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初めて障害者とお仕事をして

実は先日就活の一環で職場実習をしてきた。

私にとって障害をオープンにされている方とのお仕事は全く初めて。どんな体験になるんだろう?不安と期待を胸に私は朝都内のとても都会でおしゃれな街のオフィスビルへ向かった。

出迎えてくれたのは「指導員」と呼ばれる障害者たちの面倒をみてくれる方。
「入館手続きを済ませたら今日のスケジュールの確認をして朝礼に行きましょう。」
そう言って初めてオフィスに入る私をサポートしてくれた。

朝礼

朝は「おはようございます。」とみんなで挨拶を済ませると、誰が何時から何を担当するとか、一日のスケジュールを確認する。今回は私が実習にジョインするということでお互いに軽く自己紹介。
興味深かったのが最後にみんなで
「よろしくお願いします。」
「ありがとうございます。」
「失礼します。」
「失礼しました。」
などの言葉を復唱する。「知的障害の方がメインとは聞いていたけど、かなり教育が行き届いているな」と思ったが、よく考えてみたら健常者でもこういった一言が咄嗟に出てこないことは多いように感じる。

実は今家の向かいが絶賛工事中なのだが、車の中でオープンマイクで父が施工会社と揉めている会話を聞いていた。「家のガレージの目の前にトラックを置かれては困る。今までの業者さんは毎回車を出そうとするたびにすぐ出てきてトラックをどけてくれたし、『何時にお戻りですか?』と最低限のことを聞いてくれた。御社は車を出したいと声をかけてもサッと足場から降りてこないし『どければいいんでしょう』という言い方をする。朝から見ているが、誘導員もいないことから道路の使用許可も取っていないんでしょう。」と父が電話に出た社員を責めたてると、「うちとしては使用許可を取るよう彼らには言ってます。」と一言。そして社内プロセスを語り始めた。「ご不便おかけしております」どころか「失礼しました」の一言も最後まで彼の口から出ることはなかった。

見学兼体験

実は知的障害の方中心の職場は私が入る予定のチームではないのだが、部署としては同じで欠員が出た時サポートに入ることもあると言う。それを見越してそちらの職務も見学してほしいとのことだった。

体験になると指導員が作業中の彼らに「〇〇さんはどうやってやっていますか?工夫していることはありますか?」と話かける。障害があるだけあって自分のやっていることをうまく言語化できず「うーん…僕はまずこれを先にやります。その後はこっちという風に…すみません、うまく説明できなくて。」と言っていたが「大丈夫です。伝わりました!」と声をかけて一緒に作業した。
書類のホチキス留めでは「すみません、ホチキスの針がなくなってしまったのですがどこにありますか?」と話しかけると一人がダッシュで引き出しに駆け出し、針を出して「はい!僕針入れるのはできないんですけど。」と手渡してくれた。過去に針を手に刺したのがトラウマになっているんだとか。「大丈夫です。自分で入れられます。ありがとうございます!」と会話成立。

ここで私自身も「知的障害」に対して偏見を持っていたことに気づいた。
人生ではもっと重度で会話が成立しないような方々ばかり見てきていたので、そもそもこんな風に一緒に作業することが成立すると思っていなかったのだ。電車の中で奇声を上げたり、暴れたりする人を多く見てきたせいで偏見が構築されてしまっていた。しかし実社会には彼らのように一見ではわからない知的障害の方々が存在するんだということに気付かされた。
そしてお昼休みに彼らのバックグラウンドが発覚する。

昼食

昼食は社食を利用してみたかったので、指導員に説明してもらいながら購入し、その方や上長の方々とお話しながら食事をとった。従業員の皆さんの経歴などを教えてくれた。
「こんな言い方は良くはないんだけど、彼らも障害が軽い方でね」「〇〇さんは元〇〇の選手。あと〇〇さんは学生時代〇〇で国体で優秀な成績を収めているんですよ。足がとても早いんですよ。オフィスの巡回もとても早いです」「〇〇さんはオフィスの奥の方とか躊躇いもなく入って行って、いつの間にか役員とおしゃべりなんかしたりしてね。僕らなんかだったら戸惑うというか、躊躇するものなんだけど」

「そうか、この人達は知的障害者の中でもエリートなんだ。」
格差を感じた。障害者の中にも当然「障害者の社会」というものが存在していて、その上澄の人だけがこんな都内のおしゃれな街で働けるのだ。「上級国民」という言葉は私は好まないが、それが頭をよぎらなかったかというと嘘になる。
彼らの足の速さや"図々しさ"は知的障害ゆえの、俗に言う、「ギフト」であり、それを「仕事で活かせる能力」として認められたとても恵まれた障害者なのである。

実習

いざ、自分が配属予定のフロアで実習。こちらには精神障害を持った方が一人で働いていた。最初は緊張と不安が入り混じった様子だったが「緊張しなくて大丈夫ですよ」と声をかけ一緒に仕事をしていると思っていた以上にスムーズに作業が進んだ。お互い慣れてきた頃に「これはどうすればいいですか?」と聞くと「お、それはじゃあこちらにください」と先輩らしい頼もしい姿も見られた。

まとめ

とても有意義な実習だった。
自分の「障害者観」も変わったし、何より彼らが請け負っている仕事は全て「必要不可欠な仕事」であることを再認識させられた。私が今まで働いてきたオフィスでも文房具は"いつの間にか"補充されていたし、社内便は"誰かが"届けてくれていた。ありがたみを感じたし、単純ではあるものの、会社を支える重要でやりがいのある仕事だと感じられた。自分もそんな社会の一員になって誰かの役に立てたら。そう感じた。

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