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ノーサイド・ゲーム④「人は都合よく責任を擦りつけたがる」

簡単なあらすじ

アストロズの開幕戦。12000人もの観客が集まった試合は、見事アストロズが勝利。その勢いで、意気揚々と常務に報告をするが、「盛り上がるのは最初だけだ。動員数はどんどん減っていく」と冷静に言われる。アストロはその後も開幕三連勝を飾り、盛り上がりを見せるが、常務の言った通り、地方遠征とは言え、動員数は2000人強と、昨年と変わらない数字だった。

焦りもある中で、徐々にトラブルが出てくる。工場は会社の方針でAIを導入することになり、仕事を奪われ危機感を感じ始める社員達。そのしわ寄せは、14億円もの予算を抱える赤字事業のアストロズに向き、不満を募らせる。そんな時、ラグビー部控えの佐々が、仕事でミスをしてしまい、そのタイミングで9000万円規模の契約がキャンセルとなる事態が起こってしまう。また、選手層が薄さも頭を悩ませるようになり、佐々はアナリストの佐倉の補佐も積極的に努め、アストロズの練習も縁の下で支えていたのだが、「もう少し詰めましょう」と練習を進言すると、チーム唯一の日本代表でもある里村が練習中に怪我をしてしまう。

仕事のミスも練習のミスも、周りの人間はすべて佐々責任を擦りつけていた。工場内ではAI化が進んだり契約がなくなったことで、、「リストラ」の不安が大きくなり、ますますラグビー部の居場所は狭くなっていく。佐々は、仕事や練習のミスによって、自分は必要ないと感じ、辞めることを考え始めていた。

本社では、滝川常務が進めるカザマ商事の買収が進み、マスコミにリークしたことで、ゴルフ場建設の反対運動が工場に押し寄せてくる。君嶋は、その対策の為にも、カザマ商事に行き、ついでにキャンセルの原因を聞くと、佐々は全く関係なく、カザマの都合だった。むしろ、佐々の真摯な謝罪とラグビーへの熱意に、ライバルチームのファンだった担当の青野が、アストロズに興味を持つようにもなった。

一人落ち込んで残業する佐々に、君嶋はその事実を告げにいく。「契約は取り返せるから辞める必要はない」と。それでも、佐々はチームに迷惑をかけていると言うと「迷惑って何だ?」と君嶋は問う。文句を言いながらでも、佐々が勧めた練習を続けていた。チームを支え、アナリストを支え、誰よりもチームの為に頑張る佐々の事を、皆認めていた。
そんな笹を、チームの皆が迎えにくる。「さっさと着替えろ。練習するぞ。」と、尊敬する里村がボールを渡す。

前期、一点も取れずに負けた相手との試合で、勝負を決めたのは佐々が進言した練習の成果だった。チームメイトは「お前の手柄じゃねぇか!」と、佐々をたたえていた。
チームの絆はまた一つ強くなっていった。


誰かのせいにしないと納得できない

何か問題が怒った時、人は責任の所在を明らかにしたがり、誰かのせいにしたがるものです。特に、自分は何もしていないのに巻き込まれた場合は、誰かのせいにでもしないとやってられないのでしょう。アストロズは、ちょっとしたミスが致命的になりかねないので、佐々のせいにしたのも、仕方ないのかもしれません。

最近でも、あおり運転がニュースを騒がせていますが、あまりに悪質で、見るだけでムカつくし、許せないことですよね。でも、私を含め、直接関わっていない人がほとんどで、無関係の人間です。それなのに、無責任にも犯人を叩いたり、責めたりしています。あおり運転事件の犯人は明らかでしたが、その無責任な攻撃性が、デマ拡散による被害者を生み出したのも事実です。

ドラマでも、佐々は責任を感じて、部を辞めようとしました。原因が分からなければ、心無い言葉によって佐々は退部し、アストロズの未来も無くなっていたかもしれません。おっと、これ以上はネタバレになりますが、撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだという名言があるように、言うからには、言われる覚悟を持ちたいものです。

「せい」を超えて「おかげ」になる

仕事のミスや練習で里村が怪我をしたことで、工場の社員たちはアストロズのせいにし、アストロズのメンバーは佐々のせいにしました。そうでもしなきゃやってらんなかったんでしょうけど、結局は佐々のせいでもなんでもなかった訳です。佐々は、責任を感じ、ラグビーを辞めようとしていた訳ですが、佐々は、仕事のミスをした時も、誠心誠意謝り、真摯な態度で向き合いました。仕事もサービス残業をし、ミスした分挽回しようと頑張りました。その結果、カザマ商事の青野はアストロズのファンにもなり、

「君のおかげで、一人のファンが増えたんだよ。」

と、君嶋は佐々に伝えました。

そして、練習でもチームの為を思って、その練習が必要だと思って進言した結果、里村が怪我をしてしまいました。責任を感じていた佐々は君嶋に、「俺なんてチームに迷惑をかけてばかりだから」と辞める理由を伝えますが、「じゃあどんな迷惑を掛けてるんだ?」と聞き返します。こういったやり取りは、誰もが経験あることではないでしょうか?必要以上に責任を感じ、「自分なんていない方が」「迷惑をかけてばかり」という風に自分を責めたり、自分を責めることで良しとしてしまうことがあります。本当に迷惑を掛けているのか。本当に自分は必要ないのか。中々自分だけでは自分を認められないかもしれませんが、この感覚は、生きる上でとても重要なキーポイントだと思います。

佐々にとっては、君嶋がそれを気付かせる相手となりましたが、佐々は保身の為ではなく、チームの為に献身的に努めました。結果的に、その練習をしたことで、試合に勝つこともできました。

「お前のお手柄じゃねぇか!」

と佐々は言われましたが、ここで大事なのは、佐々は「自分のせい」にされたことから逃げなかったことです。責任転嫁せず、自分の責任として受け止め、謝るときは真摯に謝り、ラグビー部も辞める覚悟でした。ただ、アストロズも「家族の絆」があり、佐々が練習にいないことで、佐々の存在を実感したはずです。だから佐々を迎えに来たんだと思います。

ちょっと大事なポイントだと思うので長くなってしまいましたが(^^;、私は、「せい」にするから「おかげ」になると思っています。せいにされるから、本当のおかげになるんだと思っています。それを、佐々を通じて見せてくれたと思っています。

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