成願 義夫

(株)京都デザインファクトリー社長、 伝統紋様研究家、壁面装飾画家、図案家、 「和文化…

成願 義夫

(株)京都デザインファクトリー社長、 伝統紋様研究家、壁面装飾画家、図案家、 「和文化デザイン思考」講師、

マガジン

  • 和文化デザイン思考

    日本の伝統文化は1500年以上継承されています。 そこには長い歴史の中で培われた美の法則が散りばめられています。 美の法則とは「人類を幸せに導く法則」です。 『伝統は未来の資源』とも言われています。 先人達から、現代そして未来の日本人へ伝えてくれた『宝』とも言えるメッセージを受け取り、活用できることは、日本人の特権であり強みです。 和文化の美の法則を活用しつつ、様々な条件を考慮し、人々を幸せにする為のアイディア生み出しす思考が「和文化デザイン思考」です。

最近の記事

『三昧』

先日、ある蕎麦屋さんで、「蕎麦三昧」と言うメニューを注文した。この店では、3種類の異なる味が楽しめる。二つの意味で良いネーミングだ。 一つ目の意味は文字どおり「三つの味」を楽しめること。 そしてもう一つの意味は「 三昧と言えば「読書三昧」.「練習三昧」のように、本来の意味は一心不乱に何かに没頭することを言う。 そういえば最近無心になって何かに没頭したことあるかな?と、自分を振り返り考えたけど思い当たらない。 今思えば子供のころは毎日何かに没頭していた。まさに「無心」

    • 「何も無い」は、「全てが有る」ということ

      お茶の世界に『侘び茶人』という言葉があります。 すなわち『物を持たずして心を生かす』という事が出来る茶人を言います。 無を生かす、あるいは無が生きた無である事に大きな意味があると云われています。 また、茶室は「狭小の宇宙」とも云われています。亭主がお茶を通じて客もてなす為の部屋ですが、心の豊かさを何よりも尊ぶ為、設えは質素を旨とします。 一切の華美を廃し、虚栄を廃し、想像力を生み出す余白を重んじます。 「足るを知る」「今あるものを生かす」さらにその先は「何も無い状態

      • 整列は日本の文化

        哲学の道沿いの古い学生アパートの自転車置き場。 散歩の途中に見つけた風景だ。 外国人が日本に来て驚くことの一つに日本の美しい『整列』があると、以前誰かに聞いた。 日本では駐車場に枠線がなくても、車は整列されて停められる。 こんなことは外国では有り得ないらしい。 人の整列が特に外国人には驚かれるようだ。 プラットホームで電車を待つ整列は言うに及ばず、何十万人も人が集まる大規模イベントの開場前の大群の整列も見事だ。 2011年の震災の際、水、食料などの救援物資の配給にも、日本

        • 不思議な振袖の謎を解き明かす

          ここに一枚の振袖の写真がある。 20年ぐらい前、京都市美術館で開催された宮崎友禅斎記念回顧展を観に行って、買い求めた名品図録の中の一枚だ。 江戸、明治、の豪華な友禅染めの名品が沢山展示されている中で、どちらかと言うと地味で目立たない一風変わったこの振袖。 全体は濃いグレーの地色で、特に上前だけ見ると雪に見立てた白線と白砂子散らしだけの実にシンプルで地味な柄。 しかし、下前には雪持ちの菊に小鳥を友禅と刺繍で表した手の込んだ柄が付いている。 もちろん下前に柄と言うことは、

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          山くじら

          「山くじら」って、なんの看板でしょうか? 日本人は古来より鹿や猪などの獣肉や雉や鶏などの鳥肉を食べていましたが、天武天皇以来、その時代々によって様々な食肉禁止令が出されてきました。 江戸時代にも綱吉が発令した『生類哀れみの令』などがあり、獣肉を公に食べないという「たてまえ」が蔓延しましたが、実際は武士や貴族までもが密かに獣肉を食べていました。 庶民もそれを心得ており、「バレなければ良い」となり、徳川政権下で、特に江戸や大坂の町人たちも密かに(?)肉食を楽しんでいました。 「山

          余白のパラドックス

          以前、京都の職人さん達の異業種コラボ作品を集めた展示会に出かけた時のお話。 ある友禅作家さんのコーナーのランプに目が止まった。 布製ランプシェードには友禅模様が染められていた。 私は失礼ながら「この友禅柄が無ければ良いのに」と思ってしまった。 物は機能性が優れていて、素材の質感や組み合わせが良くて、魅力的な色で、フォルムが美しくて、飽きのこないシンプルさがあれば、それで十分商品価値は生まれる。 このようにランプシェードに絵柄が入る事によって商品価値を下げてしまう場合

          余白のパラドックス

          お歯黒

          私が子供の頃、沢山の時代劇映画を見ましたが、特にリアルな時代考証を売り物にしていた大映の時代劇には,衣装の時代考証も然る事ながら、お歯黒の女性がよく登場していて、子供心にとても奇異な感じを覚えたものです。私たちが映画や歌舞伎で見ているお歯黒はほとんど江戸時代のものです。江戸時代の既婚女性は、歯をお歯黒にした上に眉毛も剃り落としていました。 想像してみてください。亭主が夜、家に帰ると、薄暗い行灯の明かりに照らされて、真っ黒い歯で眉毛のないノーメイクの女が出迎えてくれるのです。

          神妙の域

          葛飾北斎の言葉としてあまりにも有名な『富嶽百景のあとがき』にこのような一文がある。 『一点一画が生き物のごとくなるであろう』 この言葉は優れた絵師なら一度は必ず目指す境地を表している。 北斎はこの境地に百十歳で到達すると、自ら宣言していた。 しかし、「天が私にあと十年の時を、いや五年の命を与えてくれるのなら、本当の絵描きになってみせるものを。・・」という言葉を残して、北斎は九十歳でこの世を去った。 あの北斎にして到達できなかった境地、それを北斎は『神妙の域』と言って

          花簪 1月:お正月・稲穂 2月:梅・お化け 3月:菜の花 4月:桜・蝶々 5月:藤・菖蒲 6月:柳・あじさい 7月:団扇・お祭り 8月:すすき 9月:桔梗 10月:菊 11月:紅葉 12月:まねき

          花簪 1月:お正月・稲穂 2月:梅・お化け 3月:菜の花 4月:桜・蝶々 5月:藤・菖蒲 6月:柳・あじさい 7月:団扇・お祭り 8月:すすき 9月:桔梗 10月:菊 11月:紅葉 12月:まねき