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内定承諾は『労働契約の成立』になるという話

Xで内定承諾後の辞退について盛り上がっていたので便乗してみました。


問題のツイートについて

問題のツイートは下記のような内容でした。

■ツイート主
プライム企業にて人事を15年担当し、1000人以上の面接を経験。

■ツイート内容
3/22、内定者から人事担当者宛に一通のメールが届く。
『4/1には入社できません。他の会社にご縁を感じました。』というもの。

■ツイートの主張
・入社までのフォローが足りていなかった。
・バッドニュース(内定辞退)こそ早めに連絡が欲しかった。
・大事な連絡はメールではなく直接話して欲しかった。

■ツイートに対するXユーザーの反応
【否定派】
・不採用通知はメールを1通送るだけで済ませるのに、内定辞退になると内定者に誠意のある対応を求めるのはおかしい。
【肯定派】
・企業側が内定取り消しをする場合は「解雇」同様の手続きや理由が必要だけれど、内定辞退はカジュアルにできちゃうのが法的なバグ。

とまあ、こんな感じで賛否両論の嵐という感じでした。今回の記事では上記の内容について法的な観点と個人の感想に分けてお伝えしていこうと思います。

『内定辞退』と『内定承諾後の辞退』は別物

企業が内定を通知した段階では内定は単なるオファーに過ぎず、求職者は自由に断ることができます。これが内定辞退です。

一方で企業が内定を通知し、求職者がこれを承諾した場合、契約書を交わしていなくても労働契約とみなされます。難しい言葉で『始期付解約権留保付労働契約』と言ったりします。

以下判例です。(大日本印刷事件 最高裁二小 昭54.7.20判決)

今回のケースでは、4/1入社予定の内定者が3/22に辞退のメールを送ったという状況を考えると、内定承諾後の辞退である可能性が高いです。

内定承諾後の辞退では企業から損害賠償請求を受ける可能性がある

内定承諾後の辞退は、法的な観点から見ると『労働契約の解消』という扱いになります。そのため、内定者は通常の退職と同様、2週間前までに内定辞退を表明する必要があります。(民法第627条1項)

今回のケースでは3/22から4/1までは10日間しかありません。そのため少なくとも4日間は出社する必要があります。これを怠った場合には契約違反となり、企業から損害賠償請求を受ける可能性があります。

損害賠償の対象とは下記のようなものですね。

・発注済みの名刺の費用
・発注済みの制服の費用
・会社の費用で受けた研修の費用
・新たな採用活動に必要な費用

とはいえ、このような微々たる費用を請求するために裁判まで起こす企業は稀でしょう。内定者もまた、2週間ルールを適用させるために4/1以降は体調不良で欠勤するといった対策もとれます。つまり、よほど企業側を怒らせない限りは起こり得ないリスクと言えます。

内定取り消しは解雇と同等の手続きが必要である

逆に、企業が内定者の内定を取り消す場合、これもまた『労働契約の解消』という扱いになります。

日本では、企業側からの労働契約の解消において、労働者保護の観点から非常に高いハードルが設けられています。基本的には解雇は出来ず、解雇を通知したとしても社会通念上相当であると認められない場合は無効扱いになります。

社会通念上相当であると認められるような理由は下記のようなものです。

・内定者の経歴詐称
・内定後の犯罪行為
・業務遂行が不可能なレベルの重大な病気/障がい
・業務に必要な資格を取得していない
・経営状況の著しい悪化

このような理由がある場合には内定取り消し(=解雇)が認められます。ただし、内定取り消しにあたっては解雇予告や解雇予告手当の支払義務があります。

内定承諾は労働契約と一緒

前述の通り、内定承諾は法的には労働契約とみなされることから、おいそれと簡単に受け入れるものではありません。

両者にリスクが発生することから慎重な判断が求められます。内定を出す・内定を承諾する以上は相手方に対して誠意のある対応が必要です。

内定承諾後の辞退の是非

さてさて、ここからは私の勝手な想いについて述べます。
まあ労働者の視点に立つと分からなくもない。やむにやまれぬ事情があるならば仕方なし。そうでなくとも、ギリギリの最後まで条件の良い会社をキープしたりとか考えるものです。

特にSESエンジニアの場合、案件によって働き方が天と地ほど変わることもあります。『会社で選ぶというよりは案件で選びたい。案件で選ぶためには数社に並行して案件を探させて、一番良い案件を用意してきた企業に入社するのが合理的。』とか考えるわけです。

企業に対して思うこと

弊社もキープされていたことに気づかずに入社の数日前に辞退を受けたことが何度かあります。酷い場合だと、入社前からお客様との間で調整して、案件の参画に対する承諾まで貰っていた中で、参画直前に辞退を受けたことも…。

なので怒りや悲しみ、虚しさもよく分かるんですよね。

ただ、人間というのは個人の利益を追及する生き物なので、こういったことはむしろ自然な出来事です。例外として、家族や友人等、自分が信頼を置く相手に対しては不義理なことはしません。

つまり、自身に信用がないうちから相手が誠意をもって対応してくれるものだと考えるべきではありません。それはエゴでしかないと。

そして信用は突然発生するものではなく築き上げるもの。辞退者に対して感情的になるよりも、これまでの辞退者との関わり方に問題が無かったのか見直すべきです。

更には、こういった事故もまた採用活動を行う上でのリスクのひとつとして計算に入れておくと不必要に落ち込むこともなくなるかと思います。

辞退者に対して思うこと

企業とはマクロな視点では感情のない無機質なものに見えますが、人事・営業・エンジニア等、担当者レベルのミクロな視点では『人』なのですよね。

だから不義理な扱いを受ければ、自分と同じように落ち込むものです。そう考えると、あんまりヤンチャしちゃダメだよね。

まとめ

  • 内定承諾前の辞退は労働者の自由。何の制限もなく辞退が可能である。

  • 内定承諾後の辞退は、法的な観点から見ると『労働契約の解消』という扱いになる。そのため、内定者は通常の退職と同様、2週間前までに内定辞退を表明する必要がある。

この手の話題では性善説か性悪説かみたいな価値観で揉めますよね。少なくとも企業は性悪説を考慮した方が良いと思ってます。支持ではなく考慮。つまり、いろんな人がいて、いろんな可能性があるから、慎重に制度設計しようねという話です。

読んで下さりありがとうございました。

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