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反体制ハードボイルド小説『黒ヘル戦記』

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『情況』(変革のための総合誌)に掲載された連作小説。 一九八〇年代から九〇年代にかけて、首都のど真ん中にキャンパスを持つ外堀大学はたびたび学園紛争に揺れた。正門にバリケードを築き…
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#外堀大学

「黒ヘル戦記」の番外編【短編小説】1985年、夏の一日

「黒ヘル戦記」の番外編【短編小説】1985年、夏の一日

1985年、夏の一日

【あらすじ】
 1985年、五郎は外堀大学に入学した。病気で高校を留年したため、2年遅れての大学進学だった。外堀大学には同じ高校の卒業生、秀樹がいた。同じ歳の先輩・秀樹のおかげで、五郎の大学生活は順調にスタートした。「この借りはいつか返す」と五郎は秀樹に約束した。しかし、夏のある日を境に秀樹は姿を消す。ゲリラ戦を戦うため、地下に潜ったのだ。そして、秋、二つの事件が起きる。1

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黒ヘル戦記 第三話 フラッシュフォワード

黒ヘル戦記 第三話 フラッシュフォワード

『情況』2020年夏号に掲載された反体制ハードボイルド小説

第三話 フラッシュフォワード
神楽坂で小料理屋を営む女は元黒ヘル。修羅の世界から離れて20年、彼女はPTSDに苦しんでいた。

ドナルド・トランプは、いずれ自分の遺体をおさめるために、ネヴァダ砂漠にピラミッドを建設していた。完成のあかつきには、ギザの大ピラミッドより十メートル高くなる。
小説『フラッシュフォワード』より

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黒ヘル戦記 第二話 ランボーみたいな人

黒ヘル戦記 第二話 ランボーみたいな人

『情況』2020年春号に掲載された反体制ハードボイルド小説

第二話 ランボーみたいな人
1983年3月、町田移転阻止闘争は内部崩壊によって敗北した。この戦いを牽引した男は、その後も大きな葛藤を抱え続けることになる。その葛藤は2017年に没した元赤軍派議長、塩見孝也氏が抱えていたものと同じだった。

「ランボー、任務終了だ。もう終わったんだ」
「何も終わっちゃいない。何も。勝手に終わりにしないでく

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黒ヘル戦記 第一話 詐病

黒ヘル戦記 第一話 詐病

『情況』2020年冬号に掲載された反体制ハードボイルド小説

第一話 詐病
1992年12月、板橋区の居酒屋から警察に通報があった。「客同士が喧嘩を始めて収拾がつかない」という。この酔っ払いの喧嘩に、なぜか、警視庁は公安刑事を派遣した。事件の背後に何があったのか。

「君は正気なのか。正気で言っているのか?」
「正気ですとも。私は卑怯者です。だけど、正気なんです」
『カラマーゾフの兄弟』より

 

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