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『インフラ運用・保守』が経験にならないという残念な勘違い

定期的に話題になる「インフラ運用は経験にならん」という問題に終止符を打とうという記事です。

ケルンに入社される方の中には現在の会社であまり良い経験が積めていなくて「転職を機にもっとステップアップしたい」と考えていらっしゃる方もいます。で、実際によさげな運用案件なんかを提案してみるとトラウマが蘇ったかのごとく拒否される。

ですが、運用案件もいろいろで、中には素晴らしく経験になるものもあるわけです。

そもそもインフラ運用ってなんぞ

インフラ運用はシステムのインフラ部分を維持管理する仕事です。「これから作るよ」ではなく「作ってあるものを守るよ」的な仕事です。

システムは出来上がったら放置ではありません。
実態はサーバやネットワーク機器といった物理装置なので不具合はつきもの。冷蔵庫が壊れても中の食べ物が腐るだけですが、システムが壊れるとそのシステムの利用者全員に影響を与えます。
モバイルネットワークシステムであればスマホが繋がらなくなり、通販システムなら物が買えなくなって何十億という経済損失が生まれ、防災システムなら人の命を奪うこともあるわけです。

システムが当たり前に使えることを裏側で必死こいて維持しているのが運用に携わるエンジニアです。

運用に携わるエンジニアの業務はざっと下表のように分類できます。

▲インフラ運用の業務分類

いきなり実務レベルの細かい話に変わってしまった…。この後、ひとつずつ解説していくので安心してください。先に結論にだけ触れておくと。

結論、運用と聞いて「経験にならない」と考える方にはまず間違いなく ”運用=監視業務” という誤解があります。

監視業務は事実、手順書によってガチガチに定められたルーティンワークが多いため、知識や技術が無くても大半の業務はできてしまう。そのため経験にならない場合が多いです。

が、実際は運用の中には設計構築などの高度な技術を必要とする業務も存在します。そのため「インフラ運用は経験にならない」というのは誤りで、めちゃくちゃ経験になる業務 ”も” あるというわけです。

重要なのは、営業から運用案件を勧められた時に、”自分がどのフェーズを担当するのか ” エンジニア自身が見極められることです。自身の実力を鑑みて、経験になるか否か判断することが出来ればミスマッチも起きません。

では、それぞれの業務内容を見ていきましょう。

『監視業務』は見張り番

監視業務は ”何もないことを確認する、何か起きたら報告すること" が主な業務です。

例えば、巡回という業務の場合、サーバールームを歩き回り、サーバやネットワーク機器に付いたLEDランプの状態をチェックシートに基づいて確認します。緑色なら正常で赤色なら異常、異常の場合は○○部の××さんに電話連絡するという感じ。LEDの色が分かればよいので知識は必要ありません。

もうひとつ、アラート監視という業務の場合、機器障害の対処として機器名を頼りにサーバの担当者に電話連絡し、障害内容を伝えます。障害内容は監視端末(PC)の専用ソフトの画面上に表示されます。これも、手順書に”画面上のどこを読み上げるのか”記載があるため、文字が読めて電話が出来れば業務が成り立ちます。

こんな感じで、監視では 何かが起きた時にそれを対処できる人に教えてあげることが業務の中心となるため、知識技術が必要なくエンジニアとしては技術経験を積めない場合が多いです。

未経験者の初めての案件としてはアリ

経験にならないといいつつも、手順書作成、新人教育、電話応対、メール対応などなどオフィスワーク的なスキルは身に付けられます。新卒やオフィスワーク未経験の中途には得られるものも多いはず。

更に、未経験者が ”IT業界での実務経験” を手にすることのメリットは大きいです。次の案件に異動する際にIT業界での職歴があるため、これまでよりも技術要素の強いプロジェクトに配属される可能性は高まります。転職市場においても実務経験者として転職活動を行えます。

この辺りのカラクリを知らずに「やべえ!俺スキル積めてないじゃん!」って数か月でプロジェクトを離脱して転職活動をしている若手も多いですが、非常に勿体ない。まずは続けること。1年程度の経歴をひとつ作ることは重要です。

あとは監視は異常が何も起きていない時間は暇です。とにかく暇。なので、自習する時間を確保できるメリットがあります。(スマホゲームしたり、寝たり、テレビみたりしてる人もいるけど。)

私自身、IT業界に入って初めてのプロジェクトは監視業務でしたが、夜勤の暇な時間で勉強してCCNP・ITIL・LPIC Lv1を取得しました。現場にはVBAやバッチを使ったツールがあったため、これらの改修なども自主的に担当しました。勉強時間が無限にあります。

てなわけで、保守や設計構築に比べると技術経験が積みづらいというだけで、未経験者がエンジニアとしての一歩を踏み出す上では十分にいろいろな経験が出来ます。積極的に監視案件を勧めることはないものの、ぼーっとしていなければそれなりに次に繋げられるだろうと私は思うわけです。会社に言われるがままに5年とか10年とか続けるのはやめとけ……。

『保守業務』は実行部隊

保守は監視から上がってきたエスカレーションを起点として実際に障害対応を行います。機器からログを取得&不具合の調査を行い、その後の復旧作業まで担当します。

例えば、障害の原因が機器のリソース不足であれば、HDDを増強したり、不要なファイルを削除したり。あるいは、機器故障であれば予備機と交換したり。予備機の投入configの作成など詳細設計や構築のような作業が発生することもありますが、たいていはホスト名やIPアドレスといった可変パラメータのみ変更すればOKという感じでツールやナレッジに頼る場合が多い印象です。

そんな感じで、監視に比べてずいぶんとエンジニアっぽい業務を担当しますが、その実、ナレッジが大量にあるので深い知識技術も必要なかったりします。とはいえ実際に手を動かす作業が多いことから技術経験はしっかり積めます。

(余談ですが、保守で人が定着せず炎上しているプロジェクトなんかは、リリース直後であることが多いです。リリース直後は何かと不具合が多い割にナレッジは少ない。保守だからと侮って、若手や中堅を中心にチームを構成して詰むパターンですね……。)

未経験なら大当たり、微経験でも全然アリ

保守業務は監視と一線を画する印象です。
監視では「手順にないことはやってはいけない」というSLAに基づいたルールがあるわけですが、保守では障害の原因調査や対処の過程で「自ら考えて実行する」という能動的な業務が発生します。

Teratermを使って機器にログインしてコマンドを打つというのはもちろんのこと、Wiresharkでパケットの動きを覗いたり、時には原因の切り分けのためにプロトコルの動作やハードウェアの仕様調査なども行います。ナレッジがあるとはいえ、config作成や機器の設定変更も行います。

設計構築にステップアップしたいエンジニアにとっては確かな足がかりになります。ここらへんで技術ではなくマネジメントにスキルを振っていく人なんかもよく見かけます。顧客との契約に関する調整事や見積もりなんかもできれば、十分キャリアのゴールになるんでないかと思うてます。

『設計構築業務』は参謀

(参謀って比喩あってる?けど、統一感出したいし……。)
まあでも、運用における設計構築というのは今後のシステムを考える立ち位置にあることは間違いない。

システムは ”その時点" での最適な形が作られるわけで、時間が経つにつれて最適は変わっていきます。
例えば、システムの利用者が1万人から5万人に増えたとか、東京オフィスが移転したとか、テレワークが導入されたことでセキュリティの要件が変わったとか、古い機器を入れ替えることになったとか。

このようなシステムの変化に合わせて、システムを部分的に作り変えていく業務が運用の中の設計構築です。当然、システムの持ち主である顧客と問題点の洗い出しをして案件化、そっから要件定義や設計構築、保守や監視業務への落とし込みまで実施します。組織という枠の中でSIっぽい動きをするイメージです。

高度な知識技術だけではなくプロジェクトマネジメント能力や、顧客と良好な関係を維持する絶妙なコミュニケーションも要求されます。SIerの設計構築部隊みたいに成果物出してサヨナラバイバイムーブが出来ない分、誰とでも上手く付き合えるような人間性も要求されるっていう。いやはや、大変なポジションです……。

若手にとっては大当たり、ベテランは人による

若手にとっては業務のほぼ全てが経歴書に書ける有益な経験になります。設計構築、マネジメントや顧客折衝、更にはドキュメント作成や顧客との良好な関係を築くコミュニケーションスキル等々、喉から手が出るほど欲しいスキルのはず。

一方で、ベテランエンジニアにとって良いプロジェクトになり得るかどうか、これは少し難しい問題です。

運用案件というのは大枠としてはシステムの維持管理なので、ひとつのシステムを延々と見続けることになります。そこで使われるサーバのOS、機種、使用されるプロトコルやツール等は必然的に固定されます。同じ技術を深く学び、そのシステムの癖、顧客の癖、業務知識等に触れ、”そのシステムの専門家”になっていくわけです。

これが良いことか悪いことか、それはエンジニアの業務形態によりけりなのです。

例えばSESエンジニアであれば、プロジェクトは永遠ではなく、いずれ離脱するわけで。その時に残るものは経験した技術のみであり、システム特有のナレッジや顧客との信頼等、客観的に確認が難しいものはそぎ落とされてしまいます。ゆえに、SESエンジニアはひとつの現場に長く居続けるよりも様々な現場を渡り歩き、広い技術や知見を得ていく方がキャリア形成においては効率的だと考えられます。
一方で転職等でプロパーとして半永久的に特定のシステムと関わるのであれば、そこで得たナレッジは自身の社内評価を高めてくれるでしょう。

そんなわけで、ベテランのSESエンジニアの場合は ”得られるスキル” という観点に絞って自身にとって良い案件かどうかを判断する必要があります。既に持っている技術しか扱わない案件は避けるべきです。

まとめ

ひとくちに運用といってもどんな業務を担当するかによって得られる経験値は変わることを説明しました。運用と聞いて脊髄反射で拒否るのではなく、自身の技術レベルを鑑みて一考してみることをオススメします。

ただ、現実には監視・保守・設計構築というのはキッチリ分かれているわけではなくてグラデーションになってたりもします。(あるいは監視なのに構築があったり、保守なのに設計があったり。)

なので、ここに書いてあるように綺麗に分類できるとは思わず、営業ないしは面談時にお客さんによく聞いて、どんなことをするプロジェクトなのか確認すると良いです。
ではでは。

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