シロクマ読書感想文② 島袋全優「腸よ鼻よ 03」KADOKAWA

難病である潰瘍性大腸炎と診断された漫画家、島袋全優先生の闘病記なのだが、こんなに笑っていいのか?と申し訳なくなるくらい面白い。

最新3巻(2020/6/30発売)では、晴れて「漫画家様」になられた島袋先生が、連載と病状の間で板挟みになりながらも、漫画家として着実に経験を積まれていく様子が描かれている。入院中のエピソードももちろん面白いが、卒業制作としておっさん乙女ゲームを作ったり、筋肉のために菌の巣窟東京に再び降り立ったりといったハチャメチャなエピソードには声を上げて笑ってしまった。
「腸よ鼻よ」では島袋先生が大腸を失うことが予告されている。過酷な運命に向かっていくはずなのに、綴られるエピソードはどれも笑いとエネルギーに満ちている。

突然だが、私は体が丈夫ではない。丈夫でないだけで病気を患っている訳ではないのだが、いつもうっすら体調が悪く、よく腹を壊し、よく寝込む。そして、体調が優れない時というのはどうしたって気分も最悪になる。そんな時に私を救ってくれるのはギャグ漫画だ。トイレからしばらく出られない時や、横になってもとても眠ることが出来ないような時、ギャグ漫画に夢中になっていると痛みやつらさを忘れられ、明るい気持ちになっていつの間にか体調も回復していることが多い。

体調が悪いときはあまり闘病記は読まないかもしれない(本来は目を閉じて安静にしているべきだろうし)。だが、「腸よ鼻よ」は体調が悪いときに読むとより共感できる場面も多く、そしてなにより、底抜けの明るさに元気をもらえる作品だ。
これからすぐ、汗が冷えて腹を壊し、夏バテで頭が働かなくてなにも出来なくなる地獄のような季節が来る。そんな時もきっと「腸よ鼻よ」は私を力強く支えてくれるだろう。

島袋全優『腸よ鼻よ 03 電子特別版』KADOKAWA、2020年、初出「GANMA!」。

レビューとレポート第14号(2020年7月)

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