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バジル味のスパゲッティ

2023 5/4(木)

バジル味のスパゲッティが好きである。
元々、スパゲッティのソースにこだわりはなく、ミートかナポリタンであればいいと思っていたのだが、今から10年ほど前、俺は神戸の実家に帰省した時に、バジルというのものに衝撃を受けた。
帰省すると、おかんといつも行くスパゲッティ屋がある。
ハーバーランドの煉瓦倉庫にある、オールドファクトリーという店だ。
ある時、「バジルソースのスパゲッティ」という聞き慣れないメニューを見て、面白そうだから、おかんと頼んでみた。
面白そうだというのは、庶民の末端にいるおかんと俺は、バジルというものを、よく知らなかったからである。
なんやねんバジルって?
メニューの写真を見ると、何やら緑色の液体がスパゲッティにかかっており、そのビジュアルは、SF映画のようであった。
近未来の不思議な食べ物のように見えたそれは、芸人にとって、食べるとネタになるものというイメージが出来た為、挑戦してみた。
「お待たせしました、ランチセットのバジルです」
学生風の女性店員が、目の前に、奇妙な色のスパゲッティを運んできた。
「ソイレントグリーンみたいやな」
見た瞬間、おかんが言った。
ソイレントグリーンとは、懐かしのSFスリラー映画である。
食糧難の未来に、人類は、ソイレントグリーンという謎の食物を食べて生活しているのだが、実は、その原料は・・・
という、始めからオチが読めそうな物語である。
だが、俺が観たのは子供の頃だったので、随分と恐ろしかった。
「確かにあの映画みたいやな、ということはこの材料は・・・」
俺が言いかけると、
「あかん、やめて~食べられんようになるやん!」
とおかんは、フォークでクルクルするのを、一瞬、躊躇したものの、すぐに、「うわ~ええ匂いやなぁ」とズルズル口に運んだ。
「うん、まぁまぁかな、なかなかええわ」
おかんは滅多に飲食店の味を褒めることがないので、なかなかええわ、ということは、俺にとっては、だいぶええわ、ということになるのだろう。
少なくとも、ソイレントグリーンではないと安心した俺は、ズルズルっと、バジルを初体験した。
「うまい!これ好きな味や!」
「そうか、ほな、私の分も、ちょっと分けたろ」
一口食べて、いきなりすぐのバジルの替え玉。
俺は、これを食べる為だけに実家に帰省してもいいと思った。
そんなバジル体験以降、一人暮らしの部屋でもスパゲッティはバジルに限ると思い、湯煎で作れるパスタソースを探しに行ったのだが、スーパーで売っているのは、怪しげな瓶に入っているバジルしかなく、それこそ、ソイレントグリーンみたいで買う勇気がなかった。
しかし、ついに先日、これなら安心だというバジルをスーパーで見つけた。
ピエトロである。
あのドレッシングなどで有名なピエトロの「おうちパスタ・バジル」380円である。
ネーミングとパッケージデザインもよく、俺は迷わずレジへ持って行った。
そして、帰宅して、初めてバジルスパゲッティを作った。
神戸で食べた味と同じだった。
あまりのうまさに、二日連続で食べ、なくなってしまったソースを、また、追加で買いに行った。
 
 
 
 

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