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#35 「9分間」

時間は、いつの間にか、
23時を回っていた。

【トゥルルルルルー】

終了10分前を知らせるコールが鳴る。

すかさずワンコールで受話器を取る。

「ご利用終了10分前になりました」
という、終了の確認だけの連絡だった。
普通だったら、
【延長するかどうか】の確認があるはずだが、
それがなかったので
「延長は?」
と、
延長をする気はなかったが聞いてみると、
「この後、フリータイムのお客様がお待ちの状態でして、
延長はご遠慮いただいておりまして…」
なるほどなっと納得。
そんなこともあるんだ。

「わかりました。では、準備いたします」
「ありがとうございます。では、フロントでお会計をお願いいたします。」

というやりとりをしながら、
彼女との残り9分、
個室での時間を過ごした。

受話器を元に戻すと、
彼女は、少し寂しげにしていた。

俺たちは、
何を今、見ていて、
何を感じていて、
何をすべきなのか。

そう、
退出の準備。
って、違うだろ!
この残りわずかな個室での時間をどうするか。

残り8分

彼女は手を差し伸べてきた。
酔っていた彼女は、
可愛いというより、艶のある表情をしていた。

差し伸べられた手の甲に、
キスをした。
彼女は『ハッ』とした表情になったに違いない。
手の甲に舌を這わせる。
彼女は、残り少ないワインに手を伸ばして一気に口に含み、
舌を這わせている手を離させ、
俺の顔を両手で挟んだ。

そして、
ワインを口移しをしてきた。

不意を突かれた。

口づけをしながら、
飲み干し、
そのままキスをし続けた。

残り7分

6分

5分…

時間なんてどうでもいい

二人で潜れるところまで潜りたい

潜った先が、二人しかいなくても、
俺は構わない。

残り4分
彼女を俺の太腿に跨ぐように正体させ座らせた。
強く強く抱きしめた。

彼女は俺の肩に顔を置く
俺は、彼女の頭撫でる。

心地良さそうにしている。

彼女の心臓と
俺の心臓がバラバラに打っていた。

深く呼吸をする。

彼女も俺に呼応するように深く呼吸した。

『トン トン トン  トン   トン  トン…』
『トントントン トン  トン  トン  トン…』
シンクロする。

彼女が俺の気持ちに応えるように
俺が彼女の気持ちに応えるように

残り3分


2分


1分


彼女を抱き続けた…


Time over…


To be next story…


(あとがき)
やっとカラオケタイムが終わり、
次の展開。
彼女とユータの夜は…

本当に最近書けなくて申し訳ありません。

引き続きよろしくお願いいたします。

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