宮本廣志

1949年生れ。同志社大学文学部卒。10年以上の制作中断を経て、大阪市のAMI-KAN…

宮本廣志

1949年生れ。同志社大学文学部卒。10年以上の制作中断を経て、大阪市のAMI-KANOKO GALLERY等 にて現在まで9回の公開制作。

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現代絵画の終末と再生 1

L 工房通信 N0.1          ー 目次 ー  <像>の手帖  <流転の淵>について  「引き裂かれた湖」のこと   虚構のエレメントー三人展への自注ー  坩堝の底のアマルガムー作品展への自注ー  ー後記ー                    <像>の手帖            - はじめに - <像>の手帳は制作ノートの余白や端々に思いつくままに書かれたものから抜き出されたものがほとんどである。ここでは1984年から1989年までを載せたが一部は省略され

    • 「月兎と竜宮亀の物語」について

      このNOTEに発表したものは自費出版(風詠社)したもののコピーである。2024年1月10日現在ではコピーそのままである。ただし書籍では改行がなされているが、ここでは中途半端のままである。今後少しずつ、改行を含め訂正を加えていこうと考えている。完了は早くて数か月、遅くて今年中にすましたいと考えている。  なにしろ出版当初から誤字や句読点などのミスが目立った。2冊合わせて。訂正箇所が20か所以上ある。私は、創作当時、白内障を患っていて、ぼんやりと霞んだままの視界でワープロに打ち込

      • 「月兎と竜宮亀の物語Ⅱ永遠編」あとがき

        あとがき  この物語の着想は、2009年12月31日の深夜、JR高速バスで、東京から京都までの移動中の座席の中で生まれました。いつも高速バスの長時間の移動中での不快感と不眠に悩まされていた私は、どうせ寝れないならと考えて、何か童話でも夢想して時間を潰そうと、浦島太郎の昔話を思い出し、『もしも竜宮の亀が竜宮に帰ろうとする時に月から語りかけられたら』と思いついた瞬間に、この物語に襲われたのでした。発端と結末がすぐに出来上がりましたが、途中の物語は幾筋もの道順が浮かんでは消え、一晩

        • 「月兎と竜宮亀の物語Ⅱ永遠編」第十章2084年

          第十章その一 2084年の12月のある日、かつて亀島と呼ばれ100年前には首吊りの島と一部で呼ばれていたのっぽの小さな岩島に一艘のボートが近づきました。エンジンを切って手漕ぎで近づくのでした。ボートには三人の人が乗っていました。一人がタブレットを見ながら言いました。「たしかにこの島です 空から見ると反対側に階段が見えます これ以上近づくと波が高くてボートが岩にあたって転覆しますよ」と言いました。老人が、「アシモフや 空に上がって島の頂上までケーブルを引いてくれるかな」と言いま

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        現代絵画の終末と再生 1

          「月兎と竜宮亀の物語Ⅱ永遠編」第九章最後の日

          第九章その一 メルキアデスはその洞窟を後にしました。山の中腹から少しさがった平地まできてメルキアデスは喉が渇き、ちょうど小さな泉を見つけました。そこにかがんで喉を潤しました。泉の水は小さな流れとなって、見たこともない魚が泳いでいる小さな池へと続いていました。そしてそこから小川となって細長い島の南方へまっすぐに流れが続いていました。メルキアデスは微笑んでつぶやきました。「あの泉がそうなのか 私が最初にあの泉の水を飲むことになるとは」。そこは無人島でしたが未来に竜の住む島と呼ばれ

          「月兎と竜宮亀の物語Ⅱ永遠編」第九章最後の日

          「月兎と竜宮亀の物語Ⅱ永遠編」第八章顔のない人

          第八章その一 メルキアデスは竜亀が竜宮姫と向かい合ったとき、不思議なことにその光景が見えました。二人の間で何かの閃光が走るのを見ました。思わず瞼を一瞬閉じました。だが瞼を開いて見ようとした時には外の世界は移り変わっていました。過去へと時間を遡っていたのでした。次々に場所を変えながら外の光景は時が逆さになって進んでいくのです。太陽は昼から朝へそして夜へ、人々は逆さに歩き、車は逆に進み風は逆方向に流れ、木々の生長も大木から小さくなり風景は逆に進んでいきました。メルキアデスは自分が

          「月兎と竜宮亀の物語Ⅱ永遠編」第八章顔のない人

          「月兎と竜宮亀の物語Ⅱ永遠編」第七章竜宮姫

          第七章その一 鳥打帽の老人に向かってメルキアデスは、「この小屋全体が異次元の世界になるのです  ほんの一時のことですが 外観は変わりませんが 用心のために誰も近寄らせないようにしてほしいのです 金蠅王や お前さんにも頼みたい 一緒に帽子の上で見張っていておくれ」と言いました。そうして小屋の中は竜亀とメルキアデスだけになりました。メルキアデスは、「さあ まず本を整理しなくては でもそんな時間もない とりあえず<悠久の間>を作ることが先決だ」と言いました。そして小屋の外に出ると、

          「月兎と竜宮亀の物語Ⅱ永遠編」第七章竜宮姫

          「月兎と竜宮亀の物語Ⅱ永遠編」第六章  世界巡り

          第六章その一 二人が移動した場所は広大な草原の一角でした。そこは自然動物公園でした。柵で囲まれていて多くの陸亀がいました。メルキアデスについて行くと、ひとつの柵に大きな陸亀が一匹だけいました。竜亀は見覚えがありました。あの火山島で会った古老の亀でした。ふたりが現れると古老の亀が言いました。「やっとやって来たね そうすると隣の人はもしかして竜亀さんかね」と言いました。メルキアデスは驚いた様子で、「どうして分かったのですか」と言いました。竜亀は、「あのときの亀さんだね あれから火

          「月兎と竜宮亀の物語Ⅱ永遠編」第六章  世界巡り

          「月兎と竜宮亀の物語Ⅱ永遠編第五章 対話

          第五章その一 竜亀とメルキアデスはピロリのいなくなった部屋を改めて眺めました。そこはまるで美術館か博物館の倉庫のようでした。すべてのものが所狭しと、雑然とした状態で置かれているのでした。天井から豪華なシャンデリアや飾り物がぶら下げられ、壁には旧い絵画やレリーフなどが架けられていました。メルキアデスは、「このテーブルと椅子以外には生活の香りがしない 住処は別にあるのだろう」と言いながら何かを探しはじめました。そして大きな鉄の飾りのついた箱の蓋を開けて中を探していたメルキアデスが

          「月兎と竜宮亀の物語Ⅱ永遠編第五章 対話

          「月兎と竜宮亀の物語Ⅱ永遠編」第四章 玉手箱

          第四章その一 誰もいなくなった亀島の洞窟の部屋の中央には、白い円の中に白い四つの記号が記されていました。そのうち黒い小さな蟻達が島の頂から小さな砂粒を運びながら列を作って下りてきました。そして白いイチジクの汁に砂粒をひとつひとつかぶせていきました。そうしてすっかり砂粒に覆われてしまいました。しばらくして海からの風が洞窟のふたつの入り口を吹き抜けると、砂粒に覆われた記号もどこかへ消え去ってしまいました。茶色いチョコレートもどこかへ消えてすっかりもとの何もない岩石の床になりました

          「月兎と竜宮亀の物語Ⅱ永遠編」第四章 玉手箱

          月兎と竜宮亀の物語Ⅱ永遠編 第三章 宝玉 

          第三章その一 シーラは驚いて彫像を逆さにしてその穴を覗き込み、なんとか取り出そうとするのですが、小さい穴にピタリと入りこんだ玉をとても取り出せません。穴を下にして彫像を揺するのですが玉は落ちてきませんでした。竜亀はそのとき思いました。『私はこの洞窟に来たとき 首飾りや身につけている黒い服を見て海女のユカリやクレオパトラと見間違ったのだけど シーラの顔もまた彼女たちとそっくりだな そしてこの黒瑠璃の彫像ともそっくりだ シーラも美しい女性だな』と思うのでした。シーラは黒玉を取り出

          月兎と竜宮亀の物語Ⅱ永遠編 第三章 宝玉 

          「月兎と竜宮亀の物語Ⅱ永遠編」第二章壁画

          第二章その一 ゼットと名乗る老人は老人というより精悍な顔つきの老いていない人でした。さきほどの老人が白髪だったのに比べてまだ髪は黒々としていました。竜亀は、『どういうことだろう』と思って眺めていると老人は少し微笑んで、「竜亀さん いやターレスさんですね 少し待ってください」と言って隠し扉の向こうに消えました。しばらくするとさきほどの白髪の老人が現れました。老人は、「私の普段の姿はこうなのです さきほどの姿が本当の私ですが 今は隣の部屋のカールの父ヘッケルということになっていま

          「月兎と竜宮亀の物語Ⅱ永遠編」第二章壁画

          「月兎と竜宮亀の物語Ⅱ永遠編」第一章亀島

          第一章その一 竜亀は海面に出ると無心に泳ぎはじめました。しばらくして、なんだか心に大きな空洞をかかえたような気持ちになりその空虚感でとても耐え切れなくなりふと大空を眺めました。その海の上に広がる大きな空の色を見て竜亀は、『なんと美しい青だ』と思いました。いままで数えきれないほど空を見てきたはずなのに、こんなにも青色が美しく見えたことはありませんでした。その美しさにまたしても涙があふれてきて瞼の裏には青い光がにじみ、竜亀は思わず嗚咽するのでした。竜亀は、『私の心がきっと青色をこ

          「月兎と竜宮亀の物語Ⅱ永遠編」第一章亀島

          「月兎と竜宮亀の物語Ⅰ海洋編」第十章<時空と予知の泉>

          第十章その一 あるとき、いつものように竜宮姫が<時空と予知の泉>の中を眺めていました。竜亀は中庭の大理石の台の上で寝そべりぼんやりしていると竜宮姫が心の声を響かせました。「亀さん泉のところへ来てください 白鯨さんが見えます」と言うので竜亀は、『白鯨の兄さんが何を』と思って泉に近寄って水面を見ましたが何も見えません。竜宮姫に言われて自分の宝玉を泉に落としました。たちまち泉の表面の水は静止して、丸い底には、北海に浮かぶ氷の上にあがり、寝をしている白鯨の姿が見えました。竜宮姫は、「

          「月兎と竜宮亀の物語Ⅰ海洋編」第十章<時空と予知の泉>

          「月兎と竜宮亀の物語1海洋編」第九章 竜宮

          第九章その一 竜亀は北の海にふたたび向かって氷原の分厚い氷の下の海中を泳ぎ、竜宮のある大洋に出て浮かび上がると、そこからまた南へと進むのでした。竜亀はまっすぐに竜宮をめざしました。メルキアデスと別れてからおよそ一年後、ようやく南の海にぽっかりと浮かぶ竜宮のある 島にやってきました。それは岩ばかりの小さな島でした。草木は一本もなく、わずかの海鳥が翼を休めていました。竜亀は深く潜っていきました。なつかしい多くの魚が泳いでいました。およそ二十年前には小さかった鮫やエイはとても大きく

          「月兎と竜宮亀の物語1海洋編」第九章 竜宮

          「月兎と竜宮亀の物語1海洋編」第八章メルキアデス

          第八章その一 「やあ アルファか 久しぶりだな あれから五百年か 一年前に竜宮から戻ってね お前がこちらの海にいると聞いてね 神亀と言われているそうじゃないか でも元気そうでなによりだ」と竜亀が言うと、アルファと竜亀はおたがいの頭をゴンと合わせてうれしそうに挨拶するのでした。アルファが、「かあさんが亡くなって何千年も経つ 他の兄弟たちはゆくえ知らず 多分とっくに死んでしまったのだろう とうさんを知っているのは僕だけになってしまった」と言うと竜亀は、「僕とか言う言い方はやめてく

          「月兎と竜宮亀の物語1海洋編」第八章メルキアデス