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祐子内親王が百人一首に残した作品は?

祐子内親王家紀伊ゆうしないしんのうけのきいが百人一首に残した作品は、、、

──── 目 次 ───
☆作品
☆意味
☆歌枕
☆掛詞
☆縁語
☆文法解説
☆鑑賞
☆出典
★関連動画
☆大久保利通の歌
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☆作品

♪ 音にきく
  高師の浜の
  あだ波は
  かけじや袖の
  濡れもこそすれ

です。

読みは、

♪ おとにきく
  たかしのはまの
  あだなみは
  かけじやそでの
  ぬれもこそすれ

となります。

☆意味 

音にきく    (噂に高い)
高師の浜の  (高師の浜の)
あだ波は
   (虚しく寄せ返す波は)
かけじや袖の
   (かけないように
    しましょう。袖が)
濡れもこそすれ
 (濡れては大変ですからね)


☆歌枕

2句「高師の浜」
大阪府高石市辺りの海岸



☆掛詞

「高師」と「高し」の掛詞(かけことば)です。


☆縁語

「浜」、「波」、「濡れる」


☆文法解説

1句「音にきく」の「音」は、何か物音がしたのではなく、噂を意味します。

3句「あだ波」は、「虚しく寄せ返す波」を意味しますが、

この歌では、上の句(1句・2句・3句)の

♪ 音にきく 高師の浜の あだ波は

で、

「浮気者だと噂に高い、あなたの誘い文句などは」

という意味を含ませています。

そして、下の句(4句・5句)

♪ かけじや袖の 濡れもこそすれ

で、

「波がかからないようにしましょう。袖が濡れては大変ですから」

の部分に

「浮気者のあなたの誘い文句に、かからないようにしましょう。後で、浮気されて、涙で袖が濡れてはつまらないですから」

という意味を含ませています。

4句:「かけじや袖の」
   「じ」打消しの助動詞

5句:「濡れもこそすれ」
   「もこそ」:
   強意の係助詞「も」
  +強意の係助詞「こそ」
  「~すると困る」

  「こそ」は、已然形に接続
   「すれ」:使役の助動詞
   「す」の已然形
   「こそすれ」
   係結び


☆鑑賞

この歌は、祐子内親王家紀伊が70歳の時の作品と言われています。
「艶書合わせ(えんしょあわせ)」という遊びをしたそうです。
「艶書合わせ」とは、まず男性側から女性側に歌を贈り、
その返しの歌を女性から男性へ返させるという遊びでです。
そんな「艶書合わせ」の1コマです。
当時29歳の中納言藤原俊忠の歌:

♪ 人知れぬ
  思ひありその
  浦風に
  波のよるこそ
  いはまほしけれ

(私は人知れずあなたを思っています。
浦風に波が寄るように,
あなたに一夜お目にかかってこの胸の内をうちあけたいのです)

そして、この中納言藤原俊忠の歌に返したのが、祐子内親王家紀伊の歌です。

噂に高い高師の浜の虚しく寄せ返す波は
かけないようにしましょう。
袖が濡れては大変ですからね
同じように
浮気者だと噂の高いのあなたの誘い文句に、かからないようにしましょう。
後で、浮気されて、涙で袖が濡れてはつまらないですからね

中納言藤原俊忠は、浮気者という噂が高かったのでしょうかね?
その中納言藤原俊忠の誘いを上手くかわした祐子内親王家紀伊。
上手いですね。
それにしても、70歳の祐子内親王家紀伊に
「想いを寄せる歌」
を詠んだ29歳の中納言藤原俊忠とは何者でしょうね?

★系図
藤原道長
→藤原長家
→藤原忠家
→藤原俊忠

☆出典

『金葉集』恋下・469


★関連動画


☆大久保利通の歌

音に聞く
高師の浜の
はま松も
世のあだ波は
のがれざりけり

明治時代に高師の浜(現在の浜寺公園付近)の松が薪や材木として伐採されることを嘆いた歌で、この紀伊の歌の本歌取りである。現在は『惜松碑』と呼ばれる石碑が建てられている。



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