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【#2】さり気なさと、UXライティング

UXライティングの考え方をひとことで

#1から全力でゆ〜ざ〜えくすぺりえんすとか、ゆ〜えっくすとか言っていますが、しばらくじっくり考えてみた結果、UXライティングの考え方はこういうことではないでしょうか。

あるべきところに、伝えるべき言葉を、さり気ない文章で書いておく。

●あるべきところ=ユーザーが利用するツール・場所
●伝えるべき言葉=本当に知ってほしい・伝えたい本質的メッセージ
●さり気ない文章=本当に知ってほしいメッセージのあらゆる表現

なんか、そんな気がしてきました。

さり気なくってなんだろう

『さり気ない文章』とはいったい何でしょうか。
手短で、邪魔にならず、控えめで、でもきちんと次を指し示す矢印となる文章であると同時に、気遣いの文章でもあります。

さり気ない優しさ・ユーモア・ふるまい。これらの要素がジワッと滲み出るような文章が、UXライティングの目指すべき表現かもしれません。なにせ優しいライティングですからね。

***

僕は趣味で演劇をやっていますが、公演ごとに初参加の役者さんもいれば、顔なじみのスタッフもいるというカンパニーで、ひとつの作品を創作していきます。

初日は稽古場にうっすらと緊張感が漂っている。ぽつんとひとり台本をペラペラめくる役者さんのとなりで、顔見知りのスタッフが談笑している、とかそういう場面は結構あります。初めての寄り合いは、どこか息苦しさや居心地の悪さがあります。

そんな時「緊張してる?」と聞くでもなく、「緊張するなぁ!」と声を出すでもなく、「緊張しますね……!」とみんなに声を掛けると、一気に場の緊張感が薄まるという現象があります。全員緊張しているんだという共感が、居心地の悪さを一撃で退治してくれる。ぜひやってみてください。

で、これが『さり気なさ』なんじゃないかなと。
「そんなに緊張するなよ」って言われても、「緊張してる?」と聞かれても、「緊張をほぐす」というユーザーの利益には結びつきませんし、「緊張がほぐれたら、次は何をしようか」という矢印としての役目も、行動の価値を促す効果もありません。

●あるべきところ=初めての人たちが集まる場所
●伝えるべきメッセージ=緊張しなくても大丈夫。みんな緊張してるから
●さり気ない書き方=「緊張しますね……!」

こうやって整理してみると、UXライティングの考え方に当てはまりそうです。

その言葉は「あなた」に向かって語られているか?

街を歩いていたら、学習塾の窓にこんな張り紙がありました。

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こっち見てる子いますね。
体験授業受付中!!です。A4用紙に一文字ずつ印刷して貼る手法。UXデザインとUXライティングでどうにかしたくなる格好の素材。なぜ縦に貼った。

UXライティングの『さり気なさ』を思い出してみましょう。誰に向かってさり気ない言葉を掛けて、さり気ないふるまいをするのか。
それは言わずもがな『あなた』です。緊張している相手。プロダクトを使う相手。体験授業に興味がある相手。それが『あなた』。

体験授業受付中!!

この書き味だと、あくまでも主体が学習塾であって(学習塾側の仕組み)、『あなた』ではありません。目を細めてこの文章を見ると、

体験授業(を私たち学習塾が)受付中!!

という見えない言葉が潜んでいます。これを『あなた』に向かって語りかけてくる言葉にUX翻訳してみると、たとえば

体験授業に参加!!

ということじゃないでしょうか。
主体は体験授業に参加をしようかなと考えている『あなた』。

体験授業に(あなたも)参加!!

“体験授業”と“参加”の間に、ユーザーの姿が見えてきます。

UXライティングの考え方に当てはめてみても、何となくしっくりきます。

●あるべきところ=学習塾(窓でいいのかはわからない)
●伝えるべき言葉=体験授業をやっています
●さり気ない文章=体験授業に参加!!(こんなに大声の必要はないけど)

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結構いいじゃない。

感想/今後の目当て

『あなた』目線で書き換えるのがすごく難しいけれど、印象はだいぶ変わるなぁと思った。<本日発送します>と書くよりも<明日お届けします>の方がさり気なく『あなた』に、自分に話し掛けてきている気がするのは僕だけか……。

次回はUXライティングとプロダクトのキャラクター設定について書いてみようと思っています。
(つづく)

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【参考図書】
UXライティングの教科書 ユーザーの心をひきつけるマイクロコピーの書き方





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