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2024年問題、シビアな医療の現状を「ひっくり返す」11年目のジョリーグッド

今回のインタビューでは、採用広報チームが、取締役COOの杉本さんにお話をうかがいます。

ドワンゴでのニコニコ動画をはじめ、ゲームチェンジャーとして数々のビジネスを大きく成長・変革させてきた杉本さん。ジョリーグッドにジョインして1年経った今、業界の課題にジョリーグッドとしてどう向き合い、何を仕掛けるのか語っていただきます。

「ひっくり返す」とは何を意味しているのか、今ジョリーグッドにジョインすると違う景色を見ることができる、というのはどんなことなのかがわかるインタビューとなりました。


杉本 誠司(スギモト セイジ)
  
大学卒業後、株式会社ウェザーニュースへ入社。2003年から株式会社ドワンゴに入社し新規事業を担当。2005年から、株式会社ニワンゴ代表取締役を務め、"ニコニコ動画"の運営、リアルイベントの"ニコニコ超会議"を手掛ける。その後、多くの新規事業開発に携わり、2023年4月からジョリーグッドに入社。


10年、シビアな医療の現状に打ち手を

——杉本さんがジョリーグッドの事業を通して見た、社会における医療・ヘルスケアの現状はどのようなものでしょうか。

報道でもよく話されるように、“2024年問題”が社会の中で起きています。物流・運送業界のドライバーの就労時間が制限され、人材不足によるニーズ増加と逆行している問題ですね。

同様のことが医療業界でも起き始めていて、就労時間が制限されるようになりました。少子高齢化社会で医療の必要な場面が増えていく一方、医療は命に関わる場面も多く、患者さんが目の前にいるのに「もう働けません」とは言えない。ではどうするのか?かなりシビアな状況が差し迫ってきています。

——根本的に、なり手が不足しているという課題もありますよね。ジョリーグッドが取り組む打ち手はどのようなものでしょうか。

既に事業として推進していること、プロジェクトが始動したばかりのものも含め、大きく3点あると考えています。


  1. IT化、効率化

  2. タスクシフト/シェア

  3. 疾病の予防


まず1点目の「IT化、効率化」です。
これまで人間がやっていたことを機械に任せられるシステムや仕組みを用いて、業務を合理的・効率的に回し、現状の医療業界が持つリソースで賄える世界を実現します。

単純に生産性を上げて多くの量をこなせる体制を築くということだけではなく、テクノロジーが作業を代替してできた余地は、生身の人間でしかできない仕事に配分することで、総合的に医療の質が上がることに貢献します。

——単純作業を機械化するに留めず、人の仕事の最大化も図るわけですね。

一方で、業界の中だけで合理化を図るのでは根本的な解決には至りにくいと考えています。それが2点目の「タスクシフト/シェア」についての話です。タスクシフト/シェアというのは医師が担う業務の一部を、ほかの職種へ移管または共同化することを指します。

例えば、注射や傷の手当などの医療行為は医師のみに許された行為です。それを准看護師、救命救急士などの医療従事者まで広げる動きがあります。この動きは今後さらに広がり、一般の方々や、これを読んでいるあなたを含む、私達もです。

もちろん難易度の高い施術を行うわけではなく、マニュアル化して誰でもできるような処置や緊急時の初期対応などの範囲です。医療の門戸を広げるのも、サービスやシステムの役割の一部と考えています。

——医療を身近に感じ、あらゆる人が参加するのですね。

私たちがもっとも重要に捉え、当事者意識を持たなくてはならないのが、3点目の「予防」です。そもそも病気やケガを防げば、医療行為の必要数は減る、という逆説的な理論です。

ケガを減らす環境づくりや学び、病気にならない生活習慣を身に付けましょう、ということなのですが、実はこれに有効なのが、テクノロジーなんです。

例えば『ポケモンスリープ』では、みんな意識的に寝るようになりましたよね。眠くない人も。他にもウェアラブルなガジェットが増え、自身のヘルスケアの管理がしやすくなりました。これで、国民全体が楽しみながら健康度を上げることで、医師の必要な場面が減ることにつながります。

※ポケモンスリープ……枕元にスマホを置いて睡眠をとると、ユーザーの眠りを計測するアプリ。眠れば眠るほど経験値を得たり、ポケモンがゲットできる、収集と育成が楽しめるゲーム。

——テクノロジーで最適化を図る、タスクシフトをする、そもそも防ぐの3つの観点ですね。ここには既にジョリーグッドが事業を通して挑んでいるものもあると思います。

ジョリーグッドは10周年を迎えましたが、医療に対してあらゆるチャレンジをしてきました。ここ数年は、医療のアウトサイドの私達だからこそ、貢献できることは何か探り続けていました。

特にこの半年間は、キーワードを「日本の医療」と広げ、変革をメッセージにして打ち出すのがジョリーグッドとしてできることなのではと考え、大きなプロジェクトもスタートしています。

ひらけ、医療。プロジェクトサイト
https://jollygood.co.jp/hirake-iryou

前述した打ち手のうち、特にタスクシフトと予防を啓発することを目指して、まずはとじたイメージのある医療の門戸をひらき、オープンにしていこうというものです。医療に、願いと希望を込めて向き合うプロジェクトです。

「医師」の課題から「医療」の課題解決へ

——これまでジョリーグッドは、医師の教育をVRで効率化する「JOLLYGOOD+」や、メンタルヘルスケアのトレーニングが可能な「デジタルヘルスVR」など、医療現場にあらゆるソリューションを提供して来ました。
『医療そのもの』を扱うのは、大きな変化と感じます。

そうですね、社内では「医師の課題解決」から「医療の課題解決」へ、と話しています。

我々の当初のテーマは新しく高度な医療テクニックの探求や身近な医療との向き合いで、医師の方が探求していることへのソリューションを多く作り出してきました。

これも重要で貢献度の高いものなのですが、「医師」ではなく「医療業界全体」と俯瞰して考えた時に、より経済合理性や効率性が強化されることで、医療の状況そのものが変化すると考えました。

——課題や解決の対象がよりマクロになるのですね。

そうです。これまでは「医師の業務効率化」を考えていたところが、「病院や大学のリソースマネジメント」がサービスの成果テーマになるイメージです。

例えば「医師Aの研修医に向けた指導・スキル伝授をサポート」するのではなく、病院が抱える「スキルによるばらつきという課題」を、システムで標準化する、デジタルデバイスで教育機会を均等化する仕組みを取り入れる、というものですね。

——視点や視座が「医師」から「医療業界」へ動いているのが分かります。

こうして効率化が推進しITが普及すると「仕事が奪われる」と考える人が一定いますが、逆だと思っています。

空いた時間は医師だからこそできる仕事に充ててもらうのはもちろんですが、例えば、前述したようなヘルスケアサービスやウェアラブル端末は、こうした健康管理システムは、医師の監修やメソッドがないと成立しません。こうした民間サービスを育むことに尽力いただくなども選択しやすくなりますよね。

医療従事者の方々全体のスキルが広がり、新しい仕事や働き方の可能性を広げられると思っています。

——医療従事者のキャリアをひらくことにもつながるわけですね。

そうなんです。
これまでは治療のエキスパートや医科大学の教授、病院内での出世というキャリアがスタンダードだったところから、ITヘルスケアビジネスの再先端で医院マネジメント、役員や経営者、という人が出てくるんです。そういう時代になって欲しいし、そういうことをジョリーグッドとぜひとも、やってほしいんです。

——これまで伺った話を、ジョリーグッドはすでに医療従事者の方々とディスカッションをはじめていると思うのですが、どのような反応があるのでしょうか?

とはいえ医療業界は保守的な面もあるので、丁寧に説明を進めて行く必要はあると思っています。ですが、感度の高い方はビビッドに反応し始めています。

真面目に説き理解いただくというより、この機会を1つの可能性としてエンジョイしながら気づきを感じてもらえるといいなと。

——エンジョイ!楽しむ要素が入るのは、ジョリーグッドらしさですね。

先日、ジョリーグッドでは「JG GROOVE」というイベントを開催しました。その中で医師と社員でビジネスアイデアのハッカソンを行ったんです。

医師の皆さん、意欲的に取り組んでくださって、TEDさながらのプレゼンテーションをされる方もいらっしゃいました。後日、別の先生から参加したいとの希望の声を頂いたり、SNSでビジネスサイドの方と交流が生まれていたり。

キャリアの広がりはもちろんですが、ビジネスとしての成功やモチベーションの高まり、やりがい、色々な可能性を追求して欲しいと思います。様々な活躍の場があることに気付いていただく機会になったのではと思います。

いつの世もアウトサイダーがテクノロジーで変革をもたらす

——杉本さんの前回のインタビューでは、「課題を解決するのではなく、課題を認識することが重要」というお話をされていました。今のジョリーグッドはまさに、提起する側となっていますね。

そうですね、これもジョリーグッドがアウトサイドだからできるところも多分にありますが、俯瞰して課題を提起し、解決まで導き伴走する、ということをしています。

我々がニーズそのものを追い求めてしまうと、顕在化したニーズにしか当たらず競合も多いですし、競争原理も働きやすい。

そこで、課題提起・課題解決がパッケージングされ、かつクライアントに寄り添っていくと、ジョリーグッドのユニーク性と優位性が健全に保たれるのではと考えています。

——「ひらけ、医療。」のような課題提起を、イチ企業であるジョリーグッドが仕掛け、社会と共創する意義のひとつがまさに今のお話ですね。

そうですね。過去を見ると、デジタルやテクノロジーが変革をもたらした業界は少なくありません。例えば、出版や流通、音楽業界もそうですね。

テクノロジーでマーケットは活性化し、改革されます。この仕掛け人はどの業界を見ても外から来た人がプロデュースして変革をもたらしています。

——置き換えて、ジョリーグッドでも同じことを起こせる、と思えてくるお話です。

はい、そう考えています。
当然のことですが、中の人だと気づかないことはあまりにも多いです。医療業界は数百年の歴史があり、慣習化されたものを超えていくのは難易度が高いです。

ですが、医療従事者の不足をはじめ、停滞しているムードはあるはずですし、顕在化している課題もあります。打破するためには自分たち以外の人の手を借りたり、スクラップアンドビルドのような、変革も必要だと考えている人も少なくないです。

私達のような外部から来たしがらみのない人間だからこそできることがある、ひっくり返せるはず、と強く思っています。

——杉本さんはご経歴、実績ともに各業界でゲームチェンジャーとして活躍されていましたよね。業界を「ひっくり返す」のは、つまりどういうことをしているのでしょうか?

一度慣習をひっくり返し、新しいゲームを創造するには、まず、ゲームのルールをちゃんと理解することが大事だと思っています。つまり、法律を理解すること。

「やってはいけないこと」と「やってはいけなさそうだけど、そう明記されていないこと」つまりグレーゾーンが分かったり、利用の仕方が分かったりするんですよね。ゲームメーカーは時に、慣習を乗り越えるという意味で、タブーを乗り越える必要があります。

ルールは守っている、けど慣習的に手を出されなかったゾーンを見つけ出して戦っていく。スポーツが最たるもので、ルールを知っている人が強いんですよ。うまいと言われてる人はルールをよく知っています。

ひっくり返した張本人にしか見られない景色がある

——会社としてスコープを広げた今、社内はどんな状態なのでしょうか?

今、私達はメンバーみんなで視座を上げて、見えるものが変わってきたばかりのところです。富士山に登ってはじめて、山頂って実はへこんでいるんだ!というように。

——下から見ると山頂は尖っていますよね。

はい、山頂にある火口は登りきった人にしか見られません。まあ、まだ見た「だけ」の状態ではありますが。けど話を聞くだけと実際に見ているのとではリアリティがまったく違います。

——今のタイミングでジョリーグッドにジョインするのは、どんな面白さがあるでしょうか?

まず、「既存の価値観をひっくり返す」ことができるような人材が活躍できる状態です。ひっくり返すような大がかりなことでも、臆せずチャレンジをしてみようというマインドを持っていらっしゃる方にチャンスがありますし、前述した富士山のような「違う景色」を一緒に見に行こう、というタイミングです。

——杉本さんがジョリーグッドで仕事をしていて、楽しいと感じるのはどんな瞬間でしょうか?

メンバーがすごく素直で真面目で可能性に溢れているので、もっと色々なことができると感じています。私が突飛なことを言っても、面白い、感銘を受けた、と共鳴してくれる。

繰り返しになりますが、医療業界は保守的です。これまでの既存の概念を変えることは面白そうではあるものの、やはり難しいのかと懸念もしていたのですが、医師の方々と話をしてみると、変えていきたいと考えていおられる方も数多くいるし、新しいことに期待をされている。

これは、時代の節目を共に作るパートナーが多数いるということです。これはものすごくやりがいがあります。一緒にチャレンジしてくれる人をまだまだ求めています。

(取材・文 橋尾 日登美)