですね。その状態からどうやって実際のビジネスに結びついたんですか?
植草:
それはサイボウズのメンバーにも何人も入ってもらって、じゃあどうしたらいいんだろうねというのを試行錯誤しましたね。これならできるんじゃないか、と徐々に作っていった感じです。
僕たちの会社は大規模なお客様が多いので、kintoneだけというケースはほとんどなくて。クラウドと組み合わせるのが前提になってましたね。
ジョイゾー:
なるほど、kintoneだからこその限界もありつつ、やり方を模索されていったんですね。倉貫さんは案件でkintoneを活用しようとした時、同じような課題にぶつかりましたか?
倉貫:
それでいうと僕たちは、できることが狭くて早く作れるものを望んでいたので、kintoneがちょうど良かったんですよね。最初はカスタマイズをゴリゴリ書いて開発したりもしていたんですが、途中で書きすぎると保守性が下がるな、ってことで書くのを減らす方向性に舵を切ったんですよ。
植草:
そう、保守性っていう意味だとその課題にぶつかるんですよね。
kintone SIにおけるお互いの存在
ジョイゾー:
ありがとうございます。次のテーマに移りたいのですが、3社それぞれのことを認知したのはkintoneを各社がビジネスにした後だと思います。同時にkintoneビジネスの最前線を走る会社同士、お互いのことをどんな存在だと認識していたのか、ぜひお聞きしたいです。
四宮:
じゃあジョイゾーから。植草さん(M-SOLUTIONS)のところは、同じSIだけど、そもそもお互いのビジネスレイヤーが当時は全然違っていたので。M-SOLUTIONSさんは大規模なところをどんどんやっていく、うちはシステム39中心でやっていく、という感じで。そこで同じSIでも協業できるよね、っていう関係性で長くやっていたかな。
倉貫さん(ソニックガーデン)のところとは案件で何か一緒に、というのは全然なかったですけど、倉貫さんは「納品のない受託開発」というのを掲げられていて。うちとは、納品をしないのは同じだけど、アプローチする方法が違って、でも最終的に目指すべき形は同じだよねとうことで、色々と交流を図らせてもらいましたね。
植草:
僕らは納品のある請負開発なので、倉貫さんのところは全然違うんですよね。
一同:笑
植草:
倉貫さんのところはお客さんのニーズに合わせたアジャイル開発をやっていくというスタイルで、いいなとは思いながら、全然規模が違うので、そこは自分たちのやり方でやっていますね。
広い意味でSIという業界の中で、新しい形で倉貫さんたちがいて、自分たちもいる。kintoneを使うっていうパートナーとしは、今も変わらず仲間かなと。
ジョイゾー:
倉貫さんはどうですか?
倉貫:
そうですね、お二人は僕が中2の時の中1なんで、後輩としてみてます。
一同:笑
植草:
まさかの先輩のマウント笑
倉貫:
笑 とはいえ、kintoneの界隈やサイボウズさんとの繋がりという意味でいうと、ジョイゾーさんやM-SOLUTIONSさんが先にあって。kintoneのエコシステムやコミュニティが既に出来上がり始めているところに、僕らが後から入ってきたんですよ。
いつもkintoneにおいては追っかけさせてもらったなという感じですね。
展示会なんかでブースを出すのも、やっぱりジョイゾーさんとかがでっかいのを出されていて、僕たちまだまだ小さいところから頑張って行こう!みたいな感じでやってました。
ジョイゾー:
本当ですか?笑
倉貫:
そうですそうです!kintoneのコミュニティの中ではメインストリームになれないというか、そんな中でkintoneの界隈においては本当に先輩という感じでおつきあいさせてもらったなと思います。
SIビジネスとプロダクトビジネスの関係性
ジョイゾー:
ありがとうございます!
ここで、皆さんには10年のことをぜひ振り返っていただきたいなと思います。というのも、倉貫さん、植草さん、四宮さんが登壇された2014年のカンファレンスにおいて、未来のSI、次の10年のアプローチということでお話いただいていたと思います。そこから10年が経った今、改めて、どんな変化があったのかをぜひお聞きしたいです。
植草:
そういう意味で言うと、僕らはkintoneビジネスをやる前は、受託開発を人月で開発していたんですよ。kintoneで構築するとなった時に、基本的にローコードで実現できるので人月で言うと早くできて、受注金額が下がるんですね。だから人月はやめよう、という風に考えて、機能ごとに金額を換算して、予算に対して、どの機能を削るか、そんなアプローチをさせてもらったんですね。
通常の受託開発をスクラッチで作るよりは、たぶん利益率は高いと思いますし、基本機能にうまく寄せて作ることができれば、バグも少なくなる。その分品質が上がるというモデルになったかなと。
四宮:
言葉的にはファストシステム?
植草:
そうそう、ファストシステム。
植草:
ただ今もkintoneのパフォーマンス自体は大きく変わっていないので、大きなデータを扱うことについては未だに課題はある、というところですね。
そこに加えて、私たちはプロダクト、サービスを他にも展開していて。そうしていると、SIをそのまま続けていいのか、みたいな葛藤は出てきちゃいますけどね。まぁ辞めるつもりはないですけど笑
四宮:
ここで辞めるって言ったら、まぁまぁざわつきますよ笑
植草:
笑 でもパートナーの会社さんの中にはプロダクトに集中するところもこの10年でずいぶん出てきてますよね。
コーディングを含む開発はせず、ノーコードツールや連携サービスを使った開発しかしないと宣言している会社さんもあるぐらいなので。この10年でやっぱり変わってきていると思いますね。
ジョイゾー:
そういう意味で言うと、ここにいる3社は皆さんSI以外にサービスをお持ちですよね。SIだけでなく、サービス(プロダクト)も取り扱うという判断に至ったのは、どんなきっかけがあったんでしょうか?
植草:
僕らは毎年案件をしていて、同じようなカスタマイズをずっとし続けているところがあるんですね。そう言ったところをパーツ化して提供するのは絶対に必要だと思ってます。検索プラグインとはそういった経緯もありますね。
あとはもっとたくさんの人に使ってもらいたいと言うのはあるので、サービス自体を増やしているところもあります。あとは経営的に見ると、ストックが増えると楽になると言うのもあるので。
琴絵:
それで言うとジョイゾーは機能的にkintoneの基本機能にあったらいい、というのをプラグインにしていたと思う。サイボウズが気付いて基本機能に入れていくなら、なくなっていく。でもこれがあるといいよね、そういう本当にシンプルな機能のプラグインを出すと言うのが最初のうちの感覚だと思うよ。
四宮:
SIerってサブスク型のプロダクトをビジネスにするのって苦手というか下手っぴなところがあるんですよね笑。そして、会社の経営を安定させることができるストックビジネスに挑戦したいという気持ちは強いんだけれども、植草さんのいうように、挑戦して失敗するケースも正直多い印象。
なぜかというと、SIerってゴリゴリに要件を固めて機能を入れて構築やっていたから、そのマインドで作ると、誰も使えないくらい超絶複雑なものが出来上がってしまって。
そうじゃなくて、SIerでもストック型のサービスモデルが立ち上げられる可能性があって、SIと両立できる可能性があったのがkintoneかなと。
植草:
2014年にkintoneのプラグイン提供の基盤が始まって、そこが大きな転換点だと思うんですよね。我々はその2015年に検索拡張プラグインを出しているんですけど、SIで使う時にも設定すれば終わるっていうものをプラットフォーム上に提供できる機能ができたのが大きい。
プラグインとして出すという形ができたから、今のようにサービスとして出しやすくなったのかなと。
倉貫:
それでいうと、うちはプロダクトを作ろうというよりは、お客さんのニーズとして、利用範囲としては少ししか使わないんだけど、kintoneのアカウントを増やすのは、みたいなケースが多かったんですよ。
例えば、月1回給与明細見るだけでkintoneアカウントいるんですか?みたいな。実際のところkintoneの1アカウント社員分払うって大変ですよねっていうことで、そこをなんとかハックできないかと思いまして。
そこで、kintoneのアカウント少なくても社員みんな使えるみたいな、マイページの機能を作るっていうことをやってみて。本当はサイボウズさんに絶対に怒られるやつなんですけど笑
一同:笑
倉貫:
一度ちゃんとサイボウズさんに相談したら「そういうプロダクトいいですね!」と言っていただいて。そこでちゃんと商品として出そうとしたんですね。狙いがあったというよりは、本当にユーザーニーズに応えて言ったら、プロダクトになったというのが今の「じぶんシリーズ」の始まりでしたね。
基本的にはお客様ありきというか。クライアントのニーズをもとにパッケージを作る、クライアントをもとにカスタマイズする、クライアントをもとにシステムを作って提供するというのをやり続けてプロダクトに結びついたイメージです。そのスタンスはこれからも変わらないと思います。
後編に続く…
10年間、kintoneという同じフィールドで戦ってきたからこそ、共有できる苦労と見据える未来がありますね。後編は次の10年についてお聞きしていきます!ぜひご覧ください!
(ライティング:小渡 拓)