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【詩】旧友

もう一度だけお前を
この手で
抱きしめたい                   

彼は予告のうちに死んだ
選ぶことは叶わなかった
ここに来た時点で、彼の命数は尽きていたのだ
おそらくはわかっていた
そのことが何よりも哀しい

動かない手指と足指
張り裂く声に
届かぬナースコール

不幸にして死の直前まで彼の意識は明瞭であった
だから私は今、この一文を記している

突然、彼は旅だった
遠い遠い空へ続く 彼の微笑み

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