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NDA(秘密保持契約)の勘所 for スタートアップ、小規模事業その②

こんにちは。本記事で#7となります。
本日も記事に目を通してくださりありがとうございます。

早速ですが、今回は前回あげた記事の続きとなり、NDAについてとなります。今回がその②。その①については下記ご参照ください。

その①で記載しました、全体構成は以下。
・前文
・第1条:本件業務(目的)範囲
・第2条:秘密情報の定義、開示方法
・第3条:秘密保持
・第4条:秘密保持の管理(リバースエンジニアリング禁止を含む)
・第5条:秘密情報の返還
・第6条:秘密情報の権利(、成果物の扱い)
・第7条:損害賠償
・第8条:有効期間
・第9条:裁判管轄
・第10条:協議事項
・署名

その①で第1条までの説明をしましたので、ここからは第2条から進めていきます。

第2条:秘密情報の定義、開示方法

第2条例:
「1 本契約において秘密の対象となるのは、次のもの(以下「秘密情報」という)をいう。
① いずれかの当事者(以下「開示者」という)が他の当事者(以下「受領者」という)に開示した本件業務に関する情報であって、文書、記憶媒体、電子データ、電子メール、ファクシミリ等の形式を問わず、開示者が秘密である旨の表示を付して開示したもの
② 口頭、音声、デモンストレーション、プロジェクター等の視覚的手段、その他媒体に化体されない方法で、開示者が受領者に開示した本件業務に関する情報であって、開示者が当該開示の際に秘密である旨を示し、当該開示の日から30日以内にその内容を書面にまとめ、秘密の表示をして受領者に提供したもの
③ 本件業務に関し、開示者が受領者に開示・提供したサンプル(以下「本件サンプル」という)およびその技術情報

2 前項の規定にかかわらず、次の各号に該当することを受領者が挙証し得るものは秘密情報には含まれないものとする。
① 開示者より開示を受ける前に、既に所有または取得していたもの
② 開示者より開示を受ける前に、既に公知公用となっているもの
③ 開示者より開示を受けた後に、受領者が本契約の規定に違反することなく公知公用となったもの
④ 開示の権限を有する第三者から、秘密保持の義務を負うことなく、適法に知得したもの
⑤ 秘密情報に関係なく、独自に開発したもの」

第2条は秘密情報の定義です。
まず第2条の第1項について、
第2条において、もっともおさえるべきポイントは、Ⅰ)自社(ベンチャー企業A)が情報を多く開示すること(側)になるの か、Ⅱ)自社からの情報開示は少なく、情報を受領することが多い側になるのか、Ⅲ)両者が均等に情報を開示 し合うことになるのか、を、想定することです。そして、本ケースにおいては、ベンチャー企業Aはおそらくとして、技術情報をある程度開示しなければ協議が成立しないため、Ⅰ)の情報を多く開示する側になるだろうと想定をします。

情報を開示する側であれば、基本的には、秘密情報の定義は広い方がいいですよね。
ちなみに、逆の情報を受け取る側であれば、秘密情報の定義は狭い方がいいに決まっています。
ですので、もし、兎に角、広く定義したいんだ、ということであれば、「受領者に開示等した一切の情報、本契約の存在および内容、甲および 乙の協議・交渉の存在およびその内容、および、これらを含む記録媒体、なら びに、素材、機器およびその他有体物をいう。」
という記載でもよいかもしれません。(良いとも思います。)
但し、要は何でもかんでも秘密情報だというと、実際は逆に弱くなることもあるため注意が必要です。つまり、出した情報に対して秘密情報の線引きが現実的に曖昧であるため、裁判時に、保護されるべき秘密情報の特定が不可能であるとして無効と判断される恐れもあります。
また、何でもかんでもスタイルですと、受領側にとって、秘密情報の管理が大変(口頭情報も秘密情報管理する手間が大変)になってしまうので、基本的には、このままで通ることは少ないと思っておいた方がよいでしょう。

そのような背景があり、上記した例では、
・「秘密」と表示したもの
・口頭とかでも、あとで「あれ秘密ね」としたもの
を秘密情報として定義
しています。
口頭や、ホワイドボードや資料での視覚的手段で、秘密情報を開示するケールは多々あると思います。しかし、先ほどの恐れと一緒で、裁判時の立証のことを考えると、これらを開示者が秘密と立証するには難しいですよね。ですので、30日という期間を設けて、あとからあれは秘密だったと明示することとしています。

ここで、実務上でワンポイントアドバイスです。
ということは、口頭や視覚的手段で開示して、秘密と明示しなかったら、秘密情報として弱いということです。たとえ、中身的に、そりゃ秘密情報でしょと当たり前に思っていても弱いのです。
ですので、そのような証拠が残りにくい手段においては十分気を付けること、実務に係る担当者に教育(周知)がいきとどくこと、そして、WEB録画や議事録作成など、常に証拠が残る意識づけをすることが、とても大切です。特に、教育(周知)の問題が、一番重要かもしれません。

また、上記例では➂にサンプルと仕様などの情報は有無を言わさず秘密情報としています。これは、サンプル開示の可能性高いのであれば絶対要ると思います。
その他にもケースによっては、サンプル以外に、「有体物」、「重要文書類」など、あきらかに秘密情報とされるもの、したいものは、個別にあらかじめ指定しておくのがよいでしょう。

そして、もう1個だけ捕捉します。その①でも書いたかもしれません。
ベンチャー企業Aにとって、大企業Bと事業の協議をしていることは、ベンチャーとしての価値(というか信頼性)を説明する、最高の材料にもなります。大企業Bと●●の話を進めている、という存在事実は秘密情報の定義からはずしておくことも、場合によっては重要なオプションになるかもしれません。

ここまでが第1項。つづいて第2項ですが、
これはほとんどデフォルト
です。ほとんどこのような書き方になるのではないかと想定します。
注意点は、契約締結前に既に自社が保有していた情報が「①開示等を受 けたときに既に保有していた情報」であることを証明できるかという点です。そ の点について証明ができないと、契約締結後においてどの技術がどちらのもの かについて争い(技術のコンタミネーション)が発生するリスクがあります。

簡単な例で言えば、特許を出していたり、公証証拠日付をとっていたりすれば確実ですよね。本ケースでは、特許を事前に権利化しているため、ある程度安心材料はあります。しかし、勿論、十分にこの点は注意が必要です。
第6条の秘密情報の権利、のところとも重なってきますが、バックグランドインフォメーション(BGI)、フォアグランドインフォメーション(FGI)、という概念を理解しておくと良いと思います。契約日を境に、それ以前に自前で持っている情報をBGI、それ以後の情報FGIとします。
よくある事例としては、大企業Bと新規事業のことについて協議している中、議論が活発になるなかでブレスト要素が多くなり、どちらとも言えない、新しいようなアイデアが出てくる。ありそうですよね。
これが、いやBGIであったよと証明できれば、両社で創出したアイデアではなく、ベンチャー企業Aの秘密情報とか、ベンチャー企業Aが権利を持つべきアイデアだ、といえるわけです。
第2条第2項は、この点を包括的に理解して、実務上十分注意すること、というのが重要ですね。契約書上は、ほぼこれがデフォルトで、多少の変化球はあっても大きく変わらないと思います。

・・・
力をいれて書いていたら、すでに遅い時間となってしまいました。
その②はここまでとします。1個分(1条分)しか説明してないですね。。。申し訳ないです。

また時間をつくって、その③をアップしていきたいと思います。
本日も最後までありがとうございました。
次回、投稿にまたお会いしましょう。


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