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クリスマスの宗教的背景 - 私の地元のクリスマスは12月1日~1月6日 -

11月上旬「A Brilliant Christmas」という舞台を観に行き、内容は題名の通りクリスマスのお話だったのだが、ふと思った。

日本ってクリスマスは12月24日と25日だけだよね?

何当たり前のこと言ってんだと思われるかもしれないが、本来はすごーく長いお祭りなのだ。私の地元では12月1日~1月6で、他の国内の地域に比べて実は長めだったりする。より正確には25日から逆算して、日曜日4回分から開始、よって普通に11月末にかかったりはすることもある。

ふと疑問なのだが、これは日本のキリスト教徒的には常識って思っていいのだろうか?

なんというか、来日14年経った今でも、正直未だに日本の"商業的"クリスマスに馴染めていないのだ。
恋人はサンタクロースじゃないし、サンタクロースは赤い服のプレゼントを運ぶ人じゃない!本当は奴隷を連れた偉いおじいさんなんだ!と思ってしまう。ケーキなんか食べない!チキンは食べないけどガチョウを食べる家庭はある!伝統的には鯉が正解!と思わず熱弁したくなってしまう。

要はヨーロッパから来た私からすると宗教色がなさすぎて寂しいのだ。

しかし日本で宗教色を出されても正直困るというか、ちょっと気味が悪いのでそのままで良い。むしろ日本にも共通するような風習もあって面白いかと思ったので、これを機に日本の皆様に紹介したい。


イベントのご紹介

Advent(待降節)

日本ではアドべントカレンダーお馴染みとなったアドべントとは、教会暦で新しい1年がが始まる時である。
風習としてはモミの木の枝でできたリースに太いロウソクが4つ乗っかっていて、日曜日になるたびに1つ灯す。現代はロウソクの色は様々だが保守的なのはやはり赤色。リースはリボンやリンゴ、松ぼっくりなどで装飾が施されている。ロウソクの灯りが一つ増えるたびにキリストの誕生が近づいてくることを視覚化する、そんな風習である。

いつの間にか日本にも進出したアドベントカレンダーは本来は時間を図る方法として導入されたものだが、現代はあくまでも子供のものといった感じで、大人向けのものではない。アメリカ文化経由でコスメのアドベントカレンダーが出たりもしているが、これはアメリカではヨーロッパよりも商業色が強うことに由来する。ちなみに土台となる布にポケットを25〜26個縫い付け、お菓子を入れておくことで自作することもできる。保守的なのものは宗教画を掛けたりするのだが、それを導入している家庭は少ない印象だ。

クリスマスピラミッド(Weihnachtspyramide)は我が家にはなかったが、これらももこの時期に飾り始めるものかと思う。クリスマスピラミッドとは文字通りピラミッド状の装飾品で、ロウソクをつけると暖かい空気が上に登ってプロペラに当たることで天使などの人形が回る仕掛けになっている。画稿検索していただければピンと来る方が多いと思う。

Weihnachtspyramideの大型版。こちらはロウソクの気流ではなく電気で回っている。

すっかり日本でもおなじみとなったクリスマスマーケットは冬、そしてクリスマスに備えるためのお店で、ナッツなどの食材やクリスマス用の装飾品を売っている。

本来はアドベントというのは断食の期間だったりして、パーティーの類も禁止されていた。聖書の中の「アダムとイブの知恵の実事件から4000年後、救世主が現れる」というのが"4週間"の由来らしいのだが、不勉強で大人になった今もよく意味が正直わかっていない。

Barbaratag(聖バルバラの日)

地元ではあんまり盛んではなかった聖バルバラの日。習慣としては存在してい流が、特別なイベントなわけでもないので日本人家庭に育った私にはあまり馴染みがない。

聖バルバラを想ってBarbarazweig(リンゴやニワトコ?やレンギョウ?)を飾る風習がある。もし真似したい方がいたら、咲いた花の数だけ幸せが訪れると言われているので大切に育てましょう。

この習慣の由来なのだが、キリスト教が禁止だった時代にバルバラという女性が、クリスチャンだったことが親にバレて捕まってしまい拷問を受けることになったのだが、その道中に衣を引っ掛けて折れちゃった枝を生けたら花が咲いたことに由来するんだとか。(※後に殉教したところにドラマがある。)

Nikolaustag(聖ニコラスの日)

これは私が日本の人に最もお教えしたい日かもしれない。聖ニコラスとはサンタさんの原型なのだ。彼は12月24日の夜中ではなく12月6日に子供達の元へやって来てみかんやナッツをくれる。彼は「サンタさん」の格好ではなく司教服を着て杖をついている。私の通っていた幼稚園に来てくれた聖ニコラスは白い司教服を着ていた。
名前が国を跨ぐ度に訛って"聖クロース"になって、最終的に商業的なキャラクターになってしまった。コカコーラがキャンペーンとして赤白の服を着せた姿がアメリカ圏を中心に広まったという噂はヨーロッパでは有名であるが、司教服が赤かったことに由来するという説もある。

聖ニコラスは、貧しくて身売りしなければならない子供3人が暮らす家に窓から金を投げ込んだとされている。よって、頻繁に金色の宝玉や、りんごを3つ持っている姿で表現される。煙突から投げ入れたという説もあるようだが、私の地元では主流ではなかったが、暖炉に靴下を下げるのはこの派閥だ。(個人的には煙突は別の話と混同されていると思うのだが、何に由来するものだか忘れてしまった。)
他にも彼のおかげで、子宝に恵まれない夫婦がに子供を授かったりという逸話がある。その子供はのちに誘拐されてしまうが、聖ニコラスが両親との再会に導いたとされる。他にも亡くなった子供を生き返らせたといった奇跡も語られている。
これらの言い伝えから子供の守護聖人になり、聖ニコラスの日は日本でいうところの「こどもの日」に当たるといってもいいかもしれない。
他にも難破船が祈りを捧げると、聖ニコラスが現れ海を静めたことから、船乗りに取っても守護聖人とされている。

北部では黒人の奴隷を連れている姿で描かれ、いい子にはプレゼントをあげて、悪い子には鞭打ちをするのがその奴隷の仕事である。アメリカンなサンタクロースと異なり、リアルな歴史を感じられる。南の山の方ではプレゼントを渡す天使と悪い子を追い回す"Krampus"という名の悪魔を連れているそうだ。悪魔は概ね日本のなまはげと同じ役割を持っているようだ。

Heiligabend(クリスマスイヴ)

この日までにはクリスマスカードが届いていてほしい時期である。クリスマスカードは日本で言うところの年賀状的役割を持っているが、日本のように別途回収じゃないので、もしこれを読んでいるあなたが国外に住んでいるなら、混雑が予想されるため通常の倍を見て1~2週間前くらいには投函しましょう。

そしてこの日になってやっとクリスマスツリーの出番である。ツリーの装飾について解説しよう。

  • ロウソク:光

  • ツリー頂上の星:ベツレヘムの星(本来は六芒星が正しい)

  • 丸いオーナメント:諸説あり、始まりと終わりのない球体が永遠を表している、もしくはエデンの実であるリンゴを代替しているという考え方もある

  • ベル:天の使いからの知らせ

  • 松ぼっくり、くるみ、焼き菓子:実りと永遠の命、神の意志(貧しい子供は持ってって良かったんだとか)

  • 藁でできたオーナメント:藁の上にキリストを寝かせたことに由来する。一般的には星や天使の形に作ってある

  • 天使、鐘:天と地上を繋ぐ役割

  • Lametta=吊り下げる金銀赤のキラキラした紐:つららを表現している

これは日本でいうところの神棚や精霊馬的な立ち位置と言えるかもしれない。

学校や教会では子供がお芝居(降誕劇)をやる。(そういえばこの時なんて言われたか覚えていない…「リンジェはやっちゃダメ」と同級生たちから言われたような記憶があるのだが…ちょっと曖昧だ)

基本的にはこの日に家族で食事をし、プレゼントが渡されるイメージだろうか。地域によってはプレゼントは25日になってからというところもある。ちなみに夜プレゼントを置いていくのはサンタさんではない。イエス様からの贈り物であるということは強調しておきたい。

鯉食べる地域あると聞く。鯉は本来は断食時に食べるもので、それらの持つ鱗はコインに似ているため、身につけると金運をもたらすと言われている。骨を木の下に埋めるとより願いが実るとも言われているんだとか。

1. + 2. Weihnachtstag(第1・第2クリスマス)

この日がまさにクリスマスの「本番」であり、ここで盛大なミサが行われる。私はあくまでも異教徒なのでお邪魔しないようにしていた。ところで"1.+2."と書いてあるのは私の出身地ではクリスマスが2日間あるからなのだが、どこも2日間なわけじゃないんだということを日本に来た知った。そこでアメリカだけでなく、他の欧州の国でさえもたったの1日だけだと知った。流石にカルチャーショックだった。
ちなみに2日間である理由は、1日目は生誕祭、2日目は受肉祭であることにある。2日目は前日の食事の残りを食べるんだそうだ。欧州のクリスマスディナーはまさに日本のお正月のおせち料理だ。

Heilige Drei Könige(東方三博士の日)

東方三博士というのは現代で言うところの星占い師なのだが、その三人がそれぞれお香、お薬、金を持ってキリストの誕生を祝福しにきた日を祝し制定されているのがこの日。
"Sternsinger"という子供達が家を回って歌を歌う。歌い終えると玄関にチョークで"C+M+B" (Christus Mansionem Benedicatの略=キリストの祝福がこの家にありますようにの意)と年度を書いて、家に神の恵みを与える。(日本でいうと巫女さん的な立ち位置だろうか?)

この日はクリスマスシーズンの最終日で、使い終わったツリーの回収が来る。ツリーは装飾を外し、窓から捨てる。
ついでに豆知識披露すると実はこの日は欧州の旧正月に当たる。

Mariä Lichtmess(聖燭祭)※おまけ

聖燭祭とはマリアとヨセフがイエスを神殿に連れて行き、神に捧げた、マリアの潔めの儀式を行った日である。本来は東方三博士の日の役割があったのだが、それをバチカンが6日に移動することに決定したのだとか。

まとめ

というわけで以上、保守的なクリスマスのご紹介でした。

要はクリスマスみんなでイエスキリストをお迎えするわけで、そのために入念に準備をして、その後新年を迎えるのである。
まあ、キリスト教徒以外にとってはイエス・キリストがビックネームとは言えども比較的"どうでもいい人"なので、「誰もそこまでしないだろ」という話にはなってくるだろう。
クリスマスは多民族が暮らすアメリカで商業的な色が強くなり、それがそのままアジアに輸入されたということを、日本で暮らしていると実感するし、特にサンタさんの変貌がすごいなあと改めて思う。

宗教の源流から離れるほど教義がやや雑になることはあるかもしれないが、そもそもイスラム、ユダヤ、クリスチャンとそれぞれが分裂していったように、教義に賛同しきれないタイプがその源流から離れて行ったのが原因かと考察する。
むしろ日本や他国の習慣に似た役割もあり、ちょっと親近感を感じてもらえたかと思う。
同時に、聖書にはそんなことでそんな目に合うの?!みたいな話多く、昔の人の厳しい生活も感じたりしなくもない。

昔と比べて圧倒的にいい世の中になったことをCelebrateしたいものだ。

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