春野
あのひとが歌う。 するとわたしはたちまち竪琴になる。 身体じゅうがかき鳴らされて わたしは…
もう一度だけお前を この手で 抱きしめたい 彼は予告…
私たちが見ているものは薄い長い影 そこに原則人の姿は見えない 一人だけ さらに影のない女が…
夜のО駅の売店にはいつものように見慣れたチェルシーがあった。街角のコンビニではもう久し…
入学式だった 夢の中で黄色の靴を貸してくれたハンサムな男 正門だった 男は門に凭れ掛かって…
うららかな日々が続く春。ある朝、公雄はいつものように散歩に勤しんでいた。これといって趣…
歩き始めた 走り始めた 歩く(日)は走(zou3)(中) 歩く(日)は走(zou3)(中) 走る(日)…
―ぷ、ぷ、ぷ、ぷーん 十時の時報が鳴りました。 山下夫妻は朝のキスをかわしました。マ…
懐かしい記憶とともに 犬は微睡んでいる 日曜日の夕べ ご主人は彼をつれて岸辺を散歩した 岸…
蟻が十 蟻が十 ありがとうの数が 増えるたび 世界はそれだけ笑顔が増える 蟻が十 蟻が十 蟻…
砂浜の上での鬼ごっこ 踏みしめた砂の感触心地よくて 全力で走ってはついに孤独になる 「なん…
本屋を出た時のことだ。 急に目の前の駐輪場に滑り込んできた自転車があった。 「順子さん!」…
「私が私であるのは私が女だから」と貴志は言った。
この地において 犬が空を舞うなんて当たり前 だから赦してやってほしいと 自治会長さんの顔を…
酷寒の朝 棄てられた犬は 飼い主との暖かい記憶のなか まどろんでいる 身は保健所にあり 明日…
まちいくひと、みんなきれい あなた、きれい。わたし、きれい び、は、みなにひとしく、わけ…