櫛部静二

城西大学男子駅伝部監督の櫛部静二です。箱根駅伝、世界の舞台で活躍できる選手の育成を目指…

櫛部静二

城西大学男子駅伝部監督の櫛部静二です。箱根駅伝、世界の舞台で活躍できる選手の育成を目指しています。 普段、考えていることやトレーニングの考え方や練習の様子、日々取り組んでいることを話します。 少々マニアックな話もあるかもしれません。

最近の記事

新しい仲間を紹介します!

まだ寒い日もありますが、少しずつ春の温かさを感じるようになりました。学生ハーフマラソン出場組以外は、スピードトレーニングの導入段階に入り、間もなく始まるトラックシーズンへ向けた準備が着々と進んでいます。さらには新入生も加わり、新しいチームづくりへの意欲、期待感が高まっています。 今回はその新たに仲間となった12名の選手をご紹介しましょう! 青木丈侑(東農大二高) 大川翔雅(滋賀学園高) 小澤優翔(上伊那農高) 大場崇義(上伊那農高) 葛城渚(奈良育英高) 小林竜輝(鹿島学園

    • 第100回箱根駅伝総括

      箱根駅伝の応援ありがとうございました。目標の総合3位に入ることができました。 3位という目標を立てたのは2022年10月の第99回大会予選会を通過した直後のことです。創部23年目を迎える年の100回大会は城西大学男子駅伝部にとって大きなターニングポイントになると考え、この目標を設定しました。それが達成できる戦力が整いつつあり、選手らの意識をさらに高いものへと変えていきたいと願ったこともきっかけです。 その目標達成のため、最初に目指したのは前回大会でのシード権獲得でしたが、

      • 日本長距離界の強化をどう進めるべきか

        日本陸連やナショナルチームの強化策をどのように各チームや選手に落とし込んでいくかが時折、話題になります。種目によって多少の違いはあるかもしれませんが、長距離に限って考えれば、世界大会に出る場合も「日本代表」としての合同練習は行われず、選手個人が指導者とともに組み立てた練習を行います。(各チームの指導方法の違いや怪我をした場合の責任所在などがあり合同は難しいためです) 実業団連合などで短期の強化合宿を行うことはありますが、それも一時的なものですので、強くなるための方法は個人(指

        • 「積極性」という評価への違和感

          トラックの国際大会やマラソンのテレビ中継を見ていて気になるフレーズがあります。それは「積極性」という言葉です。集団の先頭を走ったり、ときにそこから抜け出した選手にかけられるもので、基本的にはポジティブな意味合いで使われています。しかし私はそれを聞く度に違和感を持ってしまいます。 陸上長距離ではフィジカル面の視点だけで言えば、そのレースに合わせた特異的な要素をいかに準備できるかでレースの結果、勝敗が決まると私は考えています。その要素とは走運動に必要な先天的なあらゆる能力をベー

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          独創的な指導を追い求めて

          ブダペスト世界選手権では女子やり投の北口榛花選手が金メダルを獲得し、田中希実選手は立て続けに5000mで日本記録を更新しています。すごいですね。2人に共通するのは従来の日本のやり方にとらわれず、独創的なチャレンジを続けているところだと私は考えています。 北口選手は単身でチェコにわたり、現地のコーチに指導を受けています。田中選手は父である田中健智コーチの指導を受けていますが、実業団から離れて退路を断ち、800mから10000mまで積極的に海外レースに出ています。型にとらわれな

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          箱根駅伝予選会のない夏

          「今年は箱根予選会がなくていいですね。あるとないとではやはり違いますか?」 こうした質問を最近よく受けます。その際、私は即答でこう答えるようにしています。 「はい、違います!」 予選会を戦う場合、7月中旬から8月は駅伝シーズンへ向けたトレーニング期間として持久力強化を目指しますが、9月上旬、ちょうど今くらいの時期から強度を高めていくフェーズに入ります。そのため10月中旬にハーフマラソンで結果を残そうとすると、9月半ばまでに距離を重ねるトレーニングを終えなければなりません。事

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          前期シーズンの2つの大会を終えて

          今季前半の重要な試合と位置付けていた2つの大会が終わりました。 関東インカレは2部の戦いでしたが、800m以上の中長距離種目全てで入賞者を出し1部昇格を果たせました。また全日本大学駅伝関東選考会はトップで本戦出場を決めました。選手たちの頑張りで手にしたこの好成績で、チームは大きな自信を手にしました。 陸上長距離ではタイムが実力を示す指標になりますが、私はそれ以上に勝負そのものを重要視しています。どんなにいいベストタイムを持っていても、勝負に勝てなければ意味がないからです。陸

          前期シーズンの2つの大会を終えて

          トレーニング立案のために知ってほしいこと

          春のシーズンも終わり、関東は梅雨入りです。季節の移ろいともに城西大学の新入生たちも少しずつ環境や練習に慣れてきたようで、新たな仲間とも打ち解け、仲良さそうに笑顔を見せています。 高校から大学への移行は生活環境や学業はもちろん、競技面でも大きく変わります。高校では多くの選手がメインとする5000mは大学でも花形種目ですが、引き続きそこを中心に考える選手も、さらにタイムを伸ばすために距離を走り、持久力を高める必要があります。もちろん10000mやハーフマラソンへチャレンジする選

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          陸上競技場を満席に!

          ずいぶんと日が経ちましたが野球のワールドベースボール・クラシック(WBC)は盛り上がりましたね。私も子供の頃に野球をやっていましたし、今や国民的なスターになった大谷翔平選手をアスリートとしてとても尊敬しているので、大会期間中は夢中で応援していました。 WBCを見ていて気になったのは大谷選手がインタビューで「これからの野球人気」を意識したコメントをしていたことです。日本国内で不動の人気があり、競技人口も多いのに、野球界も将来の姿に危機感を感じているということでしょう。またメジ

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          山口浩勢の東京五輪までの道のり、そしてこれから。

           城西大学OBの山口浩勢が2月12日の実業団ハーフをもって第一線から退きました。ラストレースで自己ベストを出したのは見事というしかありません。最後まで成長した姿を見せるあたりは、何ごともやり遂げる生真面目な彼らしいと思う一方で、もうそんな年齢なのかと、時の過ぎる早さを感じました。  2018年の暮れに彼から電話をもらいました。そこで「競技生活の集大成として東京オリンピックに出場したい、そのための指導をして欲しい」と相談されたのです。愛三工業に所属する選手ですので、所属先の承

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          モチベーションの維持って難しい?

           中学、高校、大学とそれぞれのカテゴリーで活躍しながら、その後、苦しんでいる選手を多く見てきました。特にジュニアで活躍した選手がその後、思うように競技力を伸ばせないと、周囲は「早熟」という言葉で表現しますが、それを見る度に切ない気持ちになります。競技に臨むスタンスや、目標は人それぞれですが、もし努力を続けていながら伸び悩むのであれば、それは残念なことです。  原因をフィジカルなのか、メンタルなのかの2つに絞ることはできませんが、スポーツ科学が進んでいる現在、マラソンで世界の

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          箱根駅伝は手段であり、目的ではない

           今回の箱根駅伝、沿道での応援が戻ってきて、あらためて人気の高さを感じました。陸上競技はもともと個人競技(リレーを除く)ですが、駅伝はチームスポーツでかつ、区間配置の采配など走力以外の戦術、戦略の要素も加わります。それによりゲームとしての面白さも生まれますし、テレビ放送の影響により、人気がこれほどの規模になりました。私自身も駅伝の魅力にとりつかれた一人です。日本特有の文化ですが、陸上長距離の競技人口拡大や人気向上に大きく貢献していることは間違いありません。箱根駅伝を目指して、

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          noteを始めて感じたこと

           2022年、トレーニングの話を中心にこのnoteを書き始めました。私が当初、イメージしていたよりも多くの方たちに読んでいただけたようで、感想や意見など試合会場で声をかけてもらいました。私自身、書くこと自体が楽しかったのですが、そうした声を聞くことも同じくらい楽しく嬉しく思いました。  なかでも以下の2つはとても反響が大きく、皆さん、これまでの常識に疑問を抱いたり、新しいトレーニングに興味があるんだなと感じました。  もともと私は自分自身の経験や考え、トレーニングの取り組み

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          トレーニングの常識を疑ってみる

           前回、「レース前日の1000m刺激」について書きましたが、陸上長距離は伝統的な考えが根強く残っていることを改めて感じましたので、今回はその続編です。  なぜ古い方法が継続され、新しい取り組みが起こりづらいのでしょうか。それはこの競技が同じ動作が連続するシンプルなものであり、道具の進化に頼ることが少ないことも関係しているのでしょう。原始的という見方もできますが、同時に「革新的な何か」が起こる余地の少ない、成熟しているスポーツと見ることもできるかもしれません。  その意味でカ

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          レース前日の1000mは本当に必要?

           先日、私が受け持つゼミで、水泳選手のスタート時、後ろに置いて蹴る足と、前に置く軸足とどちらが利き足なのかについて書かれた論文を輪読する機会がありました。手と違って、利き足を意識する機会はあまりないですよね。陸上競技でいえば、スターティングブロックの前の足と、後ろの足のどちらが自分の利き足なのかを明確に答えられる人は少ないのではないでしょうか?  調べてみると腕と違って足には明確な利き足の定義はないようです。使いやすい足、もしくは力を発揮できると本人が信じている足が利き足であ

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          箱根駅伝予選会を振り返って

           10月15日に行われた箱根駅伝予選会で城西大学は3位に入り、本戦出場を決めました。関東学生陸上競技連盟からはテレビなどを通じての応援のお願いが出ていた通り、皆さんの思いは遠くからでも届き、すべての選手が勇気を持って走ることができました。本当にありがとうございました。週明けに大学に行くと、教職員や駅伝部以外の学生たちが私の想像以上に喜んでくれて、とても嬉しかったです。  さて、今回の予選会の戦略を少しだけお話しします。レース前、私は当日の気温と湿度について情報収集をしていま

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