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【覚書】マーク・フォースター監督『プーと大人になった僕』(Christopher Robin, 2018)

 セピア色の森にプーやティガー、イーヨーらが登場するだけで号泣し、その後、「見えたものを言うゲーム」に爆笑す。観客全員が泣いたり笑ったりで大忙し。動物、あるいはそれをかたどったぬいぐるみは、近代的人間のノスタルジーを喚起する存在としてある。

 「映画は、動物たちが人間の文明の中心から後退しはじめた時期に発明された。その瞬間から、動物たちは感傷的存在になりはじめたのだ―別の時代のやさしい記念、現代化による犠牲を慰めるものに。人間が動物と別れて暮らすようになると、動物に愛情を抱くことは、人間であることの標識になった」(スーザン・オーリアン 『リンチンチン物語―映画スターになった犬』、早川書房、2012年、 98-99頁)。

 「動物の複製が中産階級の子供の装飾に常に使われるようになるのは19世紀になってからであり、ディズニーのように巨大な宣伝と販売網によって全ての子供の玩具となるのは今世紀になってからであった。(中略)揺り木馬は19世紀的な発明であった。/動物の玩具を本物らしく見せるという新しい要求は製造方法にも変革をもたらした。(中略)同じ頃、子供がベッドに伴うような―熊や虎、ウサギなどの―動物の縫いぐるみが現れる。本物に似せた動物の玩具の製造は、多かれ少なかれ、公園の動物園の設立と結びついているのである」(ジョン・バージャー 「なぜ動物を観るのか?―ジル・エローに捧ぐ」『見るということ』、ちくま学芸文庫、 32-26頁)。

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