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昭和の身体測定はパンツ一丁

2022 9/11(日)
 
健康診査で、身長と体重を測った。
この背筋をピンと伸ばす感じ、懐かしい感覚だ。一体、いつ以来だろう。
ふと、小学校の身体測定の時に、パンツ一丁で体育館に集められたのを思い出した。
なぜ、パンツ一丁だったのだろう。昭和の風習はよく分からない。
そのころのギャグで「北海道の身体測定は寒そうだ」というのがあった。
じゃあ、沖縄はどうなんだという話になって、俺は友達に
「暑いから、フルチンやで」
と言ったら爆笑してくれた。
体育館に響き渡った友達の笑い声が、まだ耳に残っている。
「はい、では、次はレントゲン撮りますよ」
70歳位の看護師さんの声が聞こえて、令和四年の現在に意識が戻された。
「じゃあ、レントゲン室に入って下さいねぇ」
入ると、薄暗い部屋の中は映画のセットのようだった。
白いシーツがかかっている年代物のベッドが一台ポツンとある。
その近くに大きなレントゲンの機械。こちらも随分と古いように見える。
ひょっとしたら、俺はさっき身長を測った時に本当に昭和にタイムスリップ
してしまったんじゃないのか。
だが、看護師さんが若返ってないので今は間違いなく令和である。
「はい、そこに立って下さい、服をまくりあげて、腕を、こう、この位置に、ここです、こう、この位置に」
70歳位の看護師さんに細かい姿勢を指示されるのだが、この位置というのがどの位置なのかよく分からない。腕がつりそうになる。
「ここ、これですよ、今、この位置、動かさないで、ここよ」
一体、何が正解なのか分からぬまま、ようやく決まった位置をキープする。
「では撮影します、あっ、ちょっと待っててね」
何か用なのだろうか、急にいなくなってしまった。
ちょっとって、どの位なんだ。既に俺の腕はつりそうなんだ。
早く戻って来てくれないか。
えっ、いや、もう1分は経過したぞ。腕がプルプルしてきた。
1分30秒、2分、3分。絶対、もう3分は越えているぞ。
俺、忘れられているんじゃないのか。きっとそうだ、明らかにおかしい。
プルプル。腕が限界だ。もう声を出して助けを呼ぼうか。プルプル。
「はい、すみませんね、撮ります」
戻って来た、んっ、あれっ?さっきの看護師さんじゃない、若い看護師さんがやって来た。レントゲン技師か。
「では、深呼吸して息を止めて下さいね、あっ、腕の位置、そこじゃないですよ」
えー!ここじゃないのか、何の為に俺はプルプルを我慢していたんだ。
「いきますよ、はい」
あっという間に撮影は終わった。だが、ひとり残された時間が、不気味な位に長く感じた為、レントゲン室を出た瞬間、もの凄い開放感に包まれた。
「あとは血圧測って、血を採ったら健康診査はおしまい」
再び、70歳位の看護師さんに案内された。一体、どこに行ってたんですか。でも、なんかまた会えて良かった。
「二週間たったら結果が出るからね、はい、じゃあ腕を出して下さい」
俺はホッとして、まだちょっとだけプルプルしている腕を前に出した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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