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本のできごころ 〜浅生鴨・選「喜びも哀しみも日常の中に」5冊セット

毎週末書店に行くのがほぼ習慣になっていました。小さい書店でも1時間ぐらい、大きな書店だと3〜4時間はぶらぶらしちゃう。

その時間でもっと本が読めている気がしないでもないですが。

実際に手にとって惚れこんだりとか、ふと目に止まった帯文に惹かれたりとか、書店での出会いがいいんですよね。正直、通販じゃ物足りないと思っていました。

ところが最近はなかなか外出しづらい状況になり、書店自体も休業を余儀なくされたりして、

どうすりゃいいのかわからない。つける薬ない夏の憂うつ(王様訳、Summer Time Blues/The Who)

春なのにこんな気分なのですが、こんなときに面白そうな企画を設けているオンライン書店がありました。

覗いてみたら、大好きな浅生鴨さんの選書セットがあるじゃぁありませんか。

一瞬、高っとおもったけど、単行本5冊ならこれくらいは当然か。

鴨さんご本人の著作を除けば、すべて知らない本。たぶん自分ではまず選ばない本。けどこれ気になる!

シークレットだって!?心の中のドロンジョ様が「やっておしまい」と言っている気がする。普段は単行本を5冊まとめて大人買いなんてなかなかしませんが、書店に行けないストレスと、財布にお金がなくても支払いできちゃう不思議なカードがさらに私に勇気をくれました。それ、ポチッとな。

2日後、届きました。遠い北海道でも。某大手サイトと違い、明らかに手作りの丁寧な梱包から暖かいものを感じます。5月に入り気温が上がってきたからかもしれませんが。

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※15,000円で送料無料と知って想定外にたくさん買ってしまうの巻


浅生鴨さんの本には直筆のサインと落款。シークレットは、、、うん、これも全く知らない本。危ぶむなかれ、読めばわかるさ!

そして、、、読み終わりました。3日で読んじゃいました。どれも面白くて、ハズレなし。


最初に読んだのはシークレット本。これはハマりました。独白調で静かで思索的で、いろんなことが詰まっていて、心にじわじわ残る、不思議な小説でした。書名かい?、、、、教えられないねぇ。

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この後は読んだ順に説明しよう。

ジョージ・ソーンダーズ 岸本佐知子 訳『十二月の十日』(河出書房新社)

描かれるのはクセのあるちょっと困った人たち(帯文では「ダメ人間」)ですが、実際にこういう考え方をする人は少なくないだろうと感じるような妙なリアルさがありました。根底にはいきすぎた資本主義と格差社会への痛烈な批判精神を感じますが、語り口はユーモアたっぷりで、ちょっとほっとする優しさもあって、いやはや楽しめました。


大前粟生『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』(河出書房新社)

とても繊細で、やさしいけど危うくて、私50過ぎのオッサンですが、結構な共感を覚えながら読みました。「軽薄さや無関心と間違えらえれてしまうようなやさしさ」ってすごい表現だな。世代、時代を感じさせる「文学」なんじゃないだろうか、しらんけど。すごい本でした。


パク・ミンギュ斎藤真理子 訳『三美スーパースターズ 』(晶文社)

最後に読んだんですが、これもすごい小説でした。感じ方とか、世相とか、違うんだけどよく似ている。マニアックな書き出しなので正直ちょっと戸惑ったのですが、読み進めるほど引き込まれて、最後は涙をこらえていました。素晴らしいよ。


浅生鴨『どこでもない場所』(左右社) 

エッセイとして書かれていますが、小説のようです。街を歩いたり、ホテルで朝食をとったり、歯医者に行ったり、車で飛行場に向かったりといった話がなぜかめちゃくちゃ面白い。そして、著者の視点がいつもあたたかい。本当にいい本です。ちなみにこのセットのおかげで我が家には3冊あります。サイン本なので丁重に保管します。


どれも日々の生活とそこで移り変わる気持ちを丁寧に描いた作品でした。読んだ後にも、心に何かがじわじわ残る感じが心地良かったです。

来月の引き落としまでこの気持ちは続くと思います、きっと、そうに違いない。面倒なことは忘れてしまえ。


こういう企画は楽しいぞ!

知らない本でも、この人の選書なら間違いなさそうだ、そんなものができると楽しいですね。浅生鴨さんの選書、オススメです。

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