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#8 「さくら」

4月初旬

桜は散り始めていた。
毎年毎年咲くのが早まっており、
入学式の日は散りきっているか、
新緑になりつつある状況で、
季節と月がずれている。
むしろ卒業式が「桜」なのでは?
と、変に教師感覚で考えていた。

今日も地元の大会の運営サポートと
週末の試合運営のサポートがあり、
心はもう散り散りな状態だった。
ただ救いだったのは、
彼女がチーム運営に対して、
色々話ししてくれていたことだ。

仕事で必要とされるのとはやはり違う。

いつも仕事の話を聞いて、
そのあと「いつ会える」かや、
「何が好き」かとかたわいのないやりとりだったが、
お互い救われている気がするやりとりだった。

凹んだピンポン球を熱湯に浸からせると、
ちゃんと元に戻る。
だけど、凹んだ時のヒビというか、
割れ目を完全に消せることはなかった。
だけど前向きな気持ちで俺は次の日の朝を迎えれていたのは事実。
彼女もそうであってほしいと切に願いつつ押し付けじゃないことを祈るばかり。

今日の試合は、
決勝トーナメント4試合だけだった。
少しのんびりで8:00集合だったが、
バカにされるのが嫌で7:45にはスタジアムの本部にいた。
「ゆーた!これ4階の放送ブースに持ってって!」
と大会統括補佐の宮本先生が言う。
『「YES」か「はい」』の体育会系。
「はい!よろこんで!」(どこかの居酒屋か?)笑
と、言ったものの段ボール5個分の資料を4階に運ぶというミッション…
台車は見当たらず、
2箱ずつ、3回に分けて階段で4階…4階まで、運ぶ羽目に…
いや、喜んで運ばせていただきましたが、
何か?

そうこうしているうちに、
いつもの先生方が本部に集まり、
グラウンドの設営やらしていた。

「ゆーたー、とーちゃん元気かー」
と、言ってきたのは、
父の教え子の大崎さんと、
父のこと大好きなだいすけさん。
「ゆーた!親父さんに車譲るように言っといて!」
ラグビーに関係ない話ばかり。
父を知っている人に会うと
父の偉大さをいつも感じる。

父は、
中学のラグビー部を初めて作った熱血教師。
本人はアイススケートの国体選手だったことをいつも自慢していた。
運動神経はよかったが、大学に入学(入部)して1週間で復帰ができないほどに体調を崩してしまい、
引退した。

推薦で大学に入ったが、顧問の監督が
「お前が教師になりたいのは知っている。良い指導者になりなさい」
と、言ってもらえ、退学せずに済んだらしい。
そこで、出会ったのがラグビーだった。
初めて大学の授業で体験した。
岩手の強豪校だったが、ラグビーをやる機会はなく、
1年生の時、皮のボールを磨くのに唾を提供してたとか。
オールドラガーマンあるあるらしい。
この「自己犠牲」と書いて「ラグビー」と読むくらいのこのスポーツを、
教師になったら教えたい!と思うようになり、
故郷から遠い関東の僻地にラグビー部を作ったのが始まり。
その教え子さんたちは後に父以上に偉大な指導者や、選手を輩出する。
父はいつもそれを嬉しそうに話すし、俺も嬉しかった。

彼女からLINEが来た。

『会って色んな話を聞きたいし、話ししたい』

そんな想いは日増しに強くなっていた。

最近巷は桜前線は北上し関東は下降気味というが、
心の桜は蕾が大きくなっていた気がした。

to be next story...

(あとがき)
本日は、特に進展のない内容でしたが、
楽しみにしていただければと思います。
引き続きよろしくお願い致します!

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