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2024年のサマー・リーディング・リスト

読書の夏がやってくる!

 夏といえば読書!という感覚が身についたのはどうしてだろう?小学校の夏休みに読書感想文の課題が出たり、学校がないので図書館に通い詰めたりしていたせいだろうか。学校図書館では夏休みを見据えた長期貸出が始まり、書店を訪れれば夏の推薦図書や課題図書がきれいに並べられ、いくつもの出版社が競って夏の文庫本フェアを盛り上げる…。本のあるところに行けばどこでも「夏だし、たくさん読みましょう」という雰囲気が漂っていて、当たり前のこととして受け止めてきたのかもしれない。季節ごとに読書を推奨する環境が当たり前のようにあるのってかなり嬉しいことで、今後も引き続き盛り上がっていくといいなと願っている。特に最近のトレンドとして、読書を一冊の中の世界のみに留めず、イベントや他者との繋がりを含む総合的な体験として求める動きが活発なので、季節イベントと読書の相性はますます良くなってきているのかも。

 私は特に集英社文庫・角川文庫・新潮文庫が毎年行う夏の文庫本フェアのお祭り感が好きで、特典のしおりやブックバンドなどとともに楽しんでいる。特に新潮文庫のキュンタしおりは涼しげなデザインが多くて好き。

 英語圏の出版社でいうと、毎年Penguinやfaberがピックアップしたサマーリーディングのおすすめリストが外せない。どういう本が選ばれるか、出版社ごとに個性がしっかり出るので見ていて楽しい。


サマー・リーディング・リスト2024

 今年は大学最後の夏休みということで、できるだけ多く読書の時間を取ろうと思っている。できれば大学図書館所蔵のものを多く読めるといいな。以下のリーディング・リストは、とりあえず読みたくなったものをポイポイ入れておいて、全部読まなくてもいっか〜くらいの気楽さで作っている。欲望のままに作るのがコツ。

  • Great Expectation by Charles Dickens

 夏はクラシックが読みたくなる。少年のcoming-of-ageなんていかにも夏休みのノスタルジーと共に読みたい一冊だろう。これについてはPenguinのペーパーバックを購入していたので、積読消化になる予定。

  • Do androids dreams of electric sheep? by Philip K. Dick

 これも20世紀の名作、Philip K. Dickの代表作といっていいクラシック。高校生の時、要約版?のようなリーダーズエディションを英語の課題として読んだのだけれど、要約がいき過ぎていていまいち楽しめなかった。ならば原文を読めばよかろう、ということでリスト入り。映画Blade Runnerの原作になったためなのか、なんだか一部のエディションは原題よりもでっかくBLADE RUNNERって書いてある。私は原題の方がカッコいいと思うのだけれど…。大学図書館に所蔵されているようなので、借りて読みたい。

  • Alias Grace by Margaret Atwood

 私の中のMargaret Atwoodのブームはまだまだ終わらない。これまでに読んだ彼女の長編がどれも現代または近未来のSF要素が強いものだったので、19世紀を舞台にした作品と聞いて読んでみたくなった。これも大学図書館に所蔵あり。

  • Nomadland by Jessica Bruder

 高齢の非正規労働者たちの生活を取材した一冊。非常に話題になり、2020年には映像化を果たした。「ノマド」という言葉は、日本においてはフルリモートの仕事をしたりFIREしたりして、定住せずに自由に暮らすちょっぴりラグジュアリーな暮らしを指して使われることが多いけど、私にはこの本のイメージがどうしても強い。こういうジャーナリズムの本はもっと多く読みたいな…。現在自宅の本棚にてペーパーバックを積読中。

  • Africa is not a country by Dipo Faloyin

 地理的にも文化的にも遠い位置に住む日本人にはかなりStrikingなタイトルではないかと思う。途中まで読んだけれど、著者はナイジェリアのラゴス出身の人で、初めの章ではナイジェリア最大の都市の文化を、生活を、通な食事を、事細かに教えてくれる。ものすごく上手い導入。そもそもこの本が書かれた経緯には植民地支配と他民族の否定の歴史があるので、そこに人が、文化が、生活があることを対等に認めなければ、話は始まらないのだ。民族の存在そのものを否定する侵略戦争は日本も関係する歴史である。今こそ読みたい一冊。

  • Men Without Women by Ernest Hemingway

 先日のThe New Yorkerに掲載された村上春樹さんの短編"Kaho"を読んだ時、同時掲載された著者インタビューで話題に上がった一冊。村上春樹さんの「女のいない男たち」は知っていたけれど、オマージュ元を読んだことがないことに気付いたためリスト入り。"Kaho"についてはインタビュアーが「これは『男のいない女たち』のシリーズになるのでしょうか?」と質問していたのが興味深かった。呪術廻戦27巻を読むには予めハジケリストになっておいた方がいいのと同じですね。違うか

  • Nine Stories by J. D. Salinger

 なぜか分からないけど、長期休みにはサリンジャーを読みたくなる。初めて読んだThe Catcher in the Ryeの、学校から抜け出すようなイメージが強いからだろうか。Franny and Zooeyを初めて読んだのも長期休みだったな。どうも私の頭の中では、長期休みの開放感や非日常感とサリンジャーの甘美な文体とが、一緒の回路に組み込まれてしまったらしい。

  • The Seven Moons of Maali Almeida by Shehan Karunatilaka

 2022年のthe Booker Prize受賞作。最近スリランカ出身の著者の本を読む機会が多い。少し前に東京駅前の丸善本店に寄ったとき、最上階の洋書フロアで興奮しすぎて購入した。店頭で欲しい本を手に取れるってなんて嬉しいんだろう。
 関係ないのだけれど、東北では奥羽山脈より西の本屋には洋書が流入しないという謎の現象を確認している(秋田全域、酒田、弘前では無し。盛岡、仙台、福島、郡山、茨城全域ではあり)。いやいやここにはあるよ、などの情報があればご一報ください。

  • The Zone of Interest by Martin Amis

 2023年の映画化でとても話題になった作品。こんな時代ならば、戦争を背景とした作品はできるだけ読みたいなと思っていたのでリスト入り。電子書籍で購入したので夏の間に読む予定。

 今後も気になるものがあったら追加するかも。サマーリーディングが終わると読書の秋がやって来るし、年末年始のお休みは読書にピッタリだし、なんだか読書のキャンペーンは一年中やっている気もしてきた。何もないのは春くらいか。

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