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悪辣の魔法使い

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昔むかし。人を襲い、害をなす悪鬼と間違えられ、小さな瓶の中に封じ込められてしまった、名もない子どもの小鬼。  長い歳月のあと、封印から解き放って救い出し、レイという名前まで付けて…
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#剣

【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第5話

第5話 半身の契り  木の葉の間から降り注ぐ日の光は、川面で踊るように輝く。  太陽は、…

吉岡果音
10か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第6話

第6話 せめて勇者に  ざわ、ざわ、ざわ。  囁かれる、声。人ではない者たちの。  ほと…

吉岡果音
10か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第7話

第7話 少女救出作戦に、乾杯  旅人たちが宿屋を探し、働き終えた大人たちが酒場に繰り出す…

吉岡果音
9か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第12話

第12話 剣と怪物退治 「レイオル……! お前も剣を使えるのか!」  大剣を構えたアルーン…

吉岡果音
8か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第13話

第13話 森宝玉  小鬼のレイの頭にある、三本の角。 「時間・空間・物質を表わすって聞いて…

吉岡果音
8か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第14話

第14話 星聴祭  森宝玉たちを換金してもらい、外に出ると町はすっかり夕日に染まっていた。…

吉岡果音
8か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第16話

第16話 もう一人の魔法使い  楽団は最後の曲を演奏し終えたようで、ただ澄んだ空気と星のまたたきだけが町中を包んでいた。  路地を出た、魔法使いレイオルとケイト。 「飲む? おごるわよ」  果物とスパイスの入った温かい葡萄酒を販売しているテントの前で、ケイトは振り返ってそう提案した。レイオルへ、というより自分が飲みたいらしい。 「連れが、たぶんだが、心配する。私は失礼する」 「私があなたと話したいんだけど!」  レイオルのつれない態度に、ケイトは大人げなく頬を膨ら

【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第17話

第17話 魂宿りの物 「別にお前さんを追いかけているわけじゃあないよ」  古びたテントの店…

吉岡果音
7か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第18話

第18話 櫛とバックル  オレンジ色の街灯の下、小鬼のレイは、一生懸命辺りを見渡していた。…

吉岡果音
7か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第19話

第19話 明日は違うのかもしれない、未知の朝  いつも、悪夢は決まっていた。  巨大な怪物…

吉岡果音
7か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第20話

第20話 豆の話、未来の話  豆。  小鉢の中の煮豆を、小鬼のレイは一粒ずつたいらげる。 …

吉岡果音
6か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第21話

第21話 楽器屋、一線を画す  スカート、髪留め、それからキャンディ。ついでに虹色の綿菓子…

吉岡果音
6か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第22話

第22話 旅の者、集う  小鬼のレイは、ご機嫌だった。  レイオルに、アルーンさんに、ルミ…

吉岡果音
6か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第23話

第23話 小鬼の大将  お、鬼だあ……! 本物の、鬼……!  小鬼のレイは、尻もちをつき震え上がった。かくいう自分は「小鬼」という種族ではあるが。  初めて見るけど、鬼さんは俺たちより格段に強い……! 超怖い存在……!  月を背に、まるで黒山のよう。筋骨隆々とした、鬼。腰の辺りや肩にかけ、布のようなものを体にまとってはいるが、全身の筋肉がほぼあらわになっており、裸足で大地に力強く立つその姿は、威圧するような強烈な存在感があった。 「軍勢……? 奇妙なことを言うな」