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医者の残業はどこまでか

2017年に聖路加国際病院に労基署が立ち入り、時間外労働に対する賃金が支払われていないことが指摘された。
うちの大学病院と聖路加国際病院は行き来があり、それはそれはブラックだとは聞いていた。でもそんなのどこも似たり寄ったりで聖路加に限った話でもない。

私は今まで2つの大学病院に勤務していたが、どちらもタイムカードはなかった。基本、大学病院の医者にタイムカードはない。
1年間出向で市中病院に勤務したことがあるが、その時はあった。

そもそも大学病院の仕事と言うのはどこまでが時間外労働でどこまでが自己研鑽なのかがわからない。線引きを私は知らないので、ちょっと考えてみた。

大学病院の三本柱に『診療・研究・教育』があり、これらは義務とされる。
しかしおそらく時間内労働とは診療のみをさし、研究・教育は入らないだろう。

なってみてわかったが、医者は書き物の雑務がものすごく多い。
私が放射線科を選んだのは、その雑務が比較的少ないこともある。

書き物の雑務をざっと考えてみる。

・サマリー(退院時要約)
・レセプト
・生命保険、がん保険書類の記載
・診断書作成

とりあえずなんだか書かないといけない書類が多い。簡単なものは隙間時間に終わらせることもできるが、基本的には診療が終わった後にやることになるだろう。これは診療および患者さんの生活に欠かせないものであるので、書類を書いている時間は残業代に含まれるであろう。

そして時間外と思われる時間帯に普通に行われていることとして

・カンファレンス
・院内勉強会・委員会
・抄読会

麻酔科のカンファは手術前の7時からだし、脳外科のカンファは7時半からだった。
また色んなカンファは18時半からとか19時半からとか、みんな診療が一区切りついたであろう、と思われる時間から始まる。
「えっ定時って何時から何時だっけ?」とつい思っちゃう時間設定だ。
カンファレンスは診療に必要なものであるため、残業代は出すべきなのであろう。
しかし、カンファレンスの準備はどうだろう?毎週カンファの症例を深く調べ、それについての文献も調べたりする。自分の勉強のためと言われてしまえばそれまでだ。

あと普通に担当の患者さんの容体が悪くて帰れない時がある。
若手の外科など手術後すぐ帰れるわけもない。
そして多くの医者が土日も患者さんの様子を見に病院に行く。これも診療の一部だが、行っても行かなくても給料は一緒だ。

次に研究
学会発表や研究、論文の執筆はしなければいけないと散々言われる割に自分のため、と言われ、勤務時間中にしてはいけない。通常業務が終わってから取り掛かるが、集中力もいるし、時間もかかる。
私は学会発表の準備を長年長時間やっており、自分の本当の仕事はスライドを作ることなのではないか、と何度も思った。
大学の名前を掲げて発表するものの、これは自己研鑽の一部となり、残業には当たらない。
抄読会も義務ではあるものの診療と直接関係はないので、時間外労働には入らないだろう。

最後に教育
めんどくさいことに大学病院で働くと言うことは教員であることを兼ねている。実習にきた学生の相手をしたり、授業をするといったことの他に試験を作る、とか試験監督をする、といった仕事がある。試験監督中は何もできないし、あんなの医者にやらせないで誰か雇えばいいのに、と思う。その時間働かなくていいと言えばそうだけど笑
そして入試の試験監督は土日にあり、まる一日潰れる。確か日当が出たが、恐ろしく安かった!!

私がすごいと思うのが、「残業代が欲しい」とか「こんなの間違っている」と文句を言っている医者がいないことだ聖人だからか、病院の中にしかおらず感覚が麻痺しているのか、そんなこと言うのは恥ずかしいと思っているからなのかはわからない。でもとりあえず誰も文句を言っていない。
でも一方で過労死する人はいるのだ

『ヒポクラティスの誓い』とか『医者の応召義務』とか『医者は聖職だ』とか色々あるが、我々は基本的に善人であると思う。善人が故に我慢しているところも多いと思う。
でも一方で労基署がバンバン時間外労働を取り締まるのも、なんかちょっと違う気もする。時間外だからもう診ません、とか、時間外手当てが出ないんだったら働きません、とか誰も言わない。そして病院が時間外手当てを払うにはみんなの時間外が長すぎるし、払ったら経営破綻になるだろう。

現場/現実を実際に知っている人間が双方(医者側と経営者側)満足が行くような仕組みを今後作っていって欲しい。


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