見出し画像

ネット広告代理店は「成果の上げ方」と「キャリア」を再考するときではないか|「THE MODEL」を参考に

ネット広告とデジタルマーケティング界隈で仕事をさせていただいて6年目になります。広告運用は時間とともにその役割を変化させつつも、労働集約という大きな枠組みの中で、いかに生産性を高めるかが、広告代理業の至上命題であり続けています。

そんな中で、昨年「THE MODEL」が出版されました。SaaS(Software as a Service)系企業を中心に取り組まれてきた、マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセスに注目が集まっています。

営業を業務連鎖の観点でとらえなおし、分業を科学する考え方は、広告代理業においても大いに学ぶものが多いと考えました。今回は広告代理業の変化と、「THE MODEL」から参考になるものを考察していきたく思います。

「THE MODEL」が示したもの

【THE MODEL とは】
1)見込み顧客(リード)の獲得を目指す「マーケティング」
2)商談(や与件)の獲得を目指す「インサイドセールス」
3)受注の獲得を目指す「フィールドセールス」
4)既存顧客の契約継続や単価UPを目指す「カスタマーサクセス」
の分業体制による営業組織のことを指す

「THE MODEL」の中で示されていたのは、salesforceを代表とするSaaS系の営業体制を、高度が業務連鎖に置き換えて、営業活動全体のアウトプットを最大化する取り組みであったと理解しています。

SaaSは通常クラウド上でサービスを管理し、利用に対して定額なり従量課金なりで料金が発生します。サービスがある程度標準化されていることもあって、業務分担と業務連鎖を作りやすい点は、ソリューション型営業と異なる特徴ではないかと思います。

ネット広告を取り巻くメガトレンド

検索連動型広告とディスプレイ広告(かつては予約型が中心)が中心でしたが、SNS広告や動画広告の存在感が大きくなってきています。

インターネット広告市場の約80%を占めているのは運用型広告(電通/2019年 日本の広告費より)で、その特徴は下記の通り変化してきています。

(こちらずいぶん前から出回っていた資料なので、出展元がわからずなのですが…。)運用型広告の運用における変化で最大のトレンドは「運用の自動化」ではないかと思います。

◆かつての運用型広告
運用型広告は、「キーワード設定」や「入札金額」「配信面の選択」などの細かなチューニング作業を日々繰り返していく中で、広告効果を上げることができました。導入する広告メニューや分析結果のレポーティングはCPAと呼ばれるパフォーマンスで測られていました。

◆現在の運用型広告
現在の運用型広告は、上記に記載したような要素は自動化や最適化と呼ばれる方法で、媒体機能が自動的にチューニングを行ってくれます。必要なのは「データ」と「クリエイティブ」。購入者のデータを学習させれば、自動的にCPAが合うようになってきました。

このように管理画面の中ではできることがシンプルになると同時に、データのマネジメントとクリエイティブの探求にテーマが集中してきています。業種や規模をある程度分ければ、勝ちパターンが作りやすくなってきました。

同時にロジックがブラックボックス化されたことにより、クリエイティブやデータは、質よりも量を回すことが成果を上げる上では大切になってきます。こうした「広告運用のシンプル化」はメディアを問わず進んできています。

※このブラックボックスに対する探求は、可能な領域も多分にあるので安易に妥協すべきではないのですが今回は割愛します。

成果を上げる広告代理店の戦略

広告代理店(ここではネット広告代理店)が、企業のマーケティング活動に対する貢献範囲を拡大する流れは、下記のように分解できると思います。

1)目標となる広告効果を達成する
2)貢献する広告領域を拡大する(メディアとファネル)
3)貢献する事業領域を拡大する(事業間の最適化)

まずは、ネット広告代理店が提供している広告効果が、企業活動において何なのかを整理しておく必要があります。私の解釈では、俗にいう広告効果とは、事業活動のユニットエコノミクスを最大化することだと捉えています。

D2Cやデジタルサービスが考えやすいと思うのですが、広告を通じて流入してきたサービス利用者が、最終的にどれだけの収益を生み出すのかが、ユニットエコノミクスと呼ばれる数字です。(店舗など固定費が入るとマーケティング収益性とユニットエコノミクスが乖離しやすくなるので難しいですが…)

広告効果すなわちCPAは、ユニットエコノミクスが目標をクリアできるように設定されています。この数字をクリアできなければ、集客に力を入れるフェーズになく、ひとたび集客を始めれば、事業収益に直接ヒットしてくるので、事業オペレーションにおいて重要な領域であると理解しています。

広告代理店としてはまず、1)の達成に責任をもって価値貢献することになるのですが、この領域が広告運用のシンプル化によって、顧客との接点を持たずともある程度回るようになってきました。

従来の運用者の仕事は、2)3)の工程にシフトするとともに、1)を社内で一気通貫で対応するほうが、広告運用における高い生産性が発揮できるのではないかと思います。

1)目標となる広告効果を達成する:社内で完結する
2)貢献する広告領域を拡大する:従来の広告運用者の仕事に
3)貢献する事業領域を拡大する:営業のメインミッション

変わる広告運用者のキャリア

このような変化の中で、今後は「THE MODEL」のインサイドセールスと同様、広告運用者にとってのファーストキャリアになっていくと良いのではないかと思います。

従来はクライアントと会話して、マーケティング課題と連動して広告施策を打てるようになることで一人前みたいな雰囲気があったきがします。しかし今後は広告効果の担保が社内完結することで、管理画面を通じて広告の世界を覗き、ネット広告全体の理解や、事業貢献の土台として、キャリアを作れると理想的ではないかとも思います。

すでに近しい体制の企業も存在すると思いますが、業務連鎖をどのように作り、広告効果から事業活動への貢献度合いを高めるかは、広告代理業の営業活動の根幹だと思います。ぜひ皆様のご意見もお聞かせいただければ幸いです!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?