見出し画像

WHY?(なぜ?)は女子生徒を遠ざける

これまで、中学校8年・小学校4年、教育委員会2年を経験し、2006年に現在のコーチへと転身しました。

このようなキャリアがあることもあり、学校関係や教育委員会関係からコーチング研修・講演の依頼がよくあります。

これまではほぼ毎年、講演・研修・セミナー合わせて100本以上をこなしていました。

呼んでくれる教育委員会担当の方は、以前、教師だったというパターンが多く、打ち合わせや当日終わった後に教育話で盛り上がります。

「講演を聞いて思い出したんですが」と言ってご自身の体験談を話してくれる方も多く、こちらも参考にさせていただいています。

そのような中、東京のある区の教育委員会で指導主事をしている、元中学校の体育教員だった方から聞いたお話です。

画像2

絶対に泳がない女子生徒

体育の水泳の授業のときにどうしても泳がない女子生徒が二人いました。

水泳のテストがあったのですがテストも見学です。
この先生は、彼女が泳ぐようにいろいろ説得をしますがなかなか泳ごうとしません。

最初の頃は、
「次は泳げるようにしような」

と優しく指導していましたが、何度も何度も休むので、

「それでは、だめじゃないか。」
「泳がなきゃ、成績がつかなくなるよ。」
「なんで、君は泳がないんだ」
「なんで、できないんだ」
「なんで、やらないんだ」

という質問をこの女子生徒にするたびに、プイっとスネられて話が発展しなかったというのです。

そのような中で、この先生はコーチングを学んで、今までしていた質問が相手との関係を悪くする原因になっていたことに気付いたそうです。

’why’の質問の取り扱い

「why(なぜ?)」と問いかける質問は、使い方を間違えると相手との関係性を悪くしてしまう質問になりがちです。

相手と関係性ができていて、同じ目標に向けて向かうもの同士で、相手が準備ができている状態であれば受け入れて考えようとしますし、このような理由や目的を見つけるような本質に近づく質問は、相手の高性能を引き出すきっかけにもなります。

効き目が大きい分、関係性ができていない、準備ができていない相手にはきつくなるのです。

再チャレンジ

さて、このようなことを学んだ先生は、このシーンを振り返って、

「この子を泳がない気持ちにさせているものは何だろう?」
というところに意識が行ったそうです。

そして、その女子生徒に投げかける質問のパターンを変えたそうです。

「何が君を泳げないようにさせているの?」
「泳げない理由を教えてくれるか?」

という質問をしたそうです。

そういう質問をしたら、その子は話し始めたそうです。

で、いろいろ話をしていたようなのですが、結局答えは、

「恥ずかしいから」

ということでした。

普通なら
「恥ずかしいなんていうもんじゃない!」と一喝してしまいそうになるところですが、

この先生はその子を受け止めました。そして、

「そうか。だったら、どうしたら(何があれば)泳げるようになるかな?」

という質問が出てきたそうです。

その女の子は、

「先生と友達の3人だけなら泳げる」
と言ったので、その子を信頼して後日補習の時間を持ったそうです。

本当にその子が来るかどうか心配だったのですが、
その女の子はきちんと水着に着替えて水泳の補習の授業を受け何とか成績も付けられたそうです。

画像2

’what’(なに)で聞く

私たちは、「why(なぜ)」で相手を問い詰めてしまうときがあります。
何でできないんだ?何でやらないんだ?
これは、人への信頼がありません。

この先生は「What(なに)」で聞きました。

何が君をそうさせているの?

そこには相手は立派に答えられる一個人として、相手には自分自身で問題を解決できる能力がある。相手を信頼している。という想いの元に放たれたスキルであることが大事であり、逆を言うと、相手に対する不信がちょっとでも伝わるようだと、相手の能力をうまく使えないのだなあと改めて思ったお話でした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?