じゃっく・はんま

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おもしれぇ現実 4月編 4話『😅』

今どきの大学生って、飲み会が終わって好きな人と同じ方面だから勇気をだして一緒に帰ろうよって言った後に、終電までのほんの時間での雑談で好きな人が「好きな人とオススメを共有するプレイリストとか作ってみたいな」って言うもんだから、浮き越しながら「Jorja Smithっていうシンガーが好きで、、、」って婉曲的な告白するんでしょ?そんで少しだけ空く間を和らげるように上着に染み付いた副流煙が一瞬鼻腔をくすぐった後に「私は最近ステラ・ドネリーって人にハマっててね」って紡ぐんでしょ?おじさ

    • 現役大学生ラッパーが留年するまでの話・卒業2/4 

       大学で迎えた五回目の春、俺はまだ学部生。SNSを開けば卒業した同級生たちはキラキラした新生活を謳歌していた。いまさら同級生との格差などは些細なことであるが、当時の俺の心を蝕んだのは新入生の存在である。かつての自分がそうであったように、胸に希望を、目には光を、ぎこちないながらも精一杯生きている彼らの存在は、紆余曲折で心が屈折した俺にはあまりに眩しい。  そもそも二回生の後期で不登校になった頃から、SNSで「#春から○○大」という投稿が増える時期は毎日発狂しそうになっていたの

      • おもしれぇ現実 4月編 3話「握力」

         4月5日、桜満開のこの日、俺は大濠公園の桜並木通りを全力で走っていた。彼女との花見デートの待ち合わせに遅刻した俺は腰痛が突っ張るのをこらえながら、とにかく足を少しでも早く前に突き出すことを繰り返しながらどうやって謝ろうか考えていた。  いや、そもそも謝って済む話ではないことくらい頭では分かっている。ただ一つ俺が他人の気持ちを踏み躙ってしまったという事実だけが胸中に深く突き刺さっている、届かない誠意に意味はないと昔自分で書いたがそんな事はどうでもいい、許されたいという気持ち

        • おもしれぇ現実 4月編 2話「二刀流」

           酒だ、一も二もなく酒だ。サイファーから帰路に着いた終電でその言葉が脳内を低回する。缶ビール一本とカップ酒では物足りないよ、なぁ脳みそ(マイメン)?  あいにくの雨、バイトの疲れと、程よい喉の焦げつきが既に体は準備万端であると信号を発してやまない。フリーターの身分でこんなに飲んでいいのだろうか、そもそも5時間後にはバイトに行かなくてはならないのに。しかしながら体はすでに家の最寄りのスーパーの酒コーナー。米焼酎か芋焼酎かで迷うくらいには思考の歯車は止まることを知らない。  

        おもしれぇ現実 4月編 4話『😅』

          おもしれぇ現実 4月編 1話「寒い」

          第1志望:もう1回中学生 第2志望:フリーター 第3志望:自宅警備員  中学3年の時に再提出をくらった進路希望調査書の内容がコンビニの喫煙所でふと思い出された。よかったじゃん、第2希望は叶ったぞ、15歳の俺よ。  卒業できると思っておらず、就職活動を一切しなかった結果就職先がないという状態で大学を卒業した俺は、新年度一発目のアルバイトを寝坊するというスタートを切った。大学2留目を覚悟していた矢先に人生の夏休みが呆気なく終わった喪失感と、将来への漠然とした恐怖が肩に重くのし

          おもしれぇ現実 4月編 1話「寒い」

          現役大学生ラッパーが留年するまでの話・卒業1/4

           いい子にも悪い子にもなれない画面の前のみんな。おはよう。  いつも通りの帰り道で冒険したい欲求を抑えて右に曲がったり、お金がないのにブラックの缶コーヒーを買ってみたり、運動がてら一駅分歩いたけれどカップ焼きそばをドカ食いして帳消しにしてしまったり。  過去をつまみにペシミズムをストレートで飲み干すことが常習化しているであろう諸君らはきっと、こんな小さな後ろめたさを毎日引きずっていることと察する、案ずることなかれ、『現役大学生ラッパーが留年するまでの話』シリーズをいったん

          現役大学生ラッパーが留年するまでの話・卒業1/4

          留年の起源

           留年とは進級や卒業がかなわず一定期間以上在学し続ける事を指す。その起源は秦の始皇帝の時代、王朝が永久に続くようあらゆる学問を研究し、対策を講じたたことに見られる。始皇帝はこの時間を止めれば永遠に権力が継続するとして、当時占星術の専門家の中でも特に秀でた留仁(りゅう・にん 前215~前259)という学者を重用した。留仁は占星術によって天体の動きから時間を研究し、どうすれば一つの治世を永続させられるかを試行錯誤したが時間が止まるはずもなく、この研究の事態を始皇帝に申し出たが、そ

          現実くんさぁwww

           まどろみにドレスコードを強要して静謐さという香水を一振りしたような薄暗い空間。独特のふわふわした感覚。自由に動かせない手の感触。これは夢だ。直感的にそう悟ると同時に、左隣にはかつてこの身の全てを捧げても構わないと思うほどに情熱を注いだあの子。  あぁやはりこの空間は夢なんだ。猛暑日に追い打ちをかけるように浴びせられる、大型車の排気ガスの熱気にうんざりするあの気持ち悪さのようにつくづく実感する。二十歳の冬に会ったのが最後。話したのは大学の卒業式が最後(「現役大学生ラッパーが

          現実くんさぁwww

          ショートショート「娯楽」

           「この周辺はスペースデブリが多いな」  窓の中を覗いてエフ隊長はつぶやいた。  操縦桿を握る部下は「それだけ宇宙進出が進んでいるのでしょう。今回は成果が期待できますな」と答えた。  2人は依頼を受けて宇宙を探索する研究者だ。これまで多くの惑星を訪れては優れた研究成果を残し、今回もローンの残っている宇宙船で目的の惑星を目指していた。  「文明の進んだ星だと衣食住に困らないからありがたいな」  「前回は未開の惑星で苦労しましたからね。肉食獣や急な気候変化が無いことを期待したいも

          ショートショート「娯楽」

          卒業論文の起源

          卒業論文とは大学生が研究の集大成として執筆する論文である。その起源は漢代中国において、皇帝の教育係を務めた僧侶の教・珠(きょう・じゅ BC220~299)の今際の際の故事にちなんだためであると言う学説が昨今の東洋史研究者たちの間では支配的である。 教・珠は今際の際に500人の弟子を病床の傍に集め。これまでの人生で得た教訓を口頭で伝え説法を行った言われ、人生の業からの卒業という意味で彼の最後の教訓は卒業論文と呼ばれた。 彼の残した卒業論文は後世の皇帝の幼少教育や、様々な東洋

          私立 宝石みてぇな思い出大学

          私立宝石みてぇな思い出大学/片思い学部/一歩踏み出せなかった学科/今はあなたの幸せを願って生きているコース専攻 研究内容 ・てめぇの不幸にすら感謝を込めて生きる ・愛されていたのに愛し方を学ぼうとしなかった愚かさを直視する ・行く先々であなたを思い出して自分の弱さと向き合う ・心の合鍵を押し付ける ・ふと立ち寄ったオシャレな飲食店で「君と一緒だったらな」と少しだけ妄想する ・夜中にタバコを吸いながら少しだけ泣く 卒論題目 『木漏れ日みてぇに穏やかだったあの日々についての研

          私立 宝石みてぇな思い出大学

          学歴厨の起源

          学歴厨は現代社会においては自身、または他者の学歴を評価の指標に用いる特定の人種を指す。その起源は古代中国において科挙の合格者の経歴と素性を調べ上げる役職「諤礫厨(がくれきちゅう)」であると言われている。 「諤礫厨(がくれきちゅう)」は科挙合格者の成績上位者を選りすぐって任命される名誉職であり。合格者が皇帝に仕えるに相応しい人物であるか、能力の程度、家柄や祖先などを徹底的に調べ上げて出世や人事に寄与していた。しかし他者のプライベートな部分に無遠慮に踏み込む仕事柄宦官と同様に周

          抹茶ラテの起源

          緒言  じゃっくは一応大学生である。二回目の四回生を謳歌している。高校三年生の時に日本史の教師になりたいという志を抱いたことに現在の辛苦は起因する。  歴史学を学ぶ一学徒としてHIPHOP以外にも歴史の話をしようと思い至り筆を執った次第である。本稿は昨今の若者に人気な抹茶ラテに関するものであり、じゃっくの個人的な好奇心による作品である。  抹茶ラテは昨今若者に人気の飲み物である。抹茶は、緑茶の葉を細かく砕いた粉末で、伝統的に東アジアで消費されている。日本では茶道で飲用とし

          切なすぎてワロタ

          6歳の時親の仕事の都合で福岡から兵庫に引っ越した。 お盆休みに福岡の母方の祖父母の所へ遊びに行き帰りの飛行機の時間が近づいたころ。 俺が帰るのはあのお家ではないんだと、爺ちゃんの運転する車の後部座席で感じた夏。 切なすぎてワロタ 小学校6年生の夏休み。明け方に目が覚めた。 窓を開けると。ポケットに入れて独り占めしたくなるような優しい空が広がっていた。 着替えて散歩に出かける。見慣れた通学路が歴史ある寺社仏閣の廊下みてぇに静謐で涼しかった。親の仕事の都合で転校が決ま

          切なすぎてワロタ

          現役大学生ラッパーが留年するまでの話・後日談

           3月19日。本来なら友達と人生の門出の喜びを共有していたはずの日。俺は友達に「卒業おめでとう」と言うため大学に来ていた。  完結編から1年間。俺は今を生きてきたつもりだ。留年を1年で済ませる為に単位取得に奔走し、就活で受ける業界を自分で調べて絞り、卒論のテーマの参考文献を漁る日々を送った。  式の終わりに友達と合流した俺は4年間の思い出話に花を咲かせ、人生の夏休みが終わることへの未練を誤魔化すように何枚も写真を撮った。こんなに気持ちが晴れやかな8月31日があっていいのか

          現役大学生ラッパーが留年するまでの話・後日談

          現役大学生ラッパーが留年するまでの話・完結編③

           「卒業したい意志があるならばきっと出来る」  先生たちの励ましで修学指導は終わった。俺は研究室にいた友達に「それじゃあまた」と一言残し大学を抜けて最寄りの喫煙所にいた。  イヤホンでは輪入道が「俺はやる」を熱唱している。ボリュームを落としてベンチに座ると俺は思案に耽った。 煌々と注ぐ昼下がりの太陽光は親切にも口をつぐんでくれた。  俺はこれから何に報いるべきなのか。まずは親にだろう。そして俺を応援してくれる友達やイベントに遊びに来てくれるヘッズたち。なによりこ

          現役大学生ラッパーが留年するまでの話・完結編③