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『売上10億円を超えた ベンチャー企業の管理職たちの奮闘!』Vol.1:部下育成とチームビルディングの本質

売上10億円の壁にぶつかる大きな理由

本シリーズは、前シリーズ「ベンチャー企業がぶつかる10億円の壁をどう乗り越えるか」の続編となる。前シリーズをひととおりご覧いただいたうえで、お読みになると理解がスムーズになると思う。

ベンチャー企業が、売上5~8億円でゆきづまる期間が数年に及ぶ時、いわゆる「10億円の壁」にぶつかっている可能性が高い。それを乗り越えようとする時に立ちはだかるのは、実は創業期からの成功体験である。

通常、大半のベンチャー企業は5~8億円に達することができない。10億円の壁にぶつかることができるのはある意味で、創業メンバーやその後の第一世代の社員(その多くは管理職)らが優秀であるからだ。

だが、優れているからがゆえにその時点までの経験に必要以上に影響を受けている可能性が高い。成功体験が失敗を招く、とも言えよう。

例えば、創業メンバーや第一世代の社員数人が懸命に取り組めば10億円の壁を突破できると信じ込む。しかし、この認識は誤りだ。5~8億円ならば、すでに正社員数が60人~130人になっている。創業メンバーのほか、数人の力だけでは組織が機能しなくなっているはずだ。成長のステージ(段階)が創業期と明らかに違うのに、マネジメントや組織のつくり方が創業期のままになっている。

創業メンバーの間は時間をかけて話し合うことをしなくとも、ある程度はあうんの呼吸で理解し合えるケースがあるだろう。だが、60人~130人になるとそれは難しい。

例えば、創業メンバーはこんなことも知らないのかと思いつつも、社員たちと向かい合い、丁寧に説明し、理解し合う文化をともに作るしかない。

これは時間やエネルギーが必要になる試みであり、効果が目に見える形で現れるのは少なくとも3~5年はかかる。その間に社員が次々と辞めるかもしれない。このレベルのベンチャー企業は定着率が概して低い。

まして、10億円の壁にぶつかるベンチャー企業は資金繰りとの闘いでもある。顧客数は大企業に比べると依然、少ない。それぞれの契約額も大きいとは言い難い。結果として、常に財務面でリスクがあり、資金ショートに陥る可能性すらある。

その危機を避けるためにも、創業メンバーらは時間をかけ、じっくりと育成することにアレルギー反応が出る傾向がある。その象徴が、社長や役員が部下である管理職や一般職の仕事をいわば取り上げてしまい、自らがしていることだろう。

好意的に解釈すれば責任感や使命感と言えるのかもしれないが、これでは部下たちがしらけてしまい、仕事力がつかない。管理職もやる気を失うのではないか。例えば部長や課長が本来は、各部署のリーダーとしてまとめていくべきだが、社長や役員が管理職の仕事までしてしまうと、するべきことがない。部下たちも指示を部長や課長に仰ぐのではなく、社長や役員らの考えや判断を重視する。

こうなると、役員と管理職の間の役割分担や権限と責任の所在があいまいになり、指揮命令系は錯綜し、ムリやムダ、ムラが増え、組織がスムーズに機能しない。チームビルディングができない。結局、創業メンバーや第一世代の数人だけで稼ぐ構造を抜け出せない。売上10億円の壁にぶつかる大きな理由と言える。

Vol.1の続きはこちらから


■もくじ

  • 売上10億円の壁にぶつかる大きな理由

  • 原因をつくっているのが、社長や役員?

  • 売上10億円の壁にぶつかるベンチャー企業では管理職が機能不全

  • プレイング・マネージャーの意味

  • 健全なる疑いを放棄することなく、「客観的に見ること」

  • とりあえず管理職にして部下を持たせている?

  • マネジメント力の乏しい人が管理職になると...

  • 「管理職はチームをつくり、部下を育成できなければいけない」