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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
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『リバース:1999』の作中の史実や美術用語などの元ネタを素人が解説を試みる 今後追記予定(ネタバレ注意!)

はじめに

この記事は既にリバース1999をある程度遊んでゲーム中の用語(ストーム、パブロフ財団など)を知っている方向けに書かれています。


序章『ディス・イズ・トゥモロー』

章タイトルの由来

1956年ロンドンのホワイトチャペル・ギャラリーで開催された展覧会「これが明日だ(This is Tomorrrow)」から。 1960年代のアートシーンのメインであるポップ・アートのイギリスにおいての普及の大きな契機となりました。後述しますが1966年のストームのヴィジュアルにおいてのモチーフはこの60年代イギリスのポップ・アートの代表的存在である「インディペンデント・グループ」の一人のコラージュ作品からきています。

冒頭の引用

フィッツジェラルドの小説、『グレート・ギャツビー』から。何故フィッツジェラルドが引用されているかの考察ですが、『グレート・ギャツビー』がいくら富と名声を手に入れても時の流れには勝てなかった男を描いている点に加えて、フィッツジェラルド自身が1920年代という時代とともに生き、世界恐慌の中亡くなったというもはや「狂騒の20年代(ジャズ・エイジ)」の代名詞的存在であった点の二点が、時代とそこで生きる存在を描くリバース1999に近いものがあることからかもしれません。

1966年のストーム

ストーム発生前の1966年ロンドン

作中や公式HPで何度も触れられる通り、今回のストームは1960年代のポップ・カルチャーを皮肉ったものです。その中で特に象徴的に用いられているのがイギリスの作家、リチャード・ハミルトン(1922〜2011)が1956年に発表したコラージュ作品《一体何が今日の家庭をこれほどに変え、魅力あるものにしているのか(Just what is it that makes today's homes so different, so appealing?)》です。

リチャード・ハミルトン《一体何が今日の家庭をこれほどに変え、魅力あるものにしているのか(Just what is it that makes today's homes so different, so appealing?)》
1966年6月のストーム

女性(バイク左・ワゴン右)は作品中のボディビルダー(雑誌Tomorrow's Manの1954年9月号から)、彼女の持つ赤い物体は作品中でボディービルダーがもつ「POP」と印字されたロリポップ、画像中央のカフェー店内と看板はそれぞれ作品中の敷物(ウィットリー湾のビーチで群衆を描写した写真の拡大)とポスター(Young Love 1950年の第15号に掲載されたYoung Romanceの広告)、画像右のワゴン近くで沈み込んでいるテープレコーダー(イギリス製ブージー・アンド・ホークスのレポーター)から。その他植生や猫はコラージュ的表現でしょう(もしかすると猫にも元ネタがあるのかもしれませんけれども。)
《一体何が今日の家庭をこれほどに変え、魅力あるものにしているのか(Just what is it that makes today's homes so different, so appealing?)》は当時の広告や雑誌の写真を使っていますが、これは一般に消費者を購買意欲を煽り立てるためだけにデザインされたイラスト・写真を用いることでグロテスクな大衆文化をを表現しているとされています。大量消費社会をアイロニカルに描くポップ・アートとその時々の「時代」をあざ笑うかのような現象を引き起こすストームとは近いものがあるといえるでしょう(残念なことにストームはそれらさえも時代の構成要素として扱いますが。)

ヴェルティが出会った1999年から1966年までの人々と出来事

レグルスに説明を行うシーン。ボードに貼り付けられている写真は元ネタが分かるのが1969年のアポロ11号ぐらいなんですよね。だれか写真に詳しい方は情報をお願いします、Xで独り言として呟いてくれるだけでも!

アポロ11号も同じ構図の写真までは見つけられませんでした。

ジュリーなる人物がポスターを張り巡らしていた「リバウド」はおそらくリバウド・ヴィトール・ボルバ・フェレイラというブラジル出身のサッカー選手。1999年のFIFA最優秀選手賞というFIFA(国際サッカー連盟の略称)がその年の最も優秀な選手を選ぶ賞に実際に選ばれています。

ミレニアムカウントダウンはそのままなのでおいておきますが、「80年代の超新星爆発」は「SN 1987A」という1987年2月23日に観測された超新星がおそらく元ネタ。肉眼で観測された超新星としては17世紀初頭のケプラーの超新星以来数世紀ぶりの超新星爆発でした。因みに日本のカミオカンデで初観測されたニュートリノはこのときの陽子爆発からのものです。
「世界初の家庭用ビデオレコーダー誕生」はリバース1999英語版(以下英語版)では「VHS」となっているので1976年(昭和51年)10月31日、VHS第1号ビデオデッキの発売からきていると思われます。

その他テキスト、グラフィックの元ネタ

両者ともUKロックの代表的ロックバンド、ザ・フー(The Who)のメンバーからきています。「ピート・ウィンドミル」は右腕を伸ばし大きく回転させながら弾くウインドミル奏法とその奏法を行ったギタリストのピート・タウザント、「ジョン・サンダーフィンガーズ・ライブ」はベーシストのジョン・エントウィッスルとその驚異的なベース演奏技術からの異名「サンダーフィンガーズ」から。

テープストリーマは1970年代まで記録媒体として主流であった磁気テープ(カセットテープ)の読み込みや書き出しを行う装置です。

  • ウェストエンドはロンドンの街区の一つ。経済のシティ地区、政治のウェストミンスター地区と並んで娯楽のウェストエンド地区と呼ばれます。多くの劇場、博物館、ギャラリーといった文化施設が立ち並ぶエリアです。

  • カーナビー・ストリートキングズ・ロードはミニスカートなどのモッズなどの1960年代のサブカルチャーの聖地であるソーホー地区の通りの名前であり、キングリー・コートはカーナビー・ストリートから一本奥の路地、オックスフォード・ストリートはオックスフォード大学近くの小売店の多い商業的な大通りであり、ミニスカートが60年代ロンドンで初めて売られた場所です。

イギリスの新聞社であり、世界初の日刊新聞であるタイムズ紙The Times)から。

スウィンギング・ロンドンはカウンターカルチャーの一つであり1960年代半ばから後半にかけてイギリスで起こった「若者」という層が出現し、初めて主導した文化的潮流の名称です。WW2後の暗く汚れた陰気な都市からスタイルの発信地としてロンドンの街を変容させたとされています。ビートルズ、ローリング・ストーンズなどのロックバンドがレグルスのような海賊ラジオだけでなく正規の商業放送局を通して若者に広がりました。
船体に貼られているレコードジャケットは1963年のビートルズデビューアルバム『Please Please Me』、同バンドの『Rubber Soul』などのアルバムジャケットです。もっと詳しい方がいらっしゃいましたら情報お願いします。

1章『われらの時代』

章タイトルの由来

同名のヘミングウェイの短編集『われらの時代(原題“In Our Times”)から。

「2月14日シカゴにての神秘学家を狙った大虐殺」

有名ですが、元ネタはアル・カポネ一味による「聖バレンタインデーの虐殺」。

実際に発生した事件であり、事件現場もシカゴのノースサイドのリンカーンパーク地区にあるノースクラークストリート2122番のガレージでした。

ゲーム中で殺されたジェームズ・クラーク、フランク・グーゼンバーグ、ピーター・グーゼンバーグ、アダム・ハイヤーも全員実在の被害者たちです。アル・カポネのイタリアンマフィアと敵対していたアイルランド系のノースサイダーとの抗争の中でノースサイダーのヒットマンとしてアル・カポネ側から禁酒法下では禁制品のウイスキーの受け渡しを行うために派遣されていましたが、罠であり、アル・カポネの部下によってショットガンで惨殺されました。当時のマスコミを騒がせ、人気者であったアル・カポネも残酷な犯罪者として世間からの憎悪の対象となりました。

アイルランド系のアダムの捨て台詞、「Dryshite!」は退屈で面白くない人を指すアイルランドのスラングです。誰もdryshiteにはなりたくないので、最上級に近い侮辱の意味が込められています

その他テキスト・グラフィックの元ネタ

ドクターコショウは言わずもがな炭酸飲料のドクターペッパーのパロディです。私にはよくわかりませんでしたが、シュタインズゲートなる作品のオマージュだそうです。

「児童権利宣言」は原型が1924年に国際連盟、拡張されたものが1959年に国際連合に採択された「児童の権利に関する宣言」から。

ドルーヴィスⅢの一枚絵によく見られる構図

樹上に成人女性がいる神秘的な構図は19世紀末から1920年代まで活動したアメリカのイラストレーター・画家のマックスフィールド・パリッシュ( Maxfield Parrish)の作品群に近いものがあります。たまたまかもしれませんが。

2章『夜はやさし』

章タイトルの由来

ゲーム冒頭でも文が引用されるF・スコット・フィッツジェラルドの『夜はやさし(原題“Tender is the Night”)』から。

3章『物語は何処にもあらず(Novelles et Textes pour rien)』

章タイトルの由来

原題は仏語。不条理演劇の『ゴドーを待ちながら(原題“En attendant Godot”)』で有名なサミュエル・ベケットの短編集から。ベケットの作品は不条理演劇の傑作として現代でも世界各地で公演が行われています。

4章『群虎黄金(El Oro De Los Tigres)』

章タイトルの由来

ホルヘ・ルイス・ボルヘスの詩『El Oro De Los Tigres』から。ボルヘスは日本では伝奇集とかで有名ですね。

5章『洞窟の囚人』

章タイトルの由来

作中で明示されますが、プラトンのイデア論において用いられる「洞窟の比喩」から。

ログインボーナスのテキストの元ネタ

以下のWebサイトがまとめ上げていますので、紹介されていなかったものを。


APPLeの禁酒計画は失敗に終わった。ゴードンズのジンはその計画を邪魔した「悪の根源」だ。

リバース1999 2023/10/31(TUE)のログイン画面より

ゴードンというのは実在の酒造メーカー。

その他メニュー画面等

ソリドゥス金貨

ローマ皇帝コンスタンティヌス一世が鋳造させたのが最初の、ローマ帝国経済圏で流通した金貨。

章選択画面等のコラージュ的表現

モンティ・パイソンの映像作品から。

参考にしたもの、情報元

Youtube動画

攻略wiki、掲示板

その他ブログ記事、ツイート、Webサイトなど

終わりに

情報が多い!確実に元ネタありそうなのに私のリサーチ力が追いつかない!美術関係はある程度知っているのですが、モッズスタイルなどのサブカルチャー、科学技術、民間伝承などは全くわからないのでなにか思い当たる物があれば情報お願いします。木霊トコでした。

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