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【詩】夢中さ君に

入学式だった
夢の中で黄色の靴を貸してくれたハンサムな男
正門だった
男は門に凭れ掛かって気障に笑っている
何も知らぬ土地にて、初めての教室へと向かう

薄れ行く記憶、「軽音楽同好会」と
男は会話のなかで幾度か触れている
すでに意識は覚醒へと向かう
なんとかこの言葉だけを銘記した

私はこの時、跳ね起きる
深夜二時、私の意識を覚醒せしめた
「ブラスバンド同好会」とはいったい何か?
どう考えても
その大学のサークル名のようだった

私はうろうろと部屋を探す
眠っている彼女の足を踏みつつ
机へと向かう
意識が朦朧としているなか、抽斗を開ける
そのなかには鮮やかなイエロー色
古い手帳があった
無我夢中でめくることにする
「ブラスバンド同好会」の代表者名と
活動場所が載せてある

この男だった
そう、痛切に願い、べッドで眠りにつく

私は再び、門に辿り着く
そこはこのサークルの集まる場所だった
私は嬉しくて踵を返す
果たして大学などもうどうでもよくなった
合格証書を破り捨てて
私は大好きな先輩宛てに書き始める
クラスに向かう足を止めて書き続ける
新しい詞だった。
ようやく逢うことができる

男はギターを抱えていた
門を背にして歌っているようだった
新入生たちが色男に注目している
私はゆっくり彼に近づいていく

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