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【第4回|デザイン思考を学ぶ】アイデア創出・試作・実証

デザイン思考は①共感、②問題定義、③アイデア創造、④試作、⑤実証のプロセスで進められる。顧客に共感し、問題を発見・定義し、それに対して解決策を創出し、その評価を行う。第4回目はアイデア創出・試作・実証について説明する。

1. アイデアの創出

アイデア創出とは、観察を通して定義した問題に対して「人間中心」に問題解決を図るためのアイデアを考えることである。

1-1. アイデア創出の4つのポイント

アイデア創出は以下4つのポイントに留意して行う。
①観察から得られた問題を解決する
②いきなり問題が解決された製品・サービスのアイデアを考えるのではなく、まずは問題を解決する体験から考察する
③その体験アイデアを実現できる手段のアイデアを考察する
④「アイデアを生み出す行動=拡散」と「評価・選択する行動=収束」は分けて行う

1-2. アイデア創出の実践

ここでは「バリュープロポジションキャンバス」、「ストーリーボード」、「カスタマージャーニーマップ」を用いたアイデア創出を取り上げる。

①バリュープロポジションキャンバス
バリュープロポジションキャンバスとは、ビジネスモデルキャンバスの「価値提案」と「顧客セグメント」に焦点を当て、「誰のために価値を創出したいのか」と「顧客を引き付けると思われる価値提案は何か」を掘り下げるツールである。

まず、顧客セグメント(=顧客プロフィール)は3つの要素から構成されている。
1. ジョブ
顧客が解決したい重要な課題や、満たそうとしているニーズ

2. ペイン
顧客がしたい「ジョブ」をやり遂げようとする際に発生する障害、課題、悩みの種のことで、付随するリスクや否定的な感情もこれに含まれる

3. ゲイン
顧客が望んでいる結果や恩恵。顧客に利益をもたらすもの

一方でバリューマップは以下の3つの要素から構成され、顧客に対する価値提案を詳しく記述していく。
1. 製品とサービス
自社の提供物。提供する機能や支援も含む

2. ペインリリーバー(顧客の悩みを取り除くもの)
自社の提供物が顧客の悩みをどう軽減するかについて記載する。これを見ればどの問題に対処しようとしているのかが分かる

3. ゲインクリエーター
自社の提供物がどのように顧客に結果や恩恵をもたらすかを記載する。

②ストーリーボード
ストーリーボードは映画やアニメなどの映像作品の「絵コンテ」を土台にして生み出された手法である。絵コンテは代表的なカットごとに構図や動き、セリフなどを大まかに表したイラストを並べて全体の筋や構成を示したもの。ペルソナごとにどういった体験が展開されるのか時系列で追うことでき、またその際のペルソナの感情の変化などもつかむことができる。

https://www.i3design.jp/in-pocket/8950

③カスタマージャーニーマップ
カスタマージャーニーマップ(CJM)を用いることで、認知から推奨までの顧客の体験全体を俯瞰して眺めることができる(詳細は【第3回|デザイン思考を学ぶ】問題定義プロセスを参照)

1-3. バリュープロポジションキャンバス、ストーリーボード、CJMの関係

バリュープロポジションキャンバスはペインを解消する体験、ゲインを拡張する体験及びソリューションを整理するツールである。しかしそれだけでは具体的に顧客はどのような体験をするのかイメージが付きづらい。そこでソリューションのコアとなる価値に特化し具体化したものが「ストーリーボード」である。自分の頭のイメージをより具体的にチームのメンバーに理解してもらうことに役立つ。そして、認知から推奨まで一連の体験を俯瞰したいときにCJMを用いる。

2. 試作

解決案であるアイデアを創出した後、そのアイデアを採用するかどうか、また採用するとしても優先順位をどうするかを評価する必要がある。
評価は下記3つの観点で行う。
①実現性
創造したアイデアが技術的、費用的などの観点で実現可能かどうかを評価する。実現可能性がない、もしくは極端に低いものは選択肢から除外する

②有用性
顧客にとって創造した体験、ソリューションのアイデアが有用かどうかを評価する。有用かどうかはプロトタイプやコンセプトボードを作成しフォーカスグループインタビューを行ったり、最近ではクラウドファンディングなどを通じて実際に顧客に評価してもらう。

③事業性
実現可能性があり、有用性があっても、それがビジネスとして成り立つのかを評価する必要がある。筆者の経験からは下記で評価することが多いと思われる。
1. サービス概要(ビジネスモデルキャンバス)
2. SWOT分析
3. 展開計画及び収支見込み

補足ではあるが、いくつか施策候補案が出てきた際に優先順位付けを行うにあたって、上記に加えリスクやリードタイムも項目として入れても良い。

3. 実証

実施することになった案が実際に市場で受け入れられるかを評価する。実証実験(PoC:Proof of concept)などと呼ばれ、地域限定販売、期間限定販売など、期間やエリアを一部に限定し市場の反応を伺いながらサービスの事業性を判断する。

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