『スパイの妻』

ヴェネツィア国際映画祭で監督賞を獲ったからとか、黒沢清監督作品だからと言うより、タイトルに「スパイ」とあったのでそれなりにスパイ要素がある作品である安心感から見た『スパイの妻』。確かに、第二次世界大戦直前のピリピリムードの日本と、主人公夫婦が仕掛ける仕掛けはなかなかだったが、NHKで放映するドラマとして作ったからか、演出が全体的に控え目で地味なドラマに仕上がったのがなんとも残念。

 

 

戦争によって人が変わる、というテーマは良く作れていた。それに翻弄される貿易商の夫婦やその夫婦と懇意にしていた東出昌大が演じる軍人になった津森との関係の拗れなど、その時代の日本ならではのスパイものを展開。中でも東出昌大の演技が秀逸で、出来れば彼の目線での軍ものでもよかった気もする。

 

その東出絡みでエグい描写もあるにはあるが、どこか歯止めがかかっている。それと、終盤の蒼井優の描写も甘い上にかなりふんわりなラストなのもいただけない。

 

 

時代描写もしっかりして、後半のある仕掛けを中心にした展開も見応えはあるが、大半が蒼井優視点の女性映画なテイストなのが「映画野郎」的には残念。黒沢清監督作品を追ってる人や蒼井優主演映画が好きな人ならいいのかな。

 

評価:★★★

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