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寂聴文学を愉しむ会 第1回「女子大生・曲愛玲」を読む

 今年はまず会員だけで読書会「寂聴文学を愉しむ会」を年間5回、開催します。課題本は寂聴さんの第一短編集『白い手袋の記憶』です。この本は33歳で出版され、寂聴さんの実質的な文壇デビュー作になった作品なども収められています。
 4,6,10,12,2月の第3金曜日、13時半から15時半、徳島県立文学書道館2階でおこなっていきます。
 第1回目は4月19日(金)に開催しました。

瀬戸内晴美 作「女子大生・曲愛玲」(1957年4月刊『白い手袋の記憶』に収録)
 作者である寂聴が夫の勤務先である北京で出会った女性教授をイメージモデルにしている。彼女の同性愛の相手は美しい女子大生、曲愛玲(チュイアイリン)であった。愛玲は戦争末期の不安定な政情の中、いくつもの顔を見せ、周囲を翻弄させていく。


参加者の意見


 始めて読んだが、主婦である主人公とは対極の曲愛玲が生き生きと書かれていると感じた。そんなふうに生きたいという願望?ただ、作中で主人公の主婦が体制側のご主人のことを嫌悪する場面がある。寂聴さんの書き物で、ご主人のことを悪く書いている文章を今まで読んだことがなかったので…、読者としての私もちょっとショックかも。

 ストーリーはわかるけど、理解出来ないかなぁ…。寂聴さんは男女の愛にしろ、女同士のレズビアン的なものに寛容、理解が深いですね。作中でご主人の物言いに主人公の主婦は怒って噛みつくところは、ご主人に愛情もあったのかな。大学生の愛玲みたいに自由に生きられたらな、と思いながら読みました。

 二回読みました。一回目読んだときは、この小説何…⁉と思ったけれど、二回目を読むと終戦間近で、日本は困窮しているのに、変わって北京では裕福な暮らしをしている。現実にもそうだったんですかね。

 書き出しから引き込まれました。場面がスピーディーに展開するし、文章が映像的。比喩が上手で、文章が深い。あと、登場人物の書き分けが素晴らしくて、感情移入してしまう。レズビアンとか、堕胎とか言葉が生々しい…。それでもグイグイ読ませられる。愛玲もいろんな性格があって。場面場面に非常に気持ちがわかる気がします。女性なら皆感じるのでは。女性として深く書き込むところ、寂聴さんならでは。

 瀬戸内晴美がすべて入ってる処女作。瀬戸内先生らしい俗と深い部分とが混在して。愛玲という女の子がなにを考えていたのか、セリフがほとんどないのでわからない、愛玲をめぐってまわりが彼女のことをしゃべっているだけ。でも、そこが映画的。40年ぶりに読んだけど、古っぽさがない。書かれた当時は男性批評家から“官能小説”と言われていたけど、ぜんぜんそんな感じないです。古いよね、男子たち(笑)

 はじめて寂聴小説を読みました。寂聴さんの小説は官能作品という噂があって…。で、読んでこれかぁ、えー⁉って。でも読んでるうちに文章が映画のように浮かんで。こういう作品書くんだーというのがいちばんの感想。愛玲には同意できないけど。次回もぜひ。

 平和な時代ではないですから。戦争でいつ死ぬかもわからない、もうやけくその時代。非常時ですから、愛玲みたいに愛し合いまくるのも不思議じゃない!そこは大事な背景。

 愛玲っておかしな人なの?周りをごちゃごちゃと振り回してしまう人ですね。

 物語がとにかく短くてよかった…。自分は登場人物を映画とか、ドラマの知っている役者に置き換えて読むんです。あの登場人物は誰とか、イメージして。何年か前に「スパイの妻」という映画があって、その映画をイメージしながら読みました。

 堕胎とか出てくるけれど、女の人にとっては切実。これからもずうっと何十年も抱えていく問題だから、考えさせられる。男の人は逃げるけど。

 私もはじめて寂聴小説読みました。よみやすかったです。男心をそそる愛玲に魅力を感じた。こういうことが書ける寂聴さんって魅力的な人だったんだろうなぁ。

 植民地時代の小説ということで、M・デュラスのインドシナを思い出したり。小説の最後の方で「愛玲が陳(青年)と延安に走った」とあるけど、ググると延安という街は共産革命の聖地だと知って。愛玲と恋人の陳青年の逃避行の背景がわかり、これは政治的な小説でもあるのかとびっくり。

 深読みすると、政治的に読み解くと寂聴文学の流れの中で、恋と革命に生きた女たちの萌芽ともいえる作品。後の金子文子や管野須賀子の伝記小説の系譜としてとらえられなくもない。ただ、作中に「愛玲は先天的に娼婦だった」という記述が。また、この一年後に「花芯」が生まれている。そもそも愛玲のキャラクターは奔放すぎて日本人と設定するのは難しかった。なのであえて、中国人の女性として登場させた。
 それで、この短編を踏み台にして次にこの愛玲の娼婦性や、固定観念を打ち破るようなキャラクターとして次作の「花芯」の主人公にバトンタッチしたと考える。この「女子大生・曲愛玲」があったからこそ、次の「花芯」が書けたのは間違いない。

次回、第2回「吐蕃王妃記」6月21日(金)です。13時半から。
よろしくお願いします。

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