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いつかあなたの旅になる/東京都庭園美術館

東京目黒にある庭園美術館。
そこでは現在、旅をテーマとした展覧会が開催されている。

「旅と想像/創造 いつかあなたの旅になる」

皇族である朝香宮夫妻の100年前の欧州旅行。
1920年代の旅風景。
この建物もその旅行から大きな影響を受けている。
アールデコで彩られたかつての彼らの邸。

そこを装置として、彼らの100年前の旅の記録や
それに影響されたファッションデザイナーの旅。
コレクターたちのマニアックなコレクション。

そして、館の中に今も留まり続ける懐かしい情景、記憶。
新しい旅の在り方の模索などは
現代のアーティストたちによって、目に見えるカタチで表現されている。

どれも興味深く、旅への情熱を加速させていく。

庭園の見える陽の当たる明るい渡り廊下。

「まあ、ここで休んでいきなよ」

と、呼び止めるかのように
旅に関する書籍と椅子が並んでいた。

そこに腰を下ろし
あらためて自らの旅のことを思い返してみた。

イタリアで電柱にぶつけて折れてしまったレンタカーのサイドミラー。
スズメと共に食べたモン・サン・ミシェルのオムレツ。
バスとベッドがカーテン一枚で仕切られたアムステルダムの合理的なホテルの部屋。
唐突に睡魔に襲われ、たたき起こされたサグラダ・ファミリア。
ローマで会ったスリとのがっぷり四つの攻防。
元Jリーグの監督だと主張するあやしいスペイン人。

美しい思い出もたくさんあったはずなのに
なぜかおかしなことばかり思い浮かんでくる。
しかし、すべては大切な旅の記憶だ。

旅の記憶を掘り起こし、少しゆかいな気になって
さらに展示をめぐる。

終点は「耳で旅をするまだ見ぬ彼方へ」という作品だった。

暗い空間の中で目を閉じる。
ジャングルや空港、街中の雑踏。
さまざまな音が聞こえてくる。
まるでその場所にいるような、その息遣いが感じられる。
時折鳴り響く稲光で、空間と意識を切り替えられリセットされる。
そしてまた音の旅に出る。

これはかつて体験した記憶の中の音だったか。
これから夢見る旅の情景だったか。
それとも今、旅をしているのか。

旅を想像して、創造する。
誰かの旅のてがかりから、自らの旅を思い返し、願った。
現在・過去・未来を旅する、そんな場所だった。



旅行に行きたいなーーー!!!


〈出展作家〉相川勝/栗田宏一/さわひらき/福田尚代/宮永愛子/evala(五十音順)
カッサンドル/髙田賢三 他
東京都庭園美術館ウェブサイト


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