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【エッセイ】米国留学時、スクールバスで事件は起こる
私は16歳の時にアメリカに一年留学していた。
2005年、まだこの世にwifiもスマホもない時代の話だ。
親に言われたわけでもなく、自分で行きたいと県の奨学金(100万円)をもぎ取り、交換留学という形でミズーリ州のハイスクールに通っていた。
今日はそんなスクールバスで体感したアメリカと、日本では到底起きないであろう珍事件について書く。
①スクールバスの思い出(音楽と漫画、異文化交換編)
ホストペアレンツは共働きだったので、毎朝スクールバスに乗って通学していた。
朝7時とかに黄色のバスが
家の前に来ていた。
でもホストマザーはそれよりもっと早く出勤していたし、ホストファザーは夜勤をしている人だった。
だから私はいつも自分でランチの準備をして、自分でスクールバスに遅れないように乗っていた。
スクールバスは小学生から高校生まで一緒に乗る。どちらかというと15歳以下の子が多かった。理由は高校生になると運転免許を持っている子が増えるからだ。
私は二人の中学生の女の子と仲良くなった
一人はトゥリッサという難しい発音の名前の子だった。
数日お風呂に入ってない雰囲気の子だった。彼女を動物で例えるとワニが近い。目に輝きがあまりない子だった。
よく私の英語に対して「ハァン?」と聞き返していた。愛想がいい子ではないが、「隣に座んなよ」とよく言われ、隣に座っていた。
本当はちょっと汚い&臭いから隣に座りたくはなかったけど、断る理由もないので隣に座ってよく一緒に話していた。
もう一人はベッキーという完全な白人系のキラキラした女の子だった。いつも綺麗なお洋服を着て、ピアスをあけていた。元気なウサギのような子だった。
ベッキーはトゥリッサと違って、愛想がめちゃくちゃいい子だった。そしてめちゃくちゃ日本の漫画ヲタクだった。
私が彼女たちをこう対照的に表現するにはワケがある。
それは私が誰から言われたわけではないけど、このスクールバスに乗っている子たちは、比較的、貧しい世帯の子達が多く、比例して教育水準が低い子達が多いと悟ったからだ。
アメリカは貧富の差が激しい
特に私がいたミズーリ州は、経済レベルがワーストらしい。大学院のときにアメリカ研究をしてる先生から聞いた。
日本の公立の小学生を一クラス集めた時、貧富の差や教育水準の差をさほど感じることはない。
しかしアメリカの場合はこうやってトゥリッサのように、ものすごく不衛生でも親がそのままにしてる子も、ドライバーの言うことを全く聞かない子も、道徳が行き届いてない子も、いろんな子が乗ってくる。
先に断るが、差別したいわけじゃない。ただ、貧しさが子供への教育に結びついてることを私は当時、薄々感じていた。
ちゃんとした親であれば、
教育上の理由から
なるべくそういう子達と関わらせず、
自分の運転で子供達を
学校に送りたいのだ。
だから実際に私が高校で仲良かった、オーナーズクラス(特待生クラス)の子たちで、スクールバスに乗る子はほとんどいなかった。
高校のオーナーズクラスで同じクラスで、一緒にバスに乗り合わせるのは、シャノンというチアガールの友達だけだった。
それでも彼女も月に数回、おそらく、どうしても親が送り迎えできないときだけ乗っていた。
だから私の記憶では、自分と同じような教育水準や家庭で育った子は、ベッキーとシャノンくらいしかバスの中に見当たらなかった。
スクールバスの中ではいろんな思い出がある。
カントリー・ミュージックとの出会い
トゥリッサには感謝していることがある。彼女はカントリーミュージックが好きで、 Toby Keith(トビー・キー)というシンガーのアルバムを貸してくれた。
日本でカントリーミュージックというと、「カントリー・ロード」ぐらいしか思い出さないかもしれない。
アメリカの中でも好き嫌いが分かれたり、地域によるらしい。
カントリーミュージックのシンガーは、こうやってカウボーイハットをかぶり、ギターを持ったソロ歌手が多かった。
私がいた地域はカウボーイの歴史が近く、ホストファザーもよく車でカントリーミュージックをかけていた。
個人的にはSuperflyとかがカントリー・ミュージックを歌ったら、ソウルフルでめちゃくちゃかっこいいと思う。
高校でも合唱部で、音楽が好きだった私は、トゥリッサのおかげでエルビスとかジョニー・キャッシュとか、リズミカルなこの音楽に出会えて本当に良かったと思う。
PUFFYにNARUTOという日本の漫画
ベッキーとの思い出は、やはりアニメや漫画にある。
彼女は2005年当時、小学生や中学生に大人気だったPUFFYのアニメの大ファン。そしてNARUTOも大好きだった。
田舎だったので日本の漫画は簡単に手に入るわけじゃなかったが、たまに英語版のジャンプを持っていた。
私はNARUTOの読者ではなかったが
「ジョー妻!見て、このサクラ…!」
と読まされたことはある。
サクラちゃんが自分で髪の毛を切っていたシーンだったと思う。
彼女はめっちゃ興奮していた。
PUFFYにしろ、NARUTOにしろ、
ちゃんと海外の、
しかもこんな田舎の中学生にも
影響を与えていると
感じれたのはすごくよかった。
さぁ、ここまでは序の口。
正直まったく事件性はない。
ここから徐々にギアを入れていくので
ちょっとご容赦いただきたい。
②スクールバスの思い出(ユーアーソーハット編)
ある日、スクールバスを降りる時に
話したことがない中学生の女の子から「私の友達から」とメモを渡された。
バスを降りて家に入る前にそのメモをあけると、今でもはっきり覚えているが、めっちゃくちゃ汚い字でこう書かれていた。
I've seen you in the town.
YOU are so HOT.
Please call me.
I am Zack.
日本語に訳すると
「君を街で見かけた。
君は超ホットだ。
電話してくれ。
俺はザックだ」
私は読んだ後に首をひねった。
ナンパっぽいことが記載されているのはわかった。しかし、あまりの字の汚さと、お前誰やねんというツッコミが猛烈にあった。
ホストマザーが帰ってきてこれを見せると、大爆笑された。やっぱり「字が汚いww」と同じことを言っていた。
あとおそらく10代の、しかも当時の私より年齢が低い子がYou are so hotなどと言うのは、かなり笑えたのだろう。
次の日にこのメモをくれた女の子に「この子、何歳なの」と聞いてみた。
「12歳よ」
私はひっくり返りそうになった。
日本で考えて欲しい。
12歳の子が16歳の高校生を
ナンパするだろうか。
花の16才なのに、12才にナンパされたということは、同い年くらいに見られたのか。
アジア人は若く見られがちとは言え、相当ショックだった。
アジア人がほっとんどいない田舎だったので、私を街で見かけて印象に残るのはまだわかる。
しかし、スクールバスは何十本も走っている。よく私が乗っているバスを探しあてたもんだ…。
ちなみに余談になるが、同じ頃に、高校で毎日知らない黒人の男の子に「やぁ」と声をかけられるう事案も発生していた。
私は「こいつはなんなんだ」と
毎日苦笑いで対応していた。
特に彼がつるむ黒人仲間たちのうち、一人の女の子は、授業中に私の財布から20ドル(約2千円)盗んだ疑いがあった。ちょっとやんちゃな集まりだったので、彼にあまり声をかけられたくなかった。
最終的にこの黒人の男の子からも、数週間、一方的に授業の移動時(確か生物のクラスにいくとき)に話しかけられ、ある日
So, when we go out ?
などと言われた。
go outという表現は
デートに行く、という意味だ。
私は何かの間違いかと思い、go out? と聞き返すと「イエス、デート」とはっきり言われた。
私は絶句して苦笑いした。
やっぱり「お前、誰やねん」なのだ。So,じゃねぇ。はっきり言って双方コミュニケーションをとった覚えはないのだ。
まさか好意を寄せられていたとは。
私が困っていると、彼は去っていって、以来、二度と私に声をかけることはなかった。
デートに誘うとしても、もっとお互いのことを知ったり、認知しあってからじゃないのか。このやり方で、どこに勝率があると思ったんだろう。
貢ぎ物があるか、ものすごいイケメンじゃないと、この程度で電話したりデートにありつけるのは、厳しいと思うのだが。
アメリカの男の子たちは、タフだ。
文化なのか、知能なのか、わからないが。
③スクールバスの思い出(見てはいけないもの編)
最後に一番強烈な話をしよう。
人生で見たものの中で強烈だったものTOP3に、ぶっちぎいり入る。
わりと寒い季節だった気がする。私はその日、高校からの帰りで一人でバスに座っていた。ベッキーもトゥリッサもいなかった。
その数週間前から、カップルが一緒に並んで毎日座っていた。そばかす顔の
男が中学2年生(14歳)、女が高校1年生(15歳)だった気がする。
※アメリカの高校は4年制。
だから16歳の私は、
アメリカでは高校2年生だった。
なぜ私が彼らの年齢を記憶しているのか。
それは彼らが本当にバスの中で
会って隣に座って過ごす時間を
楽しそうに、愛おしそうに
過ごしていたからだ。
彼女が高校に上がってしまい、
会えるのはバスの中だけになったのだろう。
アメリカの田舎は本当に田舎だ。
地域のバスも電車もない。
タクシーだって危険だ。
自家用車がないと、
本当に何もできないのだ。
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だから私は楽しそうな二人を見て
「よかったね」と微笑んでいた。
バスに乗るこの40分とかそこらの時間で、いっぱい話して帰りなさいなと思っていた。
二人はいつも仲が良く、ラブラブだった。彼女は、彼に膝枕をしてもらったりしていた。
先ほど寒い季節だったといったが、これを覚えているのも理由がある。
男の子は、自分の膝に頭を置いて甘える彼女に、いつもアウターをかけてあげていたのだ。
優しいな、と思っていた。
特に意味もなく、隣のシートに座る彼らをよく見ていた。
しかし、私はぼーっと彼らを見ていると、異変に気づいた。
そばかす顔の彼氏は、目をつぶって、口を開けていた。魂が抜けているような顔だった。
私は姿勢良く寝ているのかなと思って、その様子を不思議に見ていた。
一方で、膝枕をしてもらっている彼女は、男の子のアウターをかぶせられているので、頭から上半身まで見えない。
でも二人して寝ているわけではなさそうだった。
女の子の頭の部分は、彼の膝の上でよく動いていた。
彼らは、何をしているのだろう。
私はぼーっとそれを見ていた。
もう彼の口からは、お教が聞こえそうな雰囲気だった。
そう、彼は極楽浄土へ行っている最中だったのだ。
ようやく私の視線に気づいた彼は、極楽浄土から帰還した。現実に帰ってきたのだ。
「違うんだ、ジョー妻!これは、これは!」
大慌てで何かを言い出した。
必死の弁明だった。
だが私は「そういうことなのね」ぐらいの、謎が解けて、あーはいはい、ぐらいの気持ちだった。だからあまり耳を貸さなかった。
ちょうどそのとき、バスが私の家に着いた。
15年以上経った今も、はっきり覚えている。
大慌てだった彼が本当に申し訳なさそうに「I'm so sorry(本当にごめん)」と私が降りる時に言った。
不快にして申し訳ない。
そこまで反省するなら、
やらなきゃ良かったのに。
私は特に不快には思わなかった。
理由はやっぱり自分自身がまだ少女で、そういうことをする意味が、当時はわからなかったからだ。
少女マンガにちょっとエッチなシーンがあっても、さっき二人ががしていたようなことは、基本的に少女漫画には出てこない。
だからそんな愛し方だの、快楽だのは、全く知らなかったのだ。
コンビニで誰かがフランクフルトを食べているのを見て、何も思わないくらい、当時16歳の私にはどうでもよかったのだ。
私は家に帰ったら、いつものように、何事もなく、英単語の勉強をしていた。
次の日以降、彼らをスクールバスで見ることはなかった。不思議に思っていた。私と顔をあわせるのが気まずいと感じて、乗るのをやめたのだろうか。
この答えは、一ヶ月後にキャサリンという友達と話して、明らかになった。
(今思うと、この珍事を英語でどう説明したんだろう、当時の私)
彼女の父親はスクールバスのドライバーだった。
「それ、パパに聞いた!ドライバーたちの中で噂になってた…問題になっていたカップル!」
キャサリンが言うには、二人の所業はルームミラーでドライバーにバレバレで、スクールバスを出禁になったらしい。
スクールバスのドライバーは、子供を乗せているのもあり、非常に厳しい人が多かった。
ルームミラーで常に子供たちが悪さしていないか、見ているし、騒ぐ子供たちがいれば、バスを路肩に停めて注意をしたりもしていた。
もう一度繰り返そう。
アメリカのスクールバスにはいろんな子たちが乗ってくる。
ちゃんとした親であれば、よほどの事情がない限り、自分の運転で子供達を学校に送りたいのだ。
子供をこんな事件の目撃者にさせないために。
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