ニーナちゃんと神奈川県

子どもの頃、ニーナちゃんと神奈川県に憧れていた。
ニーナちゃんとは私が通っていた英会話教室のテキストに出てくる女の子だ。そのテキストには何人かのキャラクターが出てきたけど、私はニーナちゃん推しだった。別にニーナちゃんの情報なんてほとんどなかったけど、私は妄想をふくらませた。ニーナちゃんはオレンジ色が好きで、家にはたぶん黒くて大きい犬がいる。緑の芝生を犬と走るニーナちゃんは快活なオーラを振りまいている。ニーナちゃんが動物にむける真摯な目。そこからは彼女の賢さと嘘のなさが伝わってくる。

私は基本東京育ち(埼玉寄りの)なのだけど、それをちょっとつまらないと当時は思っていた。地方の文化とかが羨ましかった。両親の実家には長い休みに帰っていたけど、ときどき帰るのと暮らすのは違う。神奈川県に憧れ出したのは、いろんな子どもの詩が載っている本を読んだのがきっかけだった。もう内容も忘れちゃったけど、私の心を捉えた詩の最後に(神奈川県)と記載があった。私は神奈川県についてほとんど何も知らないのに、もしくはだからこそ、神奈川県出身であることは私が手に入れられない何かを得ることを象徴していてるように思えた。みえる景色が違うことで、違う視点を持った人間になる。今考えると、私が勝手にイメージした神奈川県在住のその女の子とニーナちゃんはだいぶ似ていた。ただニーナちゃんはより明るい感じで、神奈川県の女の子はもうちょっと落ち着いているというか、達観しているようなところがある。どちらの女の子にも私は賢さを感じた。そして憧れた。


私はあるときふと気がついた。私は「な」という音の響きが好きなのだ。私は「な」の音が入っているものに憧れやすかった。意味がわかってないときから、「神無月」の響きが好きだったのとかもたぶんそれだ。


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