働くこと

もう6年くらい前に、ブックフェアで購入してから、積読のまま置いてあった本に初めて手をつけた。人はなぜ働くのか。ちなみにこの本は朝日出版社から発刊されている。当時編集長だった現WIRED JAPANの松島さんが描かれている『マインドフルなテクノロジーへ』という挟み込みの文章も面白い。

松島さんとは一度あるアーティストの方を通してお会いしたことがある。WIREDが大好きな自分にとっては、光栄そのものだった。WIREDには未来が詰まっている。その可能性を垣間見て、自分は何ができるのだろうかという思考を深め行動することが好きなのだ。

同時に、この本も読んでいる。

遊牧民は移動することによって、生きる糧を得ていた。移動は暇を作らない。そして循環していく。逆に、定住することにより、安心を得た人たちは「暇と退屈」を感じるようになる。

今の時代はその暇を埋めるものが仕事になっている人が多いのではないか。特に資本主義によって生きてきた世代はなおさらそう感じるだろう。松島さんによると

巨大な経済システムを回す歯車を作るために、マスプロ教育が幅を利かせていた。アダム・スミスの『国富論』にある誤った考察(人間は本質的に怠惰であるという前提)の上に資本主義が築かれたと指摘するけれど、60年代はいわばその到達点だった。そこにNOを突きつけたのが、若きカウンターカルチャーの担い手たちだったのだ。彼らは「自然回帰」を標榜し、顔を持たない巨大なシステムから積極的に抜け出して、人間本来のスケール感を取り戻そうとした。

TEDBooks 『なぜ働くのか』挟み込み文章

「インセンティブこそすべて」というアダム・スミスの影響のもとに資本主義が発展してしまった結果が今であり、資本主義の悪い側面が強調されてしまっているのも事実。つまり、「富めるものは富み、貧しきものはより貧しくなっていく」。

産業革命以前は、働く人たちそれぞれの職能があり、その可能性に富んでいる世界だったのではないか。大量生産、大量消費の時代に突入してから、その可能性は置き去りにされてしまった。

ここで自分の話になるが、仕事に対しての達成感や喜びを大事にしている。一度きりの達成感ではなく、人と繋がることでその後の喜びにつながる。だからこそ、人との関わりを大事にしたい。つながることは、この世からいなくなる時の孤独を癒してくれると信じている。

資本主義につきうごされている感覚はない。しかし、資産がないと生きていけない。働くことに対して、嫌悪を持っていたのでは生きる上で苦痛が伴ってしまうだろう。その働き方、つまり生き方を考えることが必要だ。まさに今、自分はその時なのだ。

私たちは、社会制度をデザインすることを通じて、自らの本質をも「デザイン」してしまう。したがって、いったいどんなものが人間の本質としてデザインするのに望ましいのか、私たちは自問しなければならないのです。〜〜意欲や積極的な関与、目標や充足を得られる仕事の場を、あらためて育まなければならないのです。

 「なぜ働くのか」より

育む、という概念が多くの企業には欠けている。というか、余裕がないのかもしれない。自己責任という考えが大きく幅を利かせている気がする。果たして全てが自己責任だと言い切れるだろうか。この世の中に、「全て」100%悪い、ということなどない。だからこそ、お互いに配慮し合う必要があるのだ。

仕事を「使命」、「義務」、「実績」のうちどう捉えるかでその意味と満足度は変わってくるという。

ここで私が気づいたのは、私はまさに「使命」として仕事をとらえているということだ。
働くことに喜びを覚え、それを自己アイデンティティにとって不可欠なものと位置付けます。自分が働くことで世界がより良くなると信じ、友人や子供たちに対しては、そのような仕事をするよう促します。使命感を持って働く人々は、自分の仕事から大きな満足を得ているのです。

「なぜ働くのか」より

仕事によって、クライアントに喜んでいただく。そこまでのプロセスにも交流があり、世界が広がって見えることが、私にとって「働く」ことの価値だ。

私がクライアントに喜んでもらったと実感できる時。それは取材後の「今日はとっても楽しい時間でした。ありがとうございま」この一言に尽きるのだ。私はエンターテイナーではないので、面白さを提供できるわけではない。しかし、価値ある話を引き出し、その人が自分のしていることに価値を見出せる対話をすることで、その時間をお互いに良きものとすることができる。

メディアで報道されていない、社会の良いところがこの世の中にはたくさんある。知ることで自分の可能性や社会の良さを実感できる人もいるのではないだろうか。

最近、歴史や古典を読んだりすることが増えた。本当に人類は変わらぬ課題にいつも直面しているし、テクノロジーはそれを解決してくれないのだと実感する。

自分はどう生きるのか。もうそれだけをしっかり考えるだけでいい気がしてきた。

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