消えてなくなりたいときもあるけれど
いい本を読みました。
ときどき、消えてなくなりたいと思うことがあります。
何か特別につらい状況にあるというわけではないけれど、ふと、そんな心持ちになってしまうときがあるのです。
この先自分が上手いことやっていける自信が急になくなって、逃げ出したくなってしまったり。
日常のこまごました悩みとか、やらなきゃいけないあれこれとか、何もかもが面倒に思えてしまったり。
過去に自分が言ってしまったことや、やらかしてしまったことなどが思い出されて、どうにも自分を肯定できなくなってしまったり。
この本の一編、『健やかな論理』の主人公の女性は、そんな”消えてしまいたいモード”になったときのわたしみたいだなーと思いながら読みました。
この本は短編集で、生きることに苦しみや悲しみ、葛藤や諦念を感じている6人の男女の物語からなっています。
どれも、読んでいて痛いのです。
わたしたちが生きている中で多かれ少なかれ感じていて、でもなるべく心の奥深くにしまったり、気づかないふりをしたりしてやり過ごそうとしている感情たち。
それをえぐられて、痛い。
でも、最後の『籤』を読んで、この一冊は全編をとおして、朝井さんからのエールだと思いました。
厳しいけど温かいエール。
苦しいよね、辛いよね、不安だよね。
でも、わたしたちは選べない。
受け入れて、どうしたって生きていくしかないのだと。
自分の力で大丈夫にしていくしかないのだと。
だから一緒に頑張ろうって。
”消えてしまいたいモード”にときどき陥るわたしにとって、人生100年時代はけっこう恐怖です。
どうやらまだまだ消えられないらしい。
年齢を重ねるにつれて、どんどん消えたくなる理由が増えていきそうなのに…
でも、”どうしたって生きていくしかない”と受け入れることで、静かな覚悟を持てるような気がします。
一人じゃないって思えたら、小さな勇気も持てるような気がします。
その覚悟と勇気をを持てたなら、”どうせ生きるならなるべく気持ちよく、なるべく楽しんで生きていこう”と、そんな風に前を向けると思うのです。
きっと何度も読み返したくなる。
そんな一冊でした。
女性の生きづらさの描写があまりにもリアルで、「あれ?朝井リョウさんって女性だったっけ?」って思わずググっちゃいました。
やっぱり男性。男性であのリアルさはすごいなー。
『桐島、部活やめるってよ』とか『何者』とか、若い人向けのイメージがあって今まで何となく読まずにきましたが、他の作品も読んでみたいと思います。
今回この本を読もうと思ったのは、こちらの記事を読んだから。
良い本に出会わせていただきました。
ありがとうございます。
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