「また会えるから。」〜儚い詩
ラピスラズリを見て、なぜか僕は心が痛くなった。
ウェールズ、カーディフのナショナルギャラリーで。あの日僕は胸が痛かった。
君がそこにいた。
少し前から君を生み出した人は知っていた。
つまらない教科書で覚えたからだ。
でも、作品を見て、君を見て、僕は衝動に突き動かされ、そして鳥肌が立った。
とても美しかった。
その顔か、その青か。
パリジェンヌ。タイトルはそうだった。君の名前だ。でも、君の本当の名前ではない。
パリジェンヌ。総称。でもモデルはいるんだ。そして君は確かに19世紀には存在していたんだ。
パリの女性…東京の女性は?
大和撫子?江戸太夫?なんだろう。
まぁいいか。とにかく僕は君に恋のような淡い昂りを感じたんだ。それはよくある一人旅の醍醐味なのかもしれないけれど。
絵の中のラピスラズリのオートクチュールを纏った君は、輝いて、そして燻んでいた。
僕は君に似た君を探しに、その後も世界を旅して回った。パリ、ロンドン、東京、ニューヨーク、ベルリン、ローマ、マドリード。
君に似た君以外の君によく似た人がいた。
でも君はやっぱりウェールズのカーディフにしかいなかった。
会いたいと思うのは変だろうか。なんか変だよね、でも…
まだいるよね?
もう一度ラピスラズリの君に会いたいんだ。
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