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豊洲四丁目アパートをゆく(東京)

湾岸エリアといえば、オリンピック景気で活気づき、再開発に沸いた豊洲、お台場、有明あたりです。かつては埋め立て地に広がる工業地帯として地価もかなり低めだったこの周辺も、現在では高級タワマンが立ち並び、中でも豊洲はエリア屈指の高級住宅地となりました。

そんな豊洲で半世紀以上前に建てられた都営住宅が、いよいよその役目を終えようとしている。となれば、行くしかない。
みなさんも、時代の生き証人となるのです! ドーン!🫵



4月24日の月曜日。有休をとり、地下鉄有楽町線で豊洲駅へやってまいりました。築地市場の移転先でも有名な豊洲ですが、今回の目的は市場見学ではないので、寄り道せずに先を急ぎ――


――たいところですが、だまし絵のようなこの光景に目を奪われずにはいられません。ホームドアがあるんだけれど、その先にも地面が続いていて……なにこれ、どうなってんの?


天井を見ていただければわかりますが、本来この右側の空間は線路。その空間を埋めて、右側のホームと接続させるという、非常に面白い構造になっています。左右でホームの高さが違うので、階段でつないでいるというのも興味深い😁



改札を出て、さっそく目的地の位置を確認。普段あまり来ない地域なのでまったく土地勘がないため、こういう地味なチェックが非常に重要。なんとかなるでしょで歩き始め、行き詰まった苦い経験が何度もありますので😅


仕事へ向かう人たちに混じって、ひとりお気軽な男。地上へ出ます。


と思ったら、すぐ目の前が豊洲四丁目アパート。あっけなく到着。火遊び厳禁、敷地内禁煙!


すぐそこの大通りはかなり人の流れも多く、交通量もあるんですが、通りを一本入った途端にあたりがしんと静まり返ります。


何だろう、バス停みたいな構造物が見えてきた。どうやら居住者専用の駐輪場のようです。


もうしばらくすると、誰も見なくなってしまうんだなぁ。


5月の連休明けから解体が始まり、年末にはほぼ完了する予定。


階段をちょっと上がって1Fへ。このアプローチも郷愁を誘います。アパートは全13棟構成。ここは1号棟です。


音量注意!

花壇などはまだ手入れされていたころの名残があるけれど、建物は既に植物の浸食が始まっており、ベランダ側も急速な劣化が進んでいるみたい。


曇天の空が、もの悲しさをより際立たせるね。


階段にはたばこの吸い殻が。禁煙だってのに。


階段で上階を目指します。


となりが公園なので環境はとてもよさそうだけど、遊んでいる子どもたちの姿はなかった。このアパートも全員退去済みとあって、恐ろしいほどの静寂が支配している。


音量注意!


退去後の部屋は開け放たれていた。


このガス湯沸かし器も、相当な年代物だよ。水回りは設備交換の跡が見られ、補修を繰り返しながら大事に使われてきたことがわかる。


この引き戸の位置とか高すぎやしないか? 手が届かないだろ😆 左側の電源配線もなんだか危なっかしいなぁ。


浴室も配管設備は古いけれど、シャワーヘッドや水温調節器はあたらしい。


ウォシュレットというわけにはいかんか。室内洗濯機置き場も存在を主張している。


ふすま等は取り外され、


畳の一部は腐食が始まっていた😵。


押入れ内部では、なぜかパイプがむき出しになっているところも。


エアコンは退去時に取り外したみたいね。それにしても壁の色の違いがすごいな。


華奢なチェーンで吊り下げられた蛍光灯。ブレーカーはタバコ? キッチンの油? 日焼け? 原因は不明だが茶色く変色している。


間取り的には単身者ないしは夫婦ふたり、といったところか。ただいま、おかえり、のやりとりがあったのかもしれないが、今のここに生活の匂いは残っていなかった。扉を出る。


おもての電気メーター類も撤去済み。


集合ポストには、古いチラシがたまっていた。


背後にある2号棟。


割と重要そうな配電盤が無造作に戸外においてある😅


ここも、基本設備は1号棟と同じようです。


物置用途かな。窓もついているけれど、3畳くらいしかなくてかなり狭い印象の部屋。


収納はすべて開け放たれ、中身もぜんぶ持ち出し済みでカラッポです。


おおー、バランス釜が。これも最近は見かけることが減りました。


屋上はどうなっているんだろうと気になったので、最上階へ。


とおもったら、屋上はフロアとして存在せず、そもそもアクセスルートがなかった。非常用はしごを伝っていくわけにもいかず、断念。


階段で登ってきた割には、結構高い。


向かいの1号棟を眺めてみる。この1号棟は1967年に完成。そこから1971年までのあいだに13の棟が建てられた。当時としては高い建物だったのかな。まさか、こんな高層ビルに囲まれるとは。
3号棟へ向かう。ここは玄関ドアの位置が特徴的。2F以上は共通廊下に面してドアが並んでいるんだけれど、1Fはベランダに直接ドアがついている。


だからこんな感じで、1Fと2Fで入り口が裏表逆になっているんだよね。めずらしい。こんなの初めて見たよ。


築深物件ではあるが、設備は更新されており、モニタ付きインターホンの部屋もあったりする。


吹き溜まりには落ち葉が集まっていた。


たむろ行為というパワーワード。


お願いしなくちゃならないとは。みんな節度まもろうぜ。


このステッカーを貼ったころはまだ、この党の行く末を知る由もなかった😮‍💨。


住人が蒸発しちゃうケースもあるんだな。


階段の踊り場にはそとから緑が入り込み――


壁面を覆いつつある。


表に出るとなにやらにぎやかなフィギュアが陳列されていました。フリマ? 売り物なの? よくわからん。


特にこの青い笹船で寝っ転がっているカエルがかわいい。


いま見てきたのは1~3号棟。今回の取り壊し対象は、1~3号棟と、4、11、12号棟です。それ以外はすでに解体済み。



4号棟では業者の声が響いていた。すでに解体作業は始まっている。


12号棟を通り沿いに眺めてみる。


こちらも退去済みとあって、住人の気配はない。


なにこの栄養ドリンク、聞いたことない。すでに生産中止か。現存していれば、おれのエナドリ試飲レビューにぜひ登場していただきたいものだが😁


音量注意!


ひとつだけ存在する怪しげな扉。


こちらはすでに完全封鎖されていた。


う~ん、治安が乱れてますね。高校生でもダメなのに、中学生特定とは。


いまここ。


自転車置き場は完全にもぬけの殻です


子ども用の公園があり、地区の集会所が併設されている。


かつては住民の集いの場であった集会所も、すでにひと気はなく。


・・・と、ひとり歩きの犬が申しております😛


犬看板のそばには、大量のクローバーが。結構探したんだけれど、四ツ葉は見つからず。


すぐそばには、新設の四丁目アパートがある。この対比よ。


11号棟には早くも業者が入ってきていた。


作業員の方はせわしなく廊下を行き来している


音量注意!

12号棟➡4号棟➡11号棟
かつてはみんなのあこがれの的だった団地住まい。羨望のまなざしで見上げられていたのも今は昔。時を経て壁にはくすみが目立ち、背後の高層ビルに見下ろされ、飲み込まれようとしている。


近くには、真新しい集合住宅が建っている。


ここが新生「豊洲四丁目アパート」。「都営高層住宅江東区豊洲四丁目団地」とする案もあったそうだけれど、名称は引き継いだんだね。


一方の旧「豊洲四丁目アパート」は役目を終え、解体を待つばかり。


そしてこの旧案内図に目を向ける人もいなくなるのか。


季節は春。植物は芽吹き、花はいろどりを添えて新生活のスタートを祝福する。


最初の1号棟へ戻ってきた。ゴミ置き場さえ、すでに閉鎖済みだ。


ひとり、自転車にまたがって、ずっと3号棟を眺めている人がいた。かつての住人かな。この人はこの場所でどういう人生を過ごしてきたんだろう。ゴールデンウイークが明けるとここも閉鎖され、重機が入り、50年以上の歴史ある建物は記憶と記録の中にのみ残ることとなる。


休みの日には、向かいの公園にも子どもたちの声が響くのかな。しかし、その見守り役を果たすには、いくぶん歳を取りすぎた。残されたわずかな時間、この公園をゆっくりと見下ろすことしかできない。しかし、そのタイムリミットも、すぐそこまできている。


豊洲駅に戻ってきた。時計を見ると、まだ朝の9:30だよ。平日の朝早くから、なかなかヘビーな探索だったな~😵‍💫。


4丁目アパートはぜんぶで13棟から構成されていて、これらはすべて取り壊しとなる。近くに新しい4丁目アパート群が建設されたが、家賃は以前よりも上がったとか。東京都住宅供給公社(JKK東京)によれば、旧アパートの居住者はすでに全員退去したとのこと。新アパートへ転居する人もいれば、ここを去る人もいたんだろう。

古くは造船、戦後はガスや電力など東京のエネルギー需要にこたえる供給基地として機能していた豊洲は、いまや商業+観光地として再スタートを切っている。
世の中は常に動き続けているんだ。だから、自分も立ち止まってはいられない。過去へ感謝し、現在を謙虚に受け止め、未来への不安を希望に変えて。

公園で自転車にまたがりながら、3号棟を眺めていた人。5分くらいして意を決したようにその場を離れると、こちらへやってきて……すれ違いざまに目にしたのは、30代くらいの女性の顔だった。
彼女もまた、あたらしいスタートを切ったのかもしれない😉


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