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019 生かされている私がここに居る その2

これまでに四度、もしかしたら死んでいたかもという経験をしている。

一度目は2歳の冬 溺れる
二度目は17歳の夏 交通事故
三度目は32歳の冬 入院中の出来事
四度目は37歳の夏 救急車騒ぎ

一度目と三度目はホントに危なかった
(書いてみて気が付いたけど、“2の冬”って…)

三度目

入院中の私は、毎日泣いてばかりいた。
時折窓越しに空を眺める以外は……
一生分、泣いたのかもしれないな
心が、壊れかけていたのかもしれない……
いや、壊れていた

泣いて泣いて……ぼ〜〜っとして
毎日、こんな感じで、何を考えるでもなく、活字を見るわけでもなく、空を見て、目を閉じての繰り返しだった

お腹には元気な子がいた
4度目の  嬉しい妊娠
もう8ヶ月
しょっちゅうお腹を蹴られていたのに……

「一日も早く出さなくちゃいけない」ってdoctorは言う

気持ちが追いつかない
1週間、毎日そのための処置が続く
まるで、地獄だ
39度程の熱がつづく

お腹の子供と別個になって翌日
仰向けに寝ていた私は、そのまま、ひゅ〜〜〜〜って、どこまでもどこまでも、そう、地中に吸いこまれてるんじゃないかって感じながら、落ちていく感覚におそわれた。
ものすごいスピードで落ちていく。
それに真っ暗だ。
あれっ、昼なのになんで暗いのって思った。
目を開けていたのか閉じていたのかは覚えていないけど、とにかく真っ暗。
真っ暗な底なし穴に落ちていく感覚
すごく長い時間に感じた。
ちょっとだけ、怖いなっと感じた。

そのあと、フワッっと身体が軽くなった。
もう、落ちていく感じは無くなった。
そうしたら周りが明るくなった。きれいな景色が見える。お花がたくさんだし向こうにはきれいな川もある。
落ちていく感覚が無くなったから安心した。と同時に、あれっ、病院に居るはずなのにな、ヘンなの〜って思った。
その場(ってどこなんだろう)に立ち、景色にみとれて、うっとりしている自分。
川の向こう側には誰か居る。何人も。みんな知らない人だ。
ただ、川に近付いてもいいのかとボンヤリ考えていたのも覚えている。


どれくらいの時間、眺めていたんだろう。

「もう、大丈夫」って女の人の声が聞こえた。
うっすらと目を開けたんだろうな
私の周りには5〜6人、もっと居たかも。白衣を着た人がたくさん居て私を囲んでいた。
男性の声も聞こえたけど、なんと言ったのかは覚えていない。白衣の男性3人は直ぐに部屋を出て、看護師さん数人が残った。
私はそのまま、また意識が無くなった。

次に目を覚ましたときには、看護師さん一人が居た。ずっと付いててくれたのかもしれない。看護師さんと会話したのか記憶に無いけれど、その後は、真っ暗な穴に落ちていく感覚はなかった
私の周りにある、いくつかの機器は、この後に部屋から出された

単なる急激な血圧低下だったのかも
だけどdoctorからは何も聞かされなかった


私がみたのは、いわゆる《お花畑》と《三途の川》だったのかなーと、随分あとになって思った。何ヶ月も経って、やっと自分の事を振り返ることができるようになったのかもしれない。


そんな体験をした、凡そ一週間後に祖母が亡くなった。
退院して直ぐの事で体調が戻っていたわけでは無いけれど、私もみんなと一緒に祖母を見送った。その日の晩、祖母が夢に出てきてくれた。
祖母の隣には小さな子が居て、祖母がその子の手を引いて向こうに歩いていく夢。
その子が、数日前まで私の中で生きていた子だと思いたい。
きっと!そうだ
ちゃんと連れて行ってもらえて安堵した、その気持ちは鮮明に覚えている。

30年以上経った今でも、
まるで昨日のことのようだ


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