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怪我2〜「伝える」の真髄

こんにちは。昂平です。今回は以前に書いた第1弾の「怪我」という記事の続きから…

(第一弾はこちら↓)


18〜23歳。某バレエ期

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術後は足が腫れたり硬かったりという問題はあったものの概ね順調に回復しておよそ1年で本格復帰しました。

怪我のメリットのひとつとして、筋肉をつけ直し、矯正できるという事が挙げられると思います。

私も怪我の原因を突き詰めて出来る限り落ちた筋肉に対して新しく、正しく筋肉をつけるように心がけましたが、やはり自力では上手くいかなかったというのが率直な感想です。

これはそもそもの

バレエの教え方

も大きく関わって来る大変重要なポイントだと思います。

怪我に関わらず、何故そうなったのか何故できないのか、何故そう見えるのか。

自分の体の骨格と筋肉の動き方、そして脳の指令の出し方をしっかりと理解しない限りは何万回繰り返しても改善はあり得ません。

しかしそれがとても難しいのです。

若く、勢いだけでなんでもやっていた私は凄まじい「量」はこなしていましたが、質は…😅

どうりで上達しないわけです。笑

この時期は日本の某バレエ団にて踊っていましたが、手術の後遺症や昔からの捻挫癖は相変わらずで週に何度も専属の治療院に通って騙し騙し踊っていました。初めは、

「これだけハードに踊っているんだから痛くなって当たり前」

くらいに思っていましたが、次第に考えは変わりやっと自分の頭で色々と考えられるようになった頃(21歳頃)

その某バレエ団で主役を張っていたダンサーから

「お前、体わかってなさすぎ。研究しろ」

と言われました😂

(勘の良いファンの方なら誰かわかるかもしれませんね笑)

それ以降その偉大なダンサーは私にたくさんの時間を割いて、立ち方、足の出し方、開き方等を一緒に考えてくれました。体のスペシャリストも紹介してくださり、私にとってはかけがえのない財産となりました。

この頃から自分の考え方や向き合い方が大きく変わりました。

つまり「何がどう間違っているのか」がわかるようになったのです。

しかしまだこの段階ではどう直すのかまでは出来ていませんでしたが😅

遅ればせながら私にとっては大きな大きな進歩だったと言えると思います。

まだペーペーで下っ端な私に注目して、それに気付かせてくれたその恩人には本当に感謝しています。その方自身も苦労して研究してきたからこそ、色々な引き出しがあり、沢山の事を伝えられ、教える事ができた。(時には叩きながら笑)

素晴らしい「教師」です。

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教えるという事

さて教えるとはどういう事でしょう。

他人が自分に、或いは自分が自分に。

いずれにしても問題解決に導く指針を提示する事、或いは問題を防ぐべく導く事ではないかと私は考えます。

例えば真っ直ぐ上に飛べないという問題がある場合。直すのに頼りになるのは自分の感覚と、これまで伝えられてきた注意。

それらを織り交ぜて答えを導き出すよう努力すると思います。

「しっかりお腹を引き上げて」

「床をまっすぐ押して」

「顔をはっきりつけて」

「内腿を使って」

等々…

これらを順々に確かめていく中でより改善が見られた注意をピックアップしていくわけですが、正直あまり有益な方法とは言えません。

なぜなら!

その注意は概ね一般論であり、多くの人に向けられて発せられた基本的なアドバイスである上に、どの動きに対して言われたアドバイスかも分からないからです。そしてなにより1番は、

私の身体を理解した上でのアドバイスではない

という事でしょう。

言わばこれはiPhoneにGALAXYの充電器を挿して

「充電できない!」

と言っているも同然です。

いつも個々人の問題に沿った最適解を出してあげる必要があります。

それをするのが何年も長い間生徒の身体を見て指導をし、育ててきた教師の役目、責任であると考えます。

生徒に知識や経験が乏しい時は教師を信じる他ありませんからね。

勿論全てとは言いません。まずは本人が全力で理解するよう努めなければなりませんし、場合によっては体のスペシャリストを訪ねる事も大切です。

ですが私がこれまで日本とロシア、ヨーロッパで見てきた様々な光景から考察するにやはり1番大切なのはその人に合った体の使い方を早いうちに教師(或いは大変困難ではあるが早いうちに本人)が見つける事。また教師がそれを助ける事にあると思います。

バレエに関して言えば初めから重心がまっすぐ、或いはやや親指に乗っていて、足の指先が揃っていたり、骨盤の可動域が広く真っ直ぐだったりと、恵まれたダンサーには一般的な注意だけをしてもかなりのレベルまでは出来るようになります。

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(↑世界から選りすぐりの才能が集まるロシア国立ワガノワバレエ学校。いわゆる、バレエの言葉が通じる人達。共通の注意が共通の言語として通じるので上達も早い。)

しかしそうではないダンサーや真逆のダンサーに対して同じ注意をしていたらどうでしょうか?うまくいくと思いますか?

私の場合は膝下が内向き、小指重心のO脚、膝と爪先の可動域は狭く、骨盤も歪んでいる上に骨盤が横に広いです。私には共通語が通じない、分からないも同然なんです。適した方法を見つけないと、見ている人にも自分にとっても快適なバレエを踊る事は出来ません。


骨格や素質により素敵に踊る事が出来ない事などほぼあり得ないと思っています。

目指す踊り、ゴールは同じところでもそこへ到達する、させる為には伝え方を工夫しなくてはなりません。

プロセスは違うんです。

だからこそ、理解しない事には解決は出来ないと考えるのです。


バレエは積み木

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バレエは積み木に似ています。

土台をしっかり作ってそこに少しづつそれぞれが持つ形の木を積んでいくような作業です。初めから広く平らな積み易い木を持っている人もいればイビツな形の木を持っている人もいます。

同じように積んでいたら一方は崩れてしまうでしょう。しかし当の本人にしたら一生懸命倒れないように、もらったアドバイスを頼りに積み上げようとしているんです。

どんなに自分では真っ直ぐ積んでいるつもりでもその途中で崩れたり、歪んだらしていたら、知識と経験のある教師が正してあげないといけないのではないでしょうか。

それが積み重なって怪我になり、伸び悩みに繋がり、やがては大きな差になってしまうのです。


クセがすごぉい!

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直すという作業はとても大変です。

新しく何かを覚えるより、覚えてしまったクセのあるものを直すというのは想像以上に労力を使います。

まずは何が間違っているのかをピンポイントで探り当てなければなりません。

例えば回転(ピルエット)がうまく出来ないとします。

原因を探ります。結果、軸足に真っ直ぐに立てていないから出来ないんだという結論に至ったとします。

そうなればバーレッスンや普段の歩き方を見直して行きます。

「私の軸、つまり左脚は回転している時に小指側に落ちている。だからもっと左脚をターンアウト(外旋)させて左の骨盤は右側に締めてくるイメージだな。」

こう思って日々の稽古等を過ごします。

結果が出て、身と脳に染み付くまでは最低でも2、3週間はかかるものです。

その間、その部分だけに絞って矯正できれば良いですが、矯正、修正期間は派手に踊る事は出来ません。なぜなら正しく毎日積み重ねないと全く意味がないからです。

常に最新の注意を払って自分の重心、骨盤の使い方を直していく。そうすると勿論高く飛ぶ事や多く回る事、素早く動く事は出来なくなります。しかしそれで正しいのです。それが矯正の近道です。

しかしここで大きな問題が…

それは公演のリハーサルや日々のレッスンなどが続くなか、なかなか矯正は出来ないという「環境」です。

これは良い部分でもあるんですが、私の属していた某バレエでは少しでも手を抜いていると思われようものなら厳しい待遇が待っていました。

「食うか食われるかの世界」

と言ったような緊張感の強い場所でした。それはそれで良いのですが、何かを直すには適していたとは言えません。

当たり前ですけどね、もう学校ではなくプロの世界なので。だからこそ、基礎は学生時代に徹底的に叩き込む必要があるのです。基礎を身につければ共通言語が使えるようになり、応用も効いてきますから上達に繋がります。

しかにプロの世界では日々、アピールしながら全力で踊る事を求められるのです。そして私のいた団体は特にその毛色が強い場所でしたから、なかなか自分の課題に焦点を絞って直す事は難しくなります。

皆さんも場所は違えど同じ様な境遇の体験はあるのではないでしょうか?

私の場合は仕事に行く前にスペシャリストの元で矯正作業を行ったり、リハーサルの合間や仕事の後にも矯正作業をして少しでも早く直るようにと努力はしましたが、結果は残酷なものになる事が殆どです。

初めに出した結論が不十分だったのです。

左をターンアウトして左骨盤を絞めるように踊る。

結局この調合、この調合の組み合わせだけでは、ピルエット解決には役立たなかったという訳です。

さてそうなれば更に原因を追求せねばなりません。

これの繰り返しです…😅

1番良いのは大量にある修正のキーポイントを1つにまとめ上げるマスターキーの様な注意を見つける事。

シンプルに。これさえ気をつければ軸も、腕も、回転速度も回転数も、あらゆる問題が解決に近づくというような

魔法のキーワードを見つける事。


そして勿論、日々の稽古の中で自身の力を正しい方向に伸ばしていく事。

その積み重ねです。

大変な作業なんですよね…本当に😭

特に土台がない場合は…。

それもあってか私の所属していたその某バレエ団は

「もう出来ているダンサーには良いけど、まだ力が不十分なダンサーにとっては難しい場所」

とよく言われていました。

そんな中でも主役を始め沢山の良い役を与えてもらった事には心から感謝していますし、考え方、向き合い方を変えてくれた私の師匠にも大変感謝しています。

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(毎日の日課だった寝る前のプリエ。めっちゃお尻出ててターンイン。これでは意味がない)


24歳 退団

24歳はトレーニングの甲斐あってか足首の調子もこれまでの中では良い方で、体の痛みも23歳までと比べると少なかったように思います。
23歳の時は特に無理矢理自分の可動域をオーバーして、捻って、(それも重心が分かった上ならまだしも、分かっていなかったので兎に角グチャグチャ)踊っていましたから痛いところだらけでした。

翌年、24歳になった年は自分の身体の弱点や仕組みを理解する事は多少出来ていましたが、それを踊りの中で直していく事は出来ずその一歩手前の状態でした。

つまり身体を理解し始めた事で、無理なく少しナチュラルに踊れる様になった為に、あまり怪我や失敗はしなくなったものの、バレエ的見た目は依然として最悪。
という時期でした。

それは当たり前ですよね笑
自分の骨格は全くバレエに向いていない上に正しい使い方も習得出来なかったんですからナチュラルに踊ったらバレエの形からは離れてしまいます😂

かくしてこの頃から、ナチュラルに踊ってもバレエの形をキープする為に、本格的な肉体改造を決意するのでした。
と同時に長く所属していた例の団体を離れる決意をして退団致しました。

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(私の退団については周りを巻き込んでしまい、物議を醸し、その団体のダンサー達や関係者の方々、ファンの皆様に迷惑やショックを与える事となってしまいました。この事については多くを語る事はしませんが、いずれ書きたいと思います。因みに写真は退団直前に当時の公式ブログに投稿したもの。退団するとすぐに跡形もなく消されましたが😂)


身体を見直しながら精神的にも肉体的にも自由な気持ちでいざ海外へ飛び立とう!!
そんな風に光いっぱいの未来を抱いて歩み出していました。


が……。

そんな夢見る青年にまたしても神様から非情な贈り物が🤪🤪🤪

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というわけで長編の第2回はここまでとします。

つい途中熱が入ってしまい、いつもの事ながら長くなってしまいましたが、とても大切な事だと思います。
少しでも多くの人に考えて頂けたら嬉しいです。

皆様今日もありがとうございました。
サポートもいつもありがとうございます😉✨✨

次回まで!さよなら^ ^







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