【短編小説】『選べたはずの未来』
ひと目見て、彼女だと気づいた。
お昼時を過ぎた山手線内回り。
ドアの入り口に立ち、流れていく景色をじっと見つめる彼女は僕が大学時代付き合っていた子だった。
おもいがけない出会いにつり革を掴む手にじわじわと汗が浮かんでくる。
もしかすると『君の名は』的な展開か!?と自分で自分に冗談を言っても、はやる鼓動の音は大きくなっていく。これは話しかけないといけない。なぜだかそんな気がした。
次の駅についたら声をかけよう。
そう心に決め、それまでの間、彼女とのことをふと思い返す