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UXライティングようかん

「ゆっくり」という情報の尊さ

人はようかんを目の前にすると前後不覚に陥る。我先に食わねばという心理が芽生える。異論の余地はない。あんこ欲にまみれた人間の、その欲の約4割は結果的にようかんへと向けられているという。挙げ句、ようかんに対して暴力的な振る舞いを見せる。齧ったり余裕でする。その最たる例が「ひねりながら早く引く」である。

欲に支配された愚者は、粗雑にようかんをひねろうとする。悠長にひねっていられるか。無理矢理にでもひねりながら引いてやる。どうだ痛いか恥ずかしいか。思いつくすべての野暮で低俗な言葉を並べ立て、ひねりながら「
早く」引いてしまう。結果、ようかんの一部分がパッケージもろとも分断されるという教科書に載らない歴史を目の当たりにしてぽろぽろと泣くことになるのだ。

「ひねりながら引いてください」という相撲の解説のような情報よりも、「ひねりながら引く」の立体感を図で表現しようと試みた結果の矢印よりも、上部に書かれた「ゆっくり」の方が情報としては尊い。よくぞ書いてくれた。そんな想いとともに、私の中にあるあんこ欲の4割をようかんに向けた。
(了)

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