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「月兎と竜宮亀の物語Ⅱ永遠編」あとがき


あとがき
 この物語の着想は、2009年12月31日の深夜、JR高速バスで、東京から京都までの移動中の座席の中で生まれました。いつも高速バスの長時間の移動中での不快感と不眠に悩まされていた私は、どうせ寝れないならと考えて、何か童話でも夢想して時間を潰そうと、浦島太郎の昔話を思い出し、『もしも竜宮の亀が竜宮に帰ろうとする時に月から語りかけられたら』と思いついた瞬間に、この物語に襲われたのでした。発端と結末がすぐに出来上がりましたが、途中の物語は幾筋もの道順が浮かんでは消え、一晩中迷路の中をさまよい、一睡もできませんでした。実際に執筆を始めると、さらに複雑な迷路に迷い、何度も行き詰まりました。当初の四部作の計画は今の自分の能力では無理だと判断して、縮めて二部作でひとまず完了とすることにしました。しかし物語に完結は無いというのが持論ですので、いつかまた、続きを執筆するかもしれません。どんな物語の筋にもいくつもの脇道があり、その道をたどっていくとまた別の物語に出合います。いつまでも終わらないのです。これは人の人生だって同じことです。終わったと思った自分の人生だって、いつどのように変幻していくか、自分でも分からないのですから。いや、人の生は突然に断絶して終わることもある。大地震や津波で命が失われることは誰にでもありうる。人並みに年老いて分かってきたのは、明日はどうなるか不明だということです。自分の人生も世界も。
作 者