内なる国境考





だから、本物の国民が、農民的な姿をとって現れもするのだろう。そして、贋の国民は、都市にむかって追い出される。現実には、都市こそ国家の中枢なのだが、この本物という尺度にとっては、都市はたかだか内なる辺境にしかすぎないのだ。


『内なる辺境』安部公房






夏草と影を集めて国境(くにざかい)





 「たかだか辺境」、だけどどこかで辺境を、架空の都市を築くために求めているのかもしれない。夏草は足元をごまかす外側の化粧、濃い影は、辺境の内側に落ちる。
 農民は、分たれた土地の広い側に、黙って種を撒く。
 影をつくらない側の辺境に、農民の憩う場所はない。だからこそ都市の内側は、病的なほど衛生的でいられるのかもしれない。






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